部門の壁を越えて実現した「データの民主化」

全社員が使えるBIツールで、データドリブン経営へ

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日本生命グループの一員として、金融機関窓販を中心に資産形成・資産承継商品を提供するニッセイ・ウェルス生命。同社は顧客ニーズに応える商品開発と業務効率化の両立を目指し、全社共通データ基盤の整備に着手した。データ増加を見据えたクラウド基盤の採用、直感的に操作できるBI(Business Intelligence)ツールの導入により、部門の壁を越えて全社員が共通データにアクセスできる「データの民主化」を実現。データドリブン経営への確かな一歩を踏み出した。今回は、プロジェクトの方針を固めたニッセイ・ウェルス生命の経営企画部門、システム導入を推し進めたIT部門、そして導入を支援したBIPROGYの各担当者に話を聞いた。

Azureとデータ分析ツールで「データの民主化」を目指す

ニッセイ・ウェルス生命が提供する窓販商品は、資産形成、資産承継を目的とした金融商品であり、マーケット感応度の高い商品を迅速に提供することが求められている。顧客サービスの充実と満足度向上を目指す中で重要視されたのが、経営におけるリアルタイムな意思決定のためのデータ活用だった。

データ活用の環境を整備するに当たり、同社では今後のデータ増加を見越して、柔軟性やセキュリティに優れたクラウド基盤であるマイクロソフトのAzureを採用し、「データの民主化」を目指した。同社執行役員の末松良成氏は「基幹システムもAzureや他のクラウド上で構築する方針を立てていたため、データ基盤も同じプラットフォームを選択しました。売上の増加とチャネルの多様化など、扱うデータ量が今後増える中で、柔軟に対応できると考えたのです」と話す。

写真: 末松良成氏
ニッセイ・ウェルス生命保険株式会社
執行役員IT本部長 兼 IT戦略企画部長 末松良成氏

同社執行役員の大笹慎悟氏は「従来は経営会議の目的に合わせて必要なデータを集計するのに時間がかかっていました。部門ごとにデータを保持しており、社内にデータが分散している状態だったのです。市場ニーズへの即応性が求められる中、この状況を打破するためにデータウェアハウスを構築することが急務だと考えていました」と語る。

写真: 大笹慎悟氏
ニッセイ・ウェルス生命保険株式会社
執行役員 経営管理本部長 大笹慎悟氏

データは営業、保険金支払い、企画部門などの事業領域ごとに管理されており、意思決定に必要なデータを収集するには、経営企画部門、IT部門でそれぞれ年間約200時間、合計約400時間もの作業が必要だった。しかもリアルタイムなデータではなかったため、経営会議での判断を過去の実績や経験に頼ることもあったという。

同社のIT上級シニアスペシャリストの小川裕之氏はAzureの採用について「今までもマイクロソフト製品を数多く導入しているので、それらのツールと相性が良いことと、Azureの拡張性やセキュリティの高さを評価しました」と語る。

写真: 小川裕之氏
ニッセイ・ウェルス生命保険株式会社
IT本部 IT戦略企画部 IT上級シニアスペシャリスト 小川裕之氏

データ分析基盤を構築するパートナーとして、新たにBIPROGYが選ばれたのは、生命保険業界でデータ分析基盤の構築実績があったこと、Azureに精通していたことが決め手となった。「提案が具体的でフィージビリティも高い印象でした」と末松氏は振り返る。

データ分析支援ツールとして提案されたのは、BIPROGYが開発したBIツール「MartSolution」だ。ニッセイ・ウェルス生命IT本部の山崎薫氏は「多くのBIツールを精査した中、MartSolutionは直感的に操作できて、専門知識がなくても扱いやすい印象だったため、業務部門に提供するツールとしてベストだと判断しました」と語る。

写真: 山崎薫氏
ニッセイ・ウェルス生命保険株式会社
IT本部 IT戦略企画部 担当部長 山崎薫氏
図: MartSolutionの画面イメージ。
MartSolutionの画面イメージ。MartSolutionはデータの活用目的に応じて、ユーザーごとに最適なビジュアル表現を採用。直感的に気づきを得られる

一緒に試行錯誤を重ね、部門の壁を突破した

プロジェクトがスタートすると、組織の壁が立ちはだかった。部門が保持しているデータの開示がスムーズに進まなかったのである。山崎氏は「これまで、基幹システム以外は各部門が領域特化したデータを抱えておりました。全社共通のデータ基盤を活用し分析に生かすデータドリブン経営に関して、経営層は理解を示すものの、実務部門の一部ではイメージがしにくく、理解を示してくれる部門は多くはありませんでした」と話す。

全社一丸となった取り組みに向けて、プロジェクトでは2つの軸で取り組んだ。まずは経営企画部が旗振り役となって取り組みの構想を社内関係者に説明し、各部門のデータ開放を促す方針を打ち出し、IT部門が各部門を回ってデータの棚卸しを一緒に行ったうえで、中身を解析した。

「データがどこにあって、どのような構造になっているのかを把握するのに時間がかかりました」とニッセイ・ウェルス生命経営企画部の中村拓郎氏は大変さを語る。属人化したマクロが多く、入手したデータがどのように加工されたのかを把握しようにも、マクロを組んだ担当者がすでに退職しているケースなどもあった。

写真: 中村拓郎氏
ニッセイ・ウェルス生命保険株式会社
経営企画部 経営企画グループ 専門課長 中村拓郎氏

そういった中、プロジェクトメンバーの支えになったのがBIPROGYの存在だった。山崎氏は「データの標準化に苦労していた時、BIPROGYの担当者が手厚くサポートしてくれました。当社の業務への理解が深く、技術に精通していて高い専門性を持っていると感じました。現場での協働体制に何度も助けられました」と話す。

中村氏は「BIPROGYとは毎週定例会議を行い、常に状況を共有している安心感がありました。分からないことは半常駐の担当者に直接聞きに行くなどして、プロジェクトを推進する上で支えとなってくれました。いつも柔軟な姿勢で対応してくれて心強かったですね」と二人三脚での日々を振り返る。

データ標準化の具体的なアプローチについて、大笹氏は次のように説明する。「従来は部門ごとに領域に特化した状態でデータを持っており、類似したデータ名でも定義が異なるため、部門をまたいで突き合わせると数値が異なることがありました。そのため、公表された決算データを基準にすることで標準化を図っていきました」。また、日本生命グループの一員として、日本生命の考え方を反映することも重要だった。決算数値の算出を担っている日本生命からの出向者も、かねてより本プロジェクトの必要性を感じており、プロジェクトの当初からともに参画することで推進の一翼を担った。

図 ニッセイ・ウェルス生命が目指すデータ活用の道のり
ニッセイ・ウェルス生命が目指すデータ活用の道のり

稼働開始で、狙い通りの効果を即座に実感

試行錯誤の結果、データが整理され、2025年4月に本格稼働を開始したMartSolution。ユーザーが直感的に操作できるインターフェースで、現場の業務に即したデータ参照や可視化ができる。ダッシュボード画面に欲しいデータが表示されると、「使いやすい、見やすい」と利用者の多くがすぐに効果を感じた。末松氏は「稼働当初はまず50人程度にアカウントを付与したのですが、開始した月のアクセスが数百件に達しました。その後アカウント数を増やしていき、アクセスは月間1000件程度にまで一気に増加しました。全社員が共通データにアクセスできる『データの民主化』に向けた取り組みの第一歩を踏み出しました」と話す。この先のデータドリブン経営につなげていくスタートを切ったのだ。

プロジェクトを支援したBIPROGY側も協働体制で取り組んだ成果を感じている。プロジェクトマネージャーの笠井雄亮は「信頼関係の構築と目的の共有を重視した中、半常駐で顔の見える体制で取り組めたことが良かったと思います。プロジェクトの一員として接してもらい、共創の価値を実感できるプロジェクトとなりました」と話す。

写真: 笠井雄亮
BIPROGY株式会社
ファイナンシャルサービス第一本部 SIサービス二部 システム一室二課 主任 笠井雄亮

提案フェーズを担当したBIPROGYの岩月一平は「Azure PaaSとMartSolutionの組み合わせを提案した背景には、『複雑なシステム環境の中で、業務に即したデータ活用を実現したい』というニーズが見えたからです。安定したデータ基盤と柔軟なユーザー操作性を両立できる、金融機関に適した基盤構築を提案しました」と振り返る。

写真: 岩月一平
BIPROGY株式会社
プロダクトマネジメント部 ITプラットフォーム企画室 データ基盤サービス課 岩月一平

プロジェクト責任者の大畑恵美は「『顧客本位のサービス提供とデータ活用による業務高度化』というニッセイ・ウェルス生命さまのビジョンを理解し、技術的にどのように支えるかに注力しました。将来的な拡張性や運用の持続性を見据えた設計にすることも重要なポイントでした。機動力を持つフロント部隊と技術力で支える後方部隊の体制により、チームワークで支援しました」と語る。

写真: 大畑恵美
BIPROGY株式会社
フィナンシャルサービス第一本部 副本部長 兼 SIサービス二部 部長 大畑恵美

データ基盤を強化し、AI活用による分析へ

現在、200人近くの社員が日常的にMartSolutionを利用し、データ活用に向けた取り組みが加速度的に広がっている。データの収集や調整にかかっていた数百時間の工数が大幅に削減され、業務が効率化された。月間アクセス数も2000件に迫る勢いだ。大笹氏は「どこから手を付けたらよいのか分からないと思っていたプロジェクトが、BIPROGYの支援により成功しました。データドリブン経営に資するデータ活用への挑戦はまだまだ続きます」と話す。同社は今後、人事や事務オペレーション、コンプライアンスに関連したデータも対象に、データ活用を拡充していく方針だ。

同時に見据えているのはAIの活用だ。「2026年度にはデータの量と質を充実させ、データ活用の基盤を構築し、次のフェーズとしてAIを分析に活用して、市場に合った商品をよりスピーディーに開発できるようにしたいと考えています」と末松氏は話す。BIPROGYに対する期待も大きい。「BIPROGYは信頼できるビジネスパートナーです。新しい技術を素早くキャッチし、われわれにフィットする提案で引き続き支援してほしいですね」と末松氏はほほ笑む。小川氏は「BIPROGYが当社のDXをゼロからイチにしてくれました。当社にないものをプラスする力に今後も期待しています」と話す。

MartSolutionには、生成AIを利用したオプション機能である「レポートコンシェルジュ」が追加される予定である。ユーザーが必要なデータやレポートを自然言語で指示して抽出できるほか、レポート上のデータの傾向を提示する仕組みも提供される。BIPROGYは、生成AIで実現できるさまざまな機能の拡張を強化していく意気込みだ。ニッセイ・ウェルス生命とBIPROGYの二人三脚はこれからも続いていく。

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