自身の努力とチーム力でさらなる技の高みを“切り拓く”BIPROGYバドミントンチーム。選手たちが自身の想いや信念について熱く語る本企画。第4回は、2023年2月のダブルス結成からわずか1年で「インドネシアマスターズⅡ 2023」をはじめとする3つの国際大会で優勝するなど好成績を残し、2024年日本代表(A代表)入りを果たすなど躍進する岡村洋輝・三橋健也ペアにインタビューしました。ペア組み替えで試行錯誤する中でお互いにアドバイスし合い、切磋琢磨してきたことが、徐々に結果に表れ始めてきたと言う二人。率直にアドバイスし合える二人の関係性や、勝つために日々心掛けていること、そして今後の意気込みを伺いました。
「何でも言い合う」関係性の深化が結果につながった
――まずは、ペアを組んで1年目が終わった今、2023年の1年間の活動について率直な感想をお聞かせください。
岡村私たちは2023年度の日本代表(B代表)に、ペアを組み替えて選出されました。それまでは、二人ともそれぞれのペアにおいては後衛の役割だったこともあり、前衛・後衛それぞれの役割分担や連携面で試行錯誤の連続でした。
ただ、年齢も近く、プレー時の着眼点なども似ていて、練習中や試合中など、お互いに気付いたことはその場ですぐ話し合える関係になりました。二人で話し合いさまざまなトライアルをしながら成長できた1年だったと思います。
三橋2023年はコンスタントに結果を残すことができたと思います。ただ、大事な場面や、あと一歩のところでベストパフォーマンスを出しきれなかった悔しさもありました。お互いの役割分担が曖昧だった部分や、プレーに柔軟に対応するための技術力、状況判断力、メンタルなど、全体的にまだ弱いところがあるので、その点は今後の課題だと感じています。
――2023年は、3つの国際大会で優勝し、また、同年11月の熊本マスターズでは世界選手権2023覇者の韓国ペアを破るなど活躍が光りましたが、その要因はどのような点にあると捉えていますか?
岡村お互い「もっと良くしていこう」との気持ちが強く、負けてもすぐ話し合いをし、改善し続けることができたからだと思います。練習中や試合中だけでなく、試合観戦時やプライベートでも「こんなプレーいいよね」「こんなプレー増やしたいね」と何でも話して、すぐ実践しています。
三橋違うペアでの経験や、国際大会での経験の積み重ねもあり、お互いの技術や経験を生かせたことが、良い結果につながっていると思います。元々は後衛同士なので、自分がネット前に仕掛けにいったときも岡村選手がバックで広く守ってくれている安心感も大きいですね。
――日々、コミュニケーションを密にしていることが伝わってきます。良好な関係を築くために心掛けていることは何ですか?
岡村三橋選手は1つ年上ですが、上下関係を感じさせない優しさと接しやすさがあります。僕は「みっちゃん! ご飯行こうぜ」と友達のように話しかけています。(笑)
三橋僕は特に何も意識していないのですが、それが良いのかもしれません。(笑)
――ペアを組む前から仲が良かったのでしょうか。
岡村はい。以前からバドミントンの話をすることも多く、今もその延長のような感覚です。お互い、やっぱりバドミントンが好きなので、一緒に試合観戦をすることも多いです。
――お互いのどんなところが素敵だと思いますか?
岡村いつも明るいところです。僕はネガティブな部分があって、例えばプレー中、調子が悪いと落ち込んでしまうことがあるんです。そんなときでも「行くぞ!!」と三橋選手は声を出して引っ張ってくれるので、とても助けられています。
三橋岡村は……まず、イケメン!顔がかっこよくて、素敵です。(笑)
岡村えっ、それだけ?内面的なところは?(笑)
三橋思ったことはハッキリ言ってくれるところ。言語化が上手でいつも的を射ているので、意見を言われてもぶつかることがありません。意図がよく分かるので、まずは受け止めて実践しています。良い刺激になっていますね。岡村選手からバドミントンの話を投げかけてくれることが多いので、その流れで僕もいろいろと言えていると思います。
ペアを組んでからは、より試行錯誤を重ねて成長できている
――これまでのバドミントン人生での挫折や苦労、それを乗り越えたエピソードがあれば教えてください。
三橋僕は、大学卒業後、BIPROGYに入社しました。入社当時は、チームのスキルの高さや練習の質など“当たり前”のレベルがそれまでと全く違って衝撃を受けました。先輩からもアドバイスをいただくのですが、その内容や意図がまったく理解できなくて、「ここでやっていくのは無理かも…」と思い詰めたほどです。それでも、「自分にはバドミントンしかない」と思っていたので必死に食らいついていきました。
岡村選手と組み始めてからは、どうすれば自分が成長できるのかが、少しずつ見えてきました。例えば、僕は人からの助言をそのまま理解しようとするとなかなか頭に入ってこないので、一度メモして、自分の言葉に置き換えてインプットするようにしてみました。すると、すっと理解できるようになったんです。「自分の感覚に当てはめる」ことで初めてアドバイスの内容が身に付くと分かってからは、バドミントンの楽しさを改めて実感しています。
岡村2022年までは日々の努力が試合結果につながらず苦しみましたが、地道な努力を積み重ねるしか道はないと思い、少し意識を変えていつもと異なるアプローチに挑戦してみたり、ペアでの話し合いを深めたりと試行錯誤を重ねました。その経験も生かしながら、2023年からは三橋選手とのペアで結果を出せてきていることが、本当にうれしいです。
――現在、特に力を入れて取り組んでいる練習はありますか?
岡村先ほど少し触れましたが、お互いに元々ポジションが後衛でした。後衛は“攻める”ことが求められるので攻撃力はありますが、相手の返球に素早く反応する、隙を見つけてチャンスをつくるなど前衛に求められる細かい技術やスキルが不足しているとも感じています。その部分は、二人で臨機応変に対応できるよう特に意識して練習していますね。
三橋ゲームメイクの能力を磨く必要があると思っています。後衛同士の僕たちは点数を取りにいきすぎる部分があります。ラケットが下がってしまうと次の一手が遅れてしまうので下げないよう意識していますが、その癖もなかなか抜けません。これらの改善も意識しつつ、試合の中での瞬時の状況判断など、羽根を打つ以外の能力も高めていきたいです。
――BIPROGYバドミントンチームの魅力、良さはどのようなところだと思われますか。
岡村コーチ陣の豪華さですね。いろいろな経験を元にアドバイスをいただけているので、本当に価値があります。メンバーは多様な人がいて、バランスの良いチームだと思います。
三橋他のチームより、選手間でアドバイスをし合えていると思います。分からないことがあれば聞いたり、「今の、良かった」など褒め合ったり、コミュニケーションが多いですね。
岡村確かに。バドミントンの話となると特に、先輩後輩の垣根なくいろいろ話せていると思います。
――これまでのバドミントン人生を支えてきた信条や言葉などがあれば教えてください。
岡村『I can do it.』の言葉です。BIPROGY入社直後は、先輩との実力の差に落ち込むこともありました。僕はネガティブなところがあるので、それでひるんでふさぎそうになってしまって。折れてはいけない、なんとかしないと、と思ったときに「できる、できる!」と早川監督から言ってもらえて、すごく心の支えになったんです。それからは、練習中や試合中など、どんなときでも『I can do it.』と自分に言い聞かせています。
三橋しつこくやり続けることです。僕は、やりたいと思ったらしつこくやり続けるタイプ。BIPROGYに入ったときにぶつかった壁も、僕にはバドミントンしかないと乗り越えられた。高校生のときからBIPROGYに憧れていたので、このチームでバドミントンをやれていることがありがたいです。その想いも、「しつこさ」の原動力になっていると感じます。
2024年は、今まで以上に結果にこだわっていきたい
――最後に、2024年の意気込みをお聞かせください!
岡村前に進む気持ちを強く持って、より結果にこだわりたいです。昨年を超えられるように、勝ち上がって結果を残したいです。またチームとして臨む S/JリーグTOP4や全日本実業団といった団体戦でも、今年は必ず優勝を勝ち取りたいです。
三橋2024年は、今まで以上に貪欲さをもって挑みたいです。トレーニングや試合で、気持ちをブレさせずにやっていくのみ。結果でいうと、全日本総合は優勝したいです。団体戦では、BIPROGYバドミントンチームの一員として今まで以上に誇りと自覚を持って戦いたいと思います。また、年末に世界のトップ8だけが出場できるワールドツアーファイナルズという大会があるのですが、それに出られたら1年間良い結果だったという証明になるので、出場できるように頑張りたいです。
- ※この取材は2024年1月に行いました。
Profile
- 岡村 洋輝(おかむらひろき)
- 1998年12月6日生まれ。北海道帯広市出身。2人の兄の影響で8歳からバドミントンを始める。埼玉栄高校卒。2017年4月日本ユニシス(現BIPROGY)入社。2023年1月より三橋健也との男子ダブルスで2023年日本代表(B代表)となり、11月の熊本マスターズでは世界選手権2023覇者の韓国ペアを破るなど着々と実力を上げ、2024年日本代表(A代表)に選出される。
- 三橋 健也(みつはしけんや)
- 1997年7月11日生まれ。群馬県前橋市出身。父と兄の影響で5歳からバドミントンを始める。日本大学卒。2020年4月日本ユニシス(現BIPROGY)入社。富岡高校時代は、渡辺勇大とのペアでインターハイ優勝や高校選抜二冠の成績を残している。岡村洋輝との男子ダブルスで2023年国際大会3勝。全日本総合第3位。世界ランキング30位(2024年2月13日時点)。2024年日本代表(A代表)。