Break Through! 挑み続けるBIPROGYバドミントンチーム 第5回 早川賢一監督・遠藤大由コーチ

現役時代から変わらぬ関係性を武器に、“世界で勝てる”チームへ

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自身の努力とチーム力でさらなる技の高みを“切り拓く”BIPROGYバドミントンチーム。メンバーたちが自身の想いや信念について熱く語る本企画。第5回は、早川賢一監督・遠藤大由ヘッドコーチにインタビューしました。現役時代、男子ダブルスを組み世界で活躍した二人が2023年に指導者として再タッグを組んでから約1年。指導においてもお互いを補い合う良好な関係性は変わらないものの、選手への「伝え方」には共通の悩みがあったと言います。二人はその壁をどう乗り越え、現在はどのようなコミュニケーションを実践しているのでしょうか。二人が選手時代に受けた指導との共通点やそこから得た指導者としての学び、そして五輪を目前に控える2024年の意気込みを伺いました。

ヘッドライン

足りない部分を補い合う。二人の関係性は現役時から変わらない

――お二人が指導者としてタッグを組んで約1年がたちました。指導者としての立場に変わり、関係性には変化がありましたか?

早川基本的な関係性は変わっていないですね。現役当時から、私が前衛、遠藤が後衛を担い、お互いができないことを補い合う関係性でした。指導者になってもそれは変わらず、自分と違う目線で選手の指導をしてくれています。

遠藤の指導方法を見ていると、選手への言葉の掛け方やアドバイスする際のタイミングなどとても学びが多いです。遠藤は現役時代からストイックに自分自身を追い込んで練習に向き合うスタイルでしたが、僕の場合は楽しむ要素もないと続かない選手でした。それが今のお互いの教え方にも出てきていると思います。

写真:早川監督
BIPROGYバドミントンチーム
男子チーム監督 早川賢一

遠藤早川の言う通りですね。考え方は違いますが、それが良いのだと思います。僕があまり得意ではない部分をカバーしてもらっている分、僕は練習内容を組むのに集中でき、ありがたいです。何か悩んだことがあれば、すぐに相談をしますね。二人のこうした関係性は、現役時代から変わっていないなと感じます。

写真:遠藤ヘッドコーチ
BIPROGYバドミントンチーム
ヘッドコーチ 遠藤大由

――お二人の指導方針について教えてください。また、早川監督は、日本代表(B代表)コーチも務めましたが、そこでの経験はどのように生きていますか。

早川お互い“世界で勝つ”ことを何より大事にしています。そのために、何をするべきかを遠慮せずに伝え合い、チーム全体での練習内容や選手に合わせた練習方法について、日々認識や指導の在り方のすり合わせをしています。

遠藤選手ごとにメニューを変えているので、早川との話し合いは多岐にわたります。選手の足りない部分を改善するためには何が必要かを話し合い、メニューに取り入れ、また見直していく。それを繰り返すことで、世界での勝利に一歩ずつ近づいていくイメージです。

早川日本代表(B代表)のコーチを務めた経験を通じて多くの選手を指導できたので、その分、選手の状態の見極めやアドバイスのタイミングなど視野が広がったと感じています。

写真:早川監督と遠藤ヘッドコーチ

課題は選手への「伝え方」。指導者としての試行錯誤

――指導者としてキャリアを変える中で、苦労したことはありましたか?

早川最初は、自分が選手として経験したことを伝えていました。今は、指導者として8年間さまざまな選手と向き合う中で、自分自身もたくさんのことを学んで成長できたので、いろいろな視点からアプローチを考えて指導できるようになってきていると思いますね。

写真:早川監督と遠藤ヘッドコーチ

遠藤指導者の立場になって、選手への“伝え方”には課題を感じています。特に試合中のアドバイスは短い時間で確実に伝えなければいけないので、日々どう伝えるのが選手にとってベストなのか勉強中です。実際に、短い言葉で感覚的に伝えた結果、「きちんと選手に伝わっていなかった」と反省した場面は多々あります。人によって捉え方にばらつきもありますし。一方で、早川は試合中のアドバイスが的確なので、これまで積み重ねてきた経験が生きているんだなと思います。

写真:早川監督と遠藤ヘッドコーチ

早川僕から見ると、遠藤の指導は決して伝わりづらい印象はないんですよね。デモンストレーションをしながら言葉と動作で丁寧に伝えている。選手も理解しやすいと思います。それでも、遠藤が日々試行錯誤し、今でも自分自身をアップデートしようとする姿勢はビシビシ伝わってきます(笑)。

僕は試合中だと“擬音”が多くなってしまうのが課題ですね。インターバルは時間が限られているので「パッでシュッだよ!」みたいに言った方が短く伝えられるんですよね(笑)。でもこれだと、特に若い選手が相手の場合は、一緒に過ごした時間が長くはないために感覚的すぎて伝わりにくい。

試合中にこうした擬音語を含む感覚的な表現でも伝わるよう、練習中からポイントを見極めつつ積極的に使って、「暗黙知」を理解してもらうようにしています。ただ同時に、擬音語に頼らずとも端的に伝えられる語彙力も鍛えなければと思っています。

遠藤僕らのコーチ(現インドネシアパリ五輪ヘッドコーチ リオニー・マイナキー氏)がそうだったんですよね。結構感覚的に指導する方で、僕らもそれを受け継いでいて(笑)。リオニーコーチから受け継いだ姿勢でいえば、練習中とそれ以外のメリハリのつけ方もそう。基本的には厳しいけれど、情熱的で温かい人で、その面でも大きく影響を受けていると思います。

写真:早川監督と遠藤ヘッドコーチ

2024年は世界で戦える選手をさらに増やす

――BIPROGYバドミントンチームの魅力、良さはどのようなところだと思われますか?

早川歴代の先輩方の積み重ねのおかげで、ようやく世界のトップを目指せる段階まできていると思います。その中で、選手が結果を残すことはもちろん、バドミントンの普及・発展のために先駆者として道を切り拓いていくチームでありたいです。選手同士は、勝負どころの集中力はもちろん、普段は和気あいあいとして仲が良く、メリハリがあるのも良いですね。選手とスタッフとの距離感の近さも、他のチームにはない良さだと思います。スタッフに若いメンバーが増えていることも影響しているかもしれません。

遠藤一人ひとりの個性が豊かなところも魅力だと思います。自然体で、自分の意志をしっかり持っている人が多い。一方で、いざという時は1つにまとまれるチームだとも思います。監督の個性が強いからそのような選手が集まっているのかもしれません(笑)。

――これまでのバドミントン人生を支えてきたものや言葉はありますか?

遠藤僕はこのネックレスですね。7年ほど前に長男が初めて描いてくれた僕の似顔絵を、東京五輪のタイミングでネックレスにしました。常に身に着けていて、お守りみたいなものです。

写真:遠藤ヘッドコーチのネックレス

早川僕は「楽しむ」ことを何より大切にしています。選手の時からスタッフになった今まで、好きなバドミントン競技を続けてこられたのは、楽しいと思えているから。それがないと難しかった。厳しい練習だけど、楽しくやる。この考えをずっと持ち続けています。

――最後に、2024年の意気込みをお聞かせください!

遠藤世界で戦える選手をもっと増やしたいです。もちろん、世界で勝つことの大変さは僕自身も理解しているつもりですが、だからこそ、時には心を鬼にして、厳しい練習を重ねていくことも必要だと思います。

早川個々の能力を上げて、チームとしては団体戦の二大タイトル(S/Jリーグ、全日本実業団)制覇を狙います。また、個人戦では、今年はパリ五輪があるので、出場できる可能性が高い渡辺・東野ペアには二人が望む“東京よりも良い色のメダル”を獲得してほしいですね。また、ロサンゼルス五輪に向けたレースも既に始まっています。特に、今好調な岡村・三橋ペアや渡邉航貴はそこを目標にサポートしていきたいです。その他、基本的なスキルアップやフィジカルトレーニングなども着実に積み上げ、チーム全体のレベルアップを目指していきます。

写真:早川監督と遠藤ヘッドコーチ

Profile

早川賢一(はやかわけんいち)
1986年4月5日生まれ。滋賀県大津市出身。姉の影響で7歳からバドミントンを始める。日本大学卒。2009年日本ユニシス(現BIPROGY)入社。2015年遠藤大由との男子ダブルスで世界選手権銅メダル獲得。2016年リオデジャネイロオリンピック男子ダブルス5位入賞。
2016年度をもって現役引退。2017年よりBIPROGYバドミントンチームと日本代表(B代表)ダブルスコーチを務める。2023年4月BIPROGY男子チーム監督に就任。
遠藤大由(えんどうひろゆき)
1986年12月16日生まれ。埼玉県川口市出身。兄の影響で5歳からバドミントンを始める。日本体育大学卒。2009年日本ユニシス(現BIPROGY)入社。早川賢一とのペアで2016年リオデジャネイロオリンピック男子ダブルス5位入賞。2017年より11歳下の渡辺勇大とペアを結成。全英オープン2020、2021二連覇。2021年開催の東京オリンピック5位入賞。2022年3月現役引退後、BIPROGYダブルスコーチに従事。2023年4月よりダブルスヘッドコーチ就任。

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