Break Through! 挑み続けるBIPROGYバドミントンチーム 第6回 平山優監督

苦しさの先にある「楽しさ」を選手と分かち合いたい

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自身の努力とチーム力でさらなる技の高みを“切り拓く”BIPROGYバドミントンチーム。チームメンバーたちが自身の想いや信念について熱く語る本企画。第6回は、BIPROGYバドミントンチーム女子チーム(当時日本ユニシス実業団バドミントン部女子チーム)創設当時から選手として活躍し、2012年の引退後は女子チームのコーチに就任、2019年からは監督としてチームをけん引する平山優監督にインタビューしました。現役時代、ストイックにバドミントンと向き合った先に、“人生観が変わるような”経験をした平山監督。以来、選手にはバドミントンを「楽しむこと」の大切さを伝えていると言います。その指導方法や、選手と接する際の心掛け、そして2024年の意気込みを聞きました。

ヘッドライン

チームで想いを1つに、女子団体戦優勝を勝ち取った

――2024年2月にはS/Jリーグ2023で女子チームが優勝するなど躍進が目覚ましいですね。現在の女子チームのコンディションについてお聞かせください。

写真:平山監督
BIPROGYバドミントンチーム
女子チーム監督 平山 優

平山S/Jリーグは約4カ月間と期間が長いので、その時々でコンディションもさまざまに変わります。トップ4(6チームからなる各リーグ戦の上位2チームが参加し総合優勝をめざす、S/Jリーグの最終トーナメント)以前は、メンタル面でチーム全員が優勝への思いを強く持っていたものの、フィジカル面ではけがをしている選手がいるなど万全とはいえない状態でした。そもそも団体戦となると、「全員が万全な状態」であることが珍しく、その中でどうやって戦うかが重要です。

今回の優勝は、皆さんの応援と、個々の技術はもちろん一致団結して優勝に向かう姿勢といったチームの総合力があってこそです。一人ひとりが「絶対優勝!」との気持ちを強く持ち、海外遠征のため練習にあまり合流できなかったメンバーも、帰国後はチームに全力で向き合ってくれていました。特に東野選手と中西選手は普段は別のパートナーと組んでいて、団体戦に向けた練習もあまりできていませんでしたが、S/Jリーグでは素晴らしい活躍をしてくれました。これは、チームのため、そして、応援してくださっている皆さんの期待に応えたい、という思いが強かったからだと思います。

――日頃から信頼関係が築けている証拠ともいえますね。

平山心からそう思います。選手もスタッフも、団体戦にかける思いはとても強く、皆がベストを尽くそうとしていました。試合に出ていない選手でも、出場選手と同じ熱量で応援をしていたり、雰囲気づくりをしてくれていました。

写真:S/Jリーグ優勝時の選手たち
S/Jリーグ優勝時の様子(2024年2月24日)

バドミントンが教えてくれた、ストイックな姿勢の先にある「楽しさ」

――平山監督は、BIPROGYバドミントンチーム女子チーム創部1期生としてチームに入られ、2012年からはコーチに、2019年に監督就任と、チームをけん引する存在のようにも見えます。指導者としてのキャリアを積む中で、指導方法の変化はありましたか?

平山指導者になったばかりの頃は、今よりも厳しい指導をしていたと思います。最初の頃は、自分の選手時代にあった「昭和の根性論」的な考えで、厳しいメニューを組んでいました。当時を振り返って、東野選手に「昔の方が厳しかった」と言われたこともあります。強くなってほしい、勝たせたいという思いは今も変わりません。しかし、時代の変化もあり、もっと選手一人ひとりに向き合った指導をしなければと考えるようになりました。

――指導方法が変化していったきっかけはあったのですか?

平山奥原希望選手(2018年まで日本ユニシスに在籍)に、「もっと選手の意見を聞いてほしい」と言われたことです。私自身は、選手の考えを聞いているつもりでした。それが、選手にとっては不十分だったと気付くことができ、指導方法を見つめ直す大きなきっかけになりました。とはいえ、「意見を聞く」ことは、何でも受け入れることとは異なります。選手の意見はきちんと聞いた上で、こちらの意見も伝えますし、今でも他のスタッフに比べたら私は厳しい方だとは思います。

写真:平山監督と選手2人

ただ、厳しいだけでは何のためにやっているのか分からなくなってしまいますよね。強くなるためでも、バドミントンそのものを楽しまないと、人生の楽しさにもつながらないと思うんです。「苦しさも楽しさも感じながら強くなってほしい」との思いで選手と向き合っています。

――選手時代から「楽しむ」ことは大切にされていたのですか?

平山私自身の選手時代は楽しむ余裕があまりなく、ずっと苦しんで、ひたすらストイックに取り組んでいました。「これだけ苦しんだから、いつか良くなる。絶対勝てる」と信じていました。でも、勝てなかった。そんな選手時代を続け、選手としてはもう「やり抜いた」と感じたタイミングで、コーチや監督に引退の相談をしました。しかし、さまざまな背景から1年だけ現役を続行することになりました。選手としてやり切ったと思った後でしたから、良い意味で重圧から解放されて、「思い切り楽しもう!」とマインドがプラス方向に大きく変わりました。すると、つらい練習に耐えていた時期は全然勝てなかったのに次々に勝てるようになったのです。その時に、「ああ、人生って楽しむためにあるんだ」と気付いて、まるで生まれ変わった感覚になりました。

写真:平山監督

私自身に、「ストイックなだけではうまくいかなかった」という経験があるからこそ、選手には、「苦しいこともあるけれど、全力で楽しまないと勝てない」ことを伝えたいと日々思っています。

――平山監督が「苦しい時期もやり抜いた」からこそ得られた経験ですね。プレーの指導に加えて、選手の規律的な面も指導される立場にあると伺っています。選手の中には、高校卒業後すぐに入社し、BIPROGYバドミントンチームが初めての社会経験、という方もいます。指導の際に心掛けていることはありますか?

平山私は、社会人としての振る舞いがしっかりしていることが、スポーツ選手としても大事だと考えています。一般的な社会人であれば当たり前だと捉えていることが、子どもの頃からバドミントンに集中してきた選手にとっては何も知らないことだったりもします。例えば、出張精算の期日を守ることや、学生時代と違って練習時に持参しなければならない道具があることなど……社会、会社、チームのルールなど、各選手の個性や段階に合わせて丁寧に説明することを心掛けています。

写真:平山監督

――平山監督は産休・育休を経て監督に復帰されています。復帰に際して準備されたことはありますか。また、育児との両立についてもお聞かせください。

平山スポーツの世界は、1年1年が勝負です。一度チームを離れたらもう戻れない可能性もあると思っていました。そのような中での復帰なので、本当にありがたかったですし、待っていてくれたチームのためにも一層頑張ろうと思いました。産休・育休中も、余裕がある時は試合の映像を見たり、選手と連絡を取ったり、スタッフにチームの状況を聞いたりはしていましたね。

育児との両立は大変ですが、例えば、子どもが熱を出してしまった時はスタッフ間でカバーし合うなど環境が整っているのもありがたいです。時間休(有給休暇を1時間刻みで取得できる制度)を活用して早めに帰らせてもらうこともありますね。男子監督の早川さんや、コーチの遠藤さんをはじめ、子どもがいるスタッフが多く、事情を理解し合えるのも両立しやすい理由かと思います。

とはいえ、日常生活は時間との戦い! 帰宅後は育児の合間に料理をして片付けをして…と複数の家事をすごいスピードと集中力でこなして、「タイム、更新した!」などと楽しもうとしている面もあります(笑)。

写真:平山監督

選手やスタッフ、環境に感謝し、チームがより良い方向に進むよう貢献していく

――実業団チームにおいて、男女両方のチームを持つところは少ないと思いますが、この点はどのように感じていますか?

平山女子チームにとって、とてもメリットがあります。女子選手は、男子選手の練習やスピード感覚を日頃から体感できますし、ミックスダブルスを組めるのも大きな利点です。

また、女子だけでも明るいチームなのですが、男子がいるとそのパワフルさのおかげでさらに明るくなりますね。団体戦を見ると分かるのですが、チーム全体の雰囲気がすごく良いんですよ。BIPROGYの試合を見たことがない方は、試合中のスピードや駆け引きはもちろんですが、チームの雰囲気もぜひ見ていただければうれしいです。

――これまでのバドミントン人生を支えてきたモノ・言葉はありますか?

平山「感謝」です。先ほどもお伝えしたように、今こうして監督をできているのは本当に周りのおかげです。選手やスタッフ、BIPROGYという会社や環境に、常に感謝をしています。あとは、もうすぐ2歳になる子どもの存在が大きいですね。子どもからパワーをもらって、これまで以上に頑張れていると思います。

写真:笑顔の平山監督

――最後に、2024年の意気込みを教えてください。

平山チームとしては、今シーズンも全日本実業団バドミントン選手権大会とS/Jリーグの優勝を狙います。そのためにも、チーム全体のレベルを底上げし、より多くの選手がナショナルチームに入れるようにしていきたいです。また、私個人では、生活面など社会人としてのルールなどの指導もきちんと行い、チーム全体をより良い方向に導いていけたらと思っています。

Profile

平山 優(ひらやま ゆう)
1985年7月25日生まれ。宮城県塩竈市出身。姉の影響で9歳からバドミントンを始める。早稲田大学卒。女子チームの創部メンバーとして2008年日本ユニシス(現BIPROGY)入社。
2003年、女子シングルスで日本代表に選出され、日本ランキング1位になる。2012年3月現役引退後、女子シングルスコーチに従事。2019年4月より女子チーム監督に就任。

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