Break Through! 第二章 挑み続ける心が未来を拓く:BIPROGYバドミントンチーム/第4回 沖本優大選手
どんな時も、諦めない。粘りが生む勝利を信じて
世界の頂点を目指すBIPROGYバドミントンチームの選手たちの「挑戦」と「成長」の軌跡をつづる本企画「Break Through! 第二章」。第4回に登場するのは、チームの未来を担う期待の若手・20歳の沖本優大(おきもとゆうだい)選手です。身長165cmと男子シングルス界では決して大きくない体格ながら、高校時代から徹底的に磨き上げてきた守備力で、何度も粘り強くシャトルを拾い、長いラリーを制する──そのタフなプレースタイルは、世界のトップシーンで存在感を示す武器となっています。ランキング上位は国際大会でシード選手として認められる「世界の第一線」を意味し、日本代表としてその舞台に立つ沖本選手は、次なるステージを見据えています。さらなる高みを目指す若きホープに、飛躍のシーズンを振り返ってもらいました(2025年11月取材)。
Profile
- 沖本優大(おきもとゆうだい)
- 2005年5月28日生まれ。広島県広島市出身。兄の影響で6歳でバドミントンを始める。高校2年時に全国高校選抜大会3冠(シングルス・ダブルス・団体戦すべて優勝)。埼玉栄高校卒。
2024年4月BIPROGY入社。小柄ながら正確なショットと粘り強いプレーでゲームをコントロールする。
2024年、ルーキーとして挑んだ団体戦の全日本実業団バドミントン選手権大会で、決勝進出を懸けた2-2の勝負を制しチームの3度目の男女同時優勝に貢献。
男子シングルス日本ランキング8位(2026年2月6日時点)、世界ランキング41位(2026年2月17日)。2025年日本代表。
団体戦でも個人戦でも優勝を目指す
――現在の目標を教えてください。
沖本目標は、団体戦「S/Jリーグ2025」と個人戦の全日本総合バドミントン選手権大会、両大会での優勝です。昨年のS/Jリーグ決勝ではストレートで負けてしまい、とても悔しい思いをしました。今シーズンはそのリベンジを果たし、チーム優勝に貢献したいと思っています。そして、全日本総合選手権は、日本代表の選考にも関わる重要な大会なので、しっかり結果を残したいと思っています。
――ご自身のプレーで「最大の強み」と考えている点はどこですか。
沖本粘り強さには自信があります。どんな球でも食らいつき、しぶとくシャトルを拾い続けることで、長いラリーを自分のペースに持ち込んで、1点をもぎ取る。そんなスタイルが自分の持ち味です。
――高校時代と比べて練習環境や取り組み方に変化を感じる点はありますか。
沖本高校では試合形式の練習が中心でしたが、BIPROGYに入ってからは、同じパターンを丁寧に反復する練習が増えました。例えば、相手側コートに2人が入って2対1の形式で打ち合う練習では、1対1のときよりも返球のタイミングが速くなるので、自然と反応のスピードが鍛えられます。
入社1年目は、こうした練習スタイルの違いに少し戸惑うこともありましたが、今シーズンは2年目となり、試合中に展開が速くなっても、落ち着いて対応できるようになっていて、練習の成果が出てきたなって感じています。自分の試合動画を見返しても、前より動けているなと思います。
大会グレード(※1)を上げて挑んだ国際大会で感じた課題
――試合前はどのように過ごしていますか。
沖本普段と変わらないようにしています。「試合だから」といって特別なことをすれば、普段の力が発揮できなくなってしまいそうで。だから、できるだけいつも通りに過ごすようにしています。「勝ちたい」気持ちはもちろん大事ですが、気持ちが強すぎると逆に空回りしてしまうこともあるんです。そのため、コートに立ってからも平常心を保つことを意識しています。
――大会前の準備で大切にしていることは何ですか。
沖本対戦相手の動画は必ず入念にチェックします。特に、相手の得意なショットや、サーブレシーブでよく狙ってくるコース、フェイントのパターンなどを頭に入れて、試合の展開をイメージしておくようにしています。もちろん、実際の試合ではイメージ通りにいかないこともありますが、事前に動画を見ておくことで、相手の動きを予測しやすくなり、精神的にも余裕を持って試合に入れるようになりました。
- ※1国際大会のグレードについては、BIPROGYバドミントンチームのHPでも解説しています
――大会に向けたコンディション調整はどのように行っていますか。
沖本特定の大会に照準を合わせて調整することはしていません。大会規模に関係なく、常に目の前の試合に全力で挑むスタンスです。試合前に練習量を落として調整する選手もいますが、僕は練習した分だけ自信につながるタイプなので、たとえ翌日に試合があっても、普段通りにしっかり練習しています。
――2025年10月のマレーシア(Super100)で準優勝、11月の韓国マスターズ2025(Super300)では、初出場で準優勝という好成績でした。振り返ってみていかがですか。
沖本韓国マスターズでは、これまで参加していた大会よりもグレードが上がり、挑戦する気持ちで戦いました。実際、ショットの精度は高いし、動きのスピードも速い。でも、大会の序盤から「対応できないわけじゃない」という良い感触がありました。
2大会とも決勝では、相手のスピードとパワーに押し切られてしまいましたが、トップを目指すには、状況に合わせて戦い方を変えないと勝てないと感じました。特にマレーシアの決勝では、少しでも甘い返球をすると一気に攻め込まれて、ラリーにすら持ち込めない場面もありました。今は、ミスを恐れずにライン際を狙うことや、相手が返しにくい球を打てるように、ショットの精度や打ち分けのバリエーションを意識して練習しています。
「泥臭さ」が武器。消耗戦で相手を上回る
――バドミントンに取り組む上で大切にしている「信念」を一言で表現すると何ですか。
沖本「泥臭さ」です。「絶対に落とさない」という精神で、たとえ体勢を崩しても最後まで諦めずにシャトルを追い続ける。そんな守り抜く力が自分の持ち味です。高校時代、周りとの体格差を感じ始めたときに、「小さくても勝つにはどうすればいいか」と考え抜いた結果、たどり着いたのが、守備力を高めることでした。それ以来、守備にこだわり続けて、今のプレースタイルにつながっています。対戦相手に「(できれば)試合で当たりたくない」と思われるような、“しぶとくて嫌がられる”選手になりたいですね。
実は小学生の頃はバドミントンの他に野球もしていました。小学2年生のときにバドミントンの全国大会で優勝し、親との“ご褒美の約束”で野球部への入部が認められたんです。そこから小学6年生まで両方を続けていました。野球では三塁を守ることが多かったのですが、今思えば、あの経験が球際で粘るプレーや、滑り込んででもシャトルを拾いにいく動きにつながっているのかもしれません。野球は今でも大好きで、地元広島の広島東洋カープの試合を観に行くこともあります。
――選手生活の中で結果が出ない時期もあったと思いますが、どのように乗り越えてこられましたか。
沖本勝っても負けても、練習量を落とさず、常に試合と同じ気持ちで練習に取り組むこと。それに尽きますね。練習量だけで強くなれるわけじゃないですが、「量をこなさなければ試合には勝てない」という信念の下、積み重ねています。
世界ランキング上位を目指し、先輩の背中を追いかける
――BIPROGYのバドミントンチームにはどんな印象を持っていますか。
沖本高校時代から時々練習に参加させてもらっていたのですが、最初に感じたのは、練習に対する熱量の高さです。ミスが少なく、1球も無駄にしないという意識が伝わってきて、自分もその姿勢を見習うようになりました。練習中は全員が集中してメニューに取り組んでいますが、終わったあとは和気あいあいとした雰囲気で、オンとオフの切り替えがはっきりしているのも魅力です。先輩方もとても優しくて、2年目の自分でも気軽にアドバイスをもらえるのがありがたいですね。オフの日には、みんなでご飯を食べに行ったり、釣り好きな先輩と一緒に船で釣りに出かけたりすることもあります。もともと釣りが好きだったこともあり、海に出る時間は良いリフレッシュになっています。競技のことを忘れて自然の中で過ごすことで、気持ちを切り替える大切な時間になっています。
――チームの一員として、どんなことを意識していますか。
沖本団体戦で確実に1勝を取れる選手になりたいと思っています。大事な場面で自分を起用してもらえるように、練習試合でも気持ちを前面に出して、勝ちにこだわる姿勢を大切にしています。チームメイトとは仲が良く、普段は和やかな雰囲気ですが、同時にライバルでもあるので、「絶対に負けたくない」という気持ちは常に持っています。
――沖本選手のロールモデルは、先輩の渡邉航貴選手だそうですね。
沖本はい。航貴先輩も体格が小柄ですが、自分と同じシングルスで世界のトップと戦っている姿にすごく憧れています。練習で一緒になったときにアドバイスをお願いすると、いつも丁寧に教えてくださるんです。特に、前から出すロブ(※2)のタイミングや打ち方は、航貴先輩を参考にしています。最近、少しずつ結果が出てきているのも、先輩のアドバイスのおかげだと思っています。本当に感謝しています。
- ※2ネット際や低い打点から相手のコート後方へ 打ち上げるショット
――最後に、応援してくださるファンの皆さまへのメッセージと、今後に向けた意気込みをお願いします。
沖本小さな体でも、コートを全力で駆け回って、粘り強く勝ちにいく姿を見てもらえたら嬉しいです。現在の世界ランキングは40位台ですが、2028年のレース選考に向けて、まずは(重要な大会へ出場するための目安とされている)32位以内に入ることを目標にしています。そのためにも、Super300やそれ以上の国際大会で安定して勝ち続けられるよう、これからも全力で挑戦していきます。応援よろしくお願いします!




