【編集後記】『PULSE』制作秘話

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「BIPROGY TERASU」特別企画の短編小説『PULSE』の編集後記として、BIPROGYの社員であり、著者の北池素介さんに制作の裏側を伺います。本小説は生成AIを活用して創作されました。AIと向き合うことで見えてきた「人間らしい表現」の難しさとは。著者の北池さんが創作時の苦労や想いについて語ります。

——早速ですが、「北池素介」というペンネームには秘密があるんですよね? 読者の皆さんに、種明かしをしていただけますか?

北池 素介(以下、北池)はい(笑)。実はこのペンネームは、私の本名のアナグラムなんです。
それを少しだけもじって「北池 素介(キタイケ ソウスケ)」としました。「素」の字は、当時の上司のお名前から拝借しました。
ローマ字表記の「Sosuke KitAIke」には「AI」という文字が隠れていて、この小説が私とAIとの合作であることを示唆しています。

写真: 北池 素介

——面白い仕掛けです(笑)。そもそも、なぜ今回「BIPROGY TERASU」で短編小説を書こうと思われたのでしょうか? 普段「BIPROGY TERASU」においてメインで掲載されているのは、あらゆる道のプロフェッショナルのインタビュー記事ですよね。

北池BIPROGYブランドでは、「すべてはこの星で生き続けるために」というテーマを掲げています。ブランディング施策において、そのテーマを表すメッセージを、BIPROGY TERASUを通して届ける術はないだろうか、という問いから始まりました。
その中で、「物語」というアプローチなら、エンタメ性も高くなり、まだBIPROGY TERASUを読まれたことのない方々にも注目してもらえて、さらには読まれる方々の心に届くチャンスがあるんじゃないかと考えました。
私自身、普段から生成AIを使う中で「アイデアさえあれば自分でも創作ができるのでは」という考えがあったのも理由の1つです。
何より、このようなチャレンジングな企画案にもかかわらず、上司含め広報部メンバーが賛同し温かく応援してくださったことが、企画に踏み出せた最大のポイントだと思います。丁寧に読み込んで、気になったところを各々の言葉でご提案くださり、本当に熱心にご協力いただきました。AIを利用して創作することへのリスクマネジメントの知恵出しや情報収集もサポートいただきました。
そうして、1つの作品を皆でつくりきることができました。
当社はパーパスにおいて「先見性」を冒頭に掲げていますが、その言葉通り、新たなチャレンジを大切にする組織であるとあらためて実感しました。

——チャレンジの第一歩として、実は「幻の第1作目」があったと伺いました。

北池そうなんです。1作目も、万博を舞台に描きました。2025年大阪・関西万博をフィールドに、ヘルスケアビジネスを創出した当社の社員たちの熱量に触れ、ぜひ描きたいと考えました。
そのため最初は、実際のプロジェクトをベースにしたかなり実話寄りのフィクションを執筆しました。
……のですが、現実に引っ張られて創作に振り切れず、どうしても「偽物感」が出てしまって……。
小説「っぽさ」はあったのですが、書き終えてもずっとモヤモヤしていました。広報部メンバーに見せても、皆言いにくそうに「いまひとつかな…」という反応で(笑)。
そこで思い切って1作目をボツにし、完全に創作に振り切ったのが、今回発表した『PULSE』です。
1作目を通した広報部メンバーとの会話の中で「SFに寄せて55年前の万博とつなげても面白いかも」というアイデアが生まれ、そこから一気に構想が膨らみました。ボツだけど、幸い無駄にはならなかったです。

——ボツにした前作も生かして、このタイムリープの物語が生まれたんですね。
タイトルを『PULSE』に決めた際にも、AIとのちょっとしたドラマがあったとか。

北池タイトルは、千鶴の病弱な心臓の動きと、脈々と受け継がれる命の鼓動、そしてクライマックスの走り出す躍動感をかけて、書き終えた時点で私の中では『PULSE』が第一候補でした。
でもせっかくなのでAIにもタイトル案をいくつか出してもらいました。すると、なんと1番上に『PULSE』が出てきたんです。
もう直感的に「これだ!」と即決しました。

写真: 北池 素介

——人間の直感とAIの出力がシンクロした瞬間でしたね。なにか運命めいたものを感じます。実際の執筆プロセスはどのようなものだったのでしょうか?

北池1作目では執筆計画が不満足だったため、その反省を生かし、執筆前の「構想(プロット)」に長い時間をかけ、AIとも何度も対話を重ね、ものすごく慎重に計画を練りました。
その構想をもとにAIと本文を作成したところ、可能性を感じるものができました。まずは違和感のある表現や、登場人物の感情の流れを一つひとつ確認しながら、丁寧に書き直しました。
広報部メンバーの方々に読んでもらったところ好評をいただき、そこからさらに時間をかけて、細かい表現の修正を重ねて磨き上げました。
計100回近く通読し、修正したと思います。
執筆する上では、シナリオ技術や日本語表記についても、少しばかりではありますが勉強しました。
本文生成は「ChatGPT」、トップ画と挿絵は「Gemini」を使用しています。

——まさにテクノロジーとの共創ですね。物語の内容についても伺います。主人公の遥、遥の母、祖母の千鶴という三世代の家族には、どこか体温を感じました。

北池これは書き終えて気づいたことでもあるのですが、あの家族には私自身の体験が反映されています。
私には4歳の息子がいまして。私自身は今でも健康に無頓着に生きているのに、それを棚に上げて「子どもにはずっと健康でいてほしい」と心から願っているんです。
また、私の母もとても心配性な人でした。実家には高校生までいましたが、そのころは私が出かけるたびに玄関で「車に気を付けて、ぼーっとするんじゃないよ、あとは——」のように。よくそんなにバリエーションがあるなというくらい手厚く送り出してくれていました。当時はうっとうしいなあなんて思っていましたが、自分が親になったら同じことをしています(笑)。
遥の「無頓着さ」も、遥の母や千鶴の「祈るような気持ち」も、そしてその「受け売り」も、「家族」を描くにあたり、自然と私の実体験が滲み出たのかもしれません。

——出がけに母が遥に声をかけるシーンは、北池さんやお母様そのものだったんですね。
物語の最後、遥が走り出すシーンは、どこか心地よい読後感、余韻が残りました。ラストシーンに込めた想いを聞かせてください。

北池「この星で生き続ける」というテーマは一見すると壮大です。しかし結局のところ、一人ひとりが自分の体と健康に真摯に向き合うことが、当たり前ながらとても大切なことの一つだと考えます。
だからこそ、「思う」だけでなく「行動が変わる」ことの大きさを描きたかったんです。
大きな決断じゃなくていい。この文章を読んでくれた人が、主人公の遥のように、ほんの少しでも自分を大切にする行動を起こしてくれたらいいな、と。一縷の望みのような気持ちで書いたラストシーンでした。
その想いをどうすれば言葉にして届けられるか、AIとの対話を通じて探りました。最終的には、自分の中にあった想いを、思っていた以上に素直な形で表現できた気がして、出来上がったときは感動しました。

——少しデリケートなことをお聞きします。AIを使って小説を書くことについて、抵抗感を持つ方もいるかもしれません。その点はどう考えていますか?

北池その感覚は、とても自然だと思います。特に、真剣に小説を書いている方々や、小説を愛する読者の方々ほど、「AIを使って小説を書く」という言葉に複雑な気持ちを抱くかもしれません。私自身も、軽々しく「AIで小説を書ける」などと言ってよいものではないと思っています。
ただ、今回の制作で感じたのは、AIは作品を代わりに書く存在ではなく、人間の中にある曖昧な感情や構想を、何度も問い返してくれる相談相手に近いということです。
物語の核にあるのは、私自身の経験や問題意識、そして「この星で生き続ける」という大きなテーマを登場人物の行動変容として描き、読み手の皆さんに届けたいという意志です。これらは、AIが勝手に生み出したものではありません。
一方でAIがあったからこそ、構成や表現を何度も試し、納得できるまで磨き直すことができました。AIが出した文章をそのまま使うのではなく、「これは違う」「ここはもっと人間らしい揺れがほしい」「この言葉は登場人物の感情に合っていない」などと、人間である自分が一つひとつ判断し修正していく作業の連続でした。
そのため今回、小説家の方々が日々向き合っている、構成、視点、台詞、余韻、言葉の選び方の難しさを、ほんの一端ではありますが痛感しました。
何より、曖昧な感情や構想と向き合い、自問自答を重ねながら一つの表現へと結実させていく小説家の方々には、あらためて深い敬意を抱いています。
こういったことからも、創作の難しさというものを、私自身より強く実感するに至りました。

——AIと向き合うことで、かえって人間の表現や選択の重みを感じる制作になったんですね。今回の制作を通じて、また別の物語に挑戦してみたいという気持ちは生まれましたか?

北池まだ予定はないのですが、意欲はあります。

——最後に、この小説の公開を終えて、北池さんの想いを聞かせてください。

北池私は「新たなアイデアを形にし、周囲に喜びと感動を届ける」を自身の志としています。ゼロから企画を実らせる上で、私にとってAIは「強力な共創パートナー」です。短編小説だけでなく、今も数々の企画をAIとともに進めています。
AIと共にすることで、思いついたアイデアをすばやく形にし、試し、磨き直すサイクルを何度も回せるようになりました。
今後、自身がこういった領域をリードする存在になれるよう、楽しみながら、懸命に取り組み続けたいと思っています。

——人間のアイデアとAIの力が融合して生まれた『PULSE』。この物語が、多くの読者のもとへ「命のバトン」として届くことを願っています。北池さん、本日は興味深い裏話をお聞かせいただき、ありがとうございました!

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