私の本棚 第7回

「ネオバンク」領域を理解する

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初心者必読の本から上級者向けの本、「座右の書」などを推薦者のコメントとともにご紹介するコーナー。第7回のテーマは、「ネオバンク」領域を理解する、です。価値ある一冊に巡り合う一助となれば幸いです。

写真:竹内裕司

今回の推薦者
ネオバンク戦略本部
執行役員本部長
竹内裕司

Bank4.0 未来の銀行

米国Fintechの一類型である「Neobank(※)」の先駆者「Moven(ムーブン)」。そのファウンダーで、著名な未来学者のブレット・キング氏の作品が本書だ。Bank2.0、3.0に続く現時点のシリーズ最新作である本作において著者は、「first principle(第一原理)に立ち返る」ことを主張の根幹に置いている。その上で、「現在の社会やテクノロジーの環境下、金融関係者はゼロベースで真に顧客にとって利便性の高い銀行・金融業務を提供しようとしたらどうなるかを考えるべき」と説く。キング氏は、過去から続いてきた伝統的な業務スタイルを前提としない、CX/UXを中心としたビジネス再定義の必要性は、今多くの産業で共通して求められる思考スタイルである点を示唆する。日本でも銀行員やFintechスタートアップなど多くの金融関係者だけでなく、さまざまな産業界の人々が本書を読んでいる。この領域に興味のある方はぜひご一読をお勧めしたい。

※当社でいうネオバンク事業の定義とは少し異なり、銀行代理業のようなビジネスモデルを持つ事業者そのものを指す。欧米では多くのNeobankが頭角を現してきている。

[著]ブレット・キング
[出版社]東洋経済新報社
[発行年月]2019年4月

NEXT GENERATION BANK
次世代銀行は世界をこう変える

『WIRED日本版』の元編集長である若林恵氏の責任編集によるムック本。総じて、この領域にある程度の前提知識をお持ちの方に向けた書籍となっている。ある意味、”ストレート”な書籍名ではあるが、奥行きのある内容で構成されている。例えば、「デジタル分散主義」の進行による社会構造の変化やそれに伴うグローバルでの金融関連(テック系含む)プレーヤーの動きなどをアカデミックな論調でいくつかの特集としてまとめている。その一つである「次世代銀行員のための20冊」では、貨幣論やポスト資本主義、AIや法律に至るさまざまなジャンルの書籍を紹介している。手に取りやすさを主眼に置いたムック本の形式なので、この書籍のみで詳細な知識を得ることはできないものの、金融業界の変化やその全体的なダイナミズムを捉えることができる一冊としてお勧めしたい。

[編著]若林恵
[出版社]日本経済新聞出版
[発行年月]2018年12月

アフターデジタル2
UXと自由

著者は、UXデザインや関連業務のコンサルティング会社である「ビービット」の東アジア営業責任者で、上海オフィスに勤務する藤井保文氏。前作の『アフターデジタル』(日経BP、2019年)も「オンラインとオフラインの主従が逆転した世界」を、デジタル先進国といえる中国の事例をもとに説明し、大ヒットした。本書はその続編となる。本書において、「データが多く集まれば、それを使って儲けることができる。それゆえ、利益を生み出すためのデータ活用方法を考える」という、多くの日本企業に垣間見える幻想や思考に対して、著者は警鐘を鳴らす。金融に特化した内容ではないが、あらゆる産業で起きていることを、平易な表現な文体で理解しやすく書かれているためお勧めしたい一冊。

[著]藤井保文
[出版社]日経BP
[発行年月]2020年7月

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