Break Through! 第二章 挑み続ける心が未来を拓く:BIPROGYバドミントンチーム/第1回 中西貴映・岩永鈴ペア

支えてくれる周囲への感謝を忘れずに、世界の頂を目指す

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世界の頂点を目指すBIPROGYバドミントンチームの選手たちの「挑戦」と「成長」の軌跡をつづる本企画「Break Through! 第二章」。第1回に登場するのは、BIPROGY入社後に同期としてペアを組んだ中西貴映(なかにしきえ)選手・岩永鈴(いわながりん)選手。中西選手は170cm、岩永選手は166cmという長身ペアの愛称は「キエリン」。2024年全日本社会人選手権では初優勝、2025年世界選手権では銅メダルを獲得し、強豪ひしめく日本女子ダブルスの中でも熱い注目を集めています。組み始めた当時は「本当に弱かった」と語るキエリンペアが歩んだ道のり、そして世界一のタイトルを狙う2人の決意を伺いました(2025年10月取材)。

ワールドツアーファイナルズで世界選手権のリベンジを狙う

――まずは今シーズンの目標を教えてください。

写真:中西貴映選手
BIPROGYバドミントンチーム
中西貴映選手

中西8月の世界バドミントン選手権でのメダル獲得は2人にとっての大きな目標で、無事に銅メダルを手にすることができました。でも、準決勝で負けての銅メダルだったので、今は「12月のワールドツアーファイナルズ(※)に出場して、世界選手権のリベンジがしたいね」と岩永と話しています。

  • 世界バドミントン連盟(BWF)が主催する、バドミントンの年間世界王者を決める国際大会。年間のポイントワールドランキング上位8名(組)のみが出場可能で、日本から出場できる女子ダブルスは最大2組

――キエリンペアのそれぞれの役割と強みを教えてください。

中西基本的に、岩永が前衛で私が後衛でプレーしています。最近は、私がレシーブした後に岩永が前に飛び込んで仕掛け、攻めの形をつくって決め切る、というパターンが通用しているので、そこは自信を持って2人の武器と言えます。以前は、相手に先手を取られて、攻めに転じられないまま負けてしまうことがありましたが、今シーズンは自分たちが得意なパターンに持ち込める回数が増えてきました。

――変化のきっかけがあったのでしょうか。

写真:岩永鈴選手
BIPROGYバドミントンチーム
岩永鈴選手

岩永以前はコーチの指示に対して、1つ1つを守ることに意識が向いてしまって、プレーが硬くなっていたのかもしれません。「2人の好きなようにやっていいんだよ」とコーチに言われてからは、「思いっきり自分たちのやりたいプレーをして、ダメだった時はまた考えよう」と気持ちが吹っ切れました。試合もなるべく楽しむようにしています。

中西試合中、私は結構熱くなるタイプなのですが、岩永は冷静に楽しむのが得意。岩永の「試合を楽しもう」という雰囲気に助けられることもあります。

「世界一」を目指す気持ちが今のモチベーション

――日々の練習を積み重ねるう上での原動力は何ですか。

中西「世界一になりたい」という気持ちですね。今シーズンに入ってからは、夢ではなく手が届く目標になったと感じていて、大きなモチベーションになっています。世界一のタイトルを取って、いつも周りで支えてくださる方々に恩返しをしたいです。

――普段、どんな練習をしていますか。必ず取り入れているルーティーンなどもあれば、教えてください。

写真:室内コートで練習をする中西貴映選手と岩永鈴選手

岩永基本は中西さんとペアで練習していますが、別のダブルスの選手とペアを組み替えて練習をすることもあります。

中西同じ人と組む時間が長ければ長いほど、自分の役割がはっきりし過ぎてしまうんです。時々、別の選手と組んでフレキシブルな対応をすることが、自分のプレーの幅を広げることにつながっています。

ルーティーンは特にないのですが、遠征に行くと今の自分たちの課題が見つかるので、帰国後の初練習では、2人でその課題を確認するようにしていますね。

――試合前の準備で大切にしていることは何ですか。

岩永対戦相手の動画を見て、「このあたりにサーブを打ってくることが多い」など、相手の特徴に合わせて練習をしています。それから体がベストの状態でプレーできるよう、試合前日はウエイトトレーニングを軽めにするように調整しています。

中西私はしっかり食べて、しっかり睡眠を取ることです。対戦相手の試合の動画も見ますが、見過ぎると緊張が増してしまうので、ほどよく切り上げて、何も考えずにぼーっとする時間も持つようにしています。

――試合当日はどのようなことを考えていますか。

中西トーナメントをどう勝ち上がるかはとても意識しています。シード権を持っていなかった頃は、1~2回戦で自分たちより確実に強いペアと当たるので、毎試合120%で行くしかない状況でした。シード権を持っている今は、1回戦から決勝戦までの5試合をどう戦うかが大事。次の試合でやりたいプレーを試すこともあります。

パートナーにも、支えてくれる周りの方々にも感謝を忘れない

――周りのスタッフからは、お二人の「人間力」が素晴らしいとの声を聞きました。

岩永どうなんだろう(笑)。いつも当たり前のことを当たり前にしている感覚です。バドミントンが強いか弱いかは関係なく、周りの人を気遣うことは普通のことだと思っています。

中西ジュニアの時、当時のコーチから「選手としても、一人の人間としても、応援されて好かれるような人になってほしい」と言われたことは、今でも覚えています。バドミントンが強いだけでは生きていけないので、「自分が今関わっている人たちを大切にしよう」と心掛けています。

――9月のアジアツアー3連戦は、準優勝2回にベスト8という好成績でした。

中西決勝戦に2度勝ち上がれたことはすごく良かったのですが、肝心の大一番で負けてしまったことが悔しくて。これから臨む大会では、一本一本を確実に勝ち切ることを意識して、今度こそ優勝をつかみたいと思っています。

岩永大会を通してコーチからさまざまなアドバイスをもらっているので、今はそれらを練習に取り入れながら、次の大会に向けていろいろ試しているところです。

写真:コーチにアドバイスをもらう様子
写真:ハイタッチをする2人の後ろ姿

――今シーズンはペアを組んで7年目。これまでの道のりを振り返ってみて、いかがでしょう。

中西今年の世界選手権でメダルを取った時、「組んだ時には想像もしなかったところまで来たね」って2人で話していたのですが、最初は本当に弱いペアでした。それでも努力して、国際大会の下のグレードの試合では勝てるようになって、上のグレードの試合に出始めたのが3~4年前です。

当時は毎回1回戦か2回戦で負けてしまうという状況で、「続けるのは無理じゃない?」と思ったこともありました。でも岩永と2人だからこそ苦しい状況から逃げ出すことなく、「とにかく勝つしかない」と前を向いて、今日までやって来られたと思っています。

――負けが続いた時、お二人の雰囲気が悪くなることはありませんでしたか。

岩永それはないですね。私は性格的にも切り替えが早いタイプなので、「終わったら仕方ない。次、頑張ればいいじゃん」って負けを引きずらないんです。試合に負けた翌日の練習は、次の勝ちに向かって2人ともやる気満々です!

中西負けは2人のものなので、私も岩永もお互いに責めるようなことはありません。反省すべきことを試合会場で反省したら、2人でご飯を食べに行って、楽しい話をして切り替えています。これは岩永の明るい性格のおかげだと思います。

写真:椅子に座ってインタビューを受ける中西貴映選手と岩永鈴選手

――本当に良きパートナーなんですね。

中西岩永は私にできないことができる選手。お互いがお互いに尊敬する部分があるので、けがをしたり、ミスをしたり、ちょっとダメな時でも2人でカバーし合って頑張れています。私が4歳上ということもあって、私が意見を言って岩永を引っ張ることが多いのですが、今は岩永も意見を言ってくれるようになったので、私としてはうれしいです。

岩永誰かに意見を言う時は、まず自分がちゃんとできていないとダメだと思っていたので、あまり意見が言えなかったんです。でも今は自分ができることが増えてきて、「こういうプレーをしたいからカバーしてほしい」という希望も言えるようになりました。

――BIPROGYバドミントンチームの雰囲気を教えてください。

写真:椅子に座ってインタビューを受ける中西貴映選手と岩永鈴選手

岩永とても仲が良くて、前向きに練習に取り組める雰囲気があります。落ち込んでいる人がいれば、個人やペアは関係なく必ず誰かが声をかけに行っていますね。この温かい雰囲気はチームの強みです。

中西BIPROGYは男子チームもあるので、男子選手に練習の相手をしてもらったり、男子目線で少し違った角度からアドバイスがもらえたりできるところも強みですね。団体戦では、男子が勝っていたら「女子も負けてられない!」って思いますし、全員で一緒に高め合えるすごく良い関係です。

2028年を集大成の年に定め、さらなる活躍を誓う

――12月のワールドツアーファイナルズの出場権獲得も見えてきました。また来年はアジア大会という大舞台もあります。改めて、お二人の意気込みを聞かせていただけますか。

岩永ワールドツアーファイナルズもアジア大会も、日本から出場できるのは2組だけ。日本の女子ダブルスはどのペアも本当に強いので、油断はできません。気を引き締めて、1つ1つの試合に臨んでいきます。

中西以前は、こうした大きな国際大会は「行けたらいいな」という感覚でしたが、今は絶対に出場権を譲りたくありません。「自分たちが日本の女子ダブルスの一番でやっていく」という強い気持ちを持って、試合を勝ち進めば、出場権を手にできると思っています。

写真:中西貴映選手と岩永鈴選手

――最後に、応援してくださるファンの皆さまへメッセージをお願いします。

岩永ようやく、少しずつ結果が出るようになってきました。それを自信に変えて、もっとたくさん勝って、優勝して、支えてくださっている方々に恩返しをしたいです。試合会場でも、SNSでも、応援やメッセージは本当に励みになるので、世界のトップを目指す私たちをたくさん推してもらえるとうれしいです!

中西去年、2人で相談して決めたのですが、私たちは2028年を集大成の年と考えています。私はその年に33歳を迎えるので、2028年の大舞台が 年齢を考えてもラストチャンス。その集大成に向けて、できるだけ多くの試合に勝って、皆さんに良い結果を報告できるように頑張りますので、ぜひキエリンに注目してください!

Profile

中西 貴映(なかにし きえ)
1995年12月24日生まれ。神奈川県相模原市出身。母の影響で8歳からバドミントンを始める。早稲田大学卒。 2018年4月日本ユニシス株式会社(現BIPROGY)入社。
岩永鈴とのペアで2021年より日本代表入り。デンマークオープン2024(Super750)優勝。2025年世界選手権大会で銅メダル獲得。2024年4月から女子チームキャプテン。
岩永 鈴(いわなが りん)
1999年5月21日生まれ。山口県柳井市出身。兄の影響で6歳からバドミントンを始める。柳井商工高校卒。2018年4月日本ユニシス株式会社(現BIPROGY)入社。
中西貴映とのペアで2024年全日本社会人選手権優勝。2025年世界選手権大会で銅メダル獲得。ペアの世界ランキング6位(2025年11月25日時点)。2021年~2025年日本代表。
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