2022年に設立25周年を迎えたユニアデックス。BIPROGYグループの一員として、これまでICTインフラ分野における強みを生かし、幅広い領域でICTインフラ関連の事業を拡大させてきた。現在、全国約3600社の顧客に対してサービスを提供し、近年では各種ソリューションの強化とともに顧客への伴走支援を強化する「カスタマーサクセス活動」に注力している。また、コーポレートメッセージ「同じ未来を想うことから。」を軸に、DX共創をはじめとした新領域への挑戦を続けている。本稿では、2022年4月にユニアデックス代表取締役社長に就任した田中建が、BIPROGY FORUM 2022において「同じ未来を想い、成功への地図を描く ~BIPROGYグループにおけるユニアデックスの連携ビジョン~」と題して語った思いを紹介したい。
「進化する技術力」と「完遂する人間力」を強みに課題解決策を提示
1997年に設立されたユニアデックスは今年、設立25周年を迎えた。売上高は約1300億円にまで成長し、BIPROGYグループの全従業員(8000人程度)の中でも同社は約2500人を占め、強い存在感を放っている。そのサービス拠点としては、パートナー企業を含めて106カ所で全国をカバーする体制を構築し、海外視点で捉えた際にはアジアを中心に6社の関係企業がある(2022年9月現在)。
「今後、BIPROGYグループの海外展開は本格化するでしょう。私たちも一緒になって、グローバルビジネスに注力していきたい」とユニアデックス社長の田中建は考えを述べる。
田中は2022年4月に現職に就いたばかり。それまでは日本ユニシス執行役員デジタルアクセラレーション戦略本部長として、グループ全体におけるDX推進のリーダー役も担った。日本ユニシスからBIPROGYへの社名変更と同じタイミングで、中核グループ企業の社長に就任した形になる。
陣頭指揮を執るユニアデックスのビジネスエリアは広い。そこにはシステムの設計・構築サービスから保守運用、アウトソーシング、さらには次世代のビジネス提案までが含まれる。とりわけICTインフラ分野に強みを持ち、顧客要望の実現に向けて周辺領域でもケイパビリティを拡充し続けてきた。グループ間の連携はこれまでも緊密に図られてきたが、田中はこうしたリレーションをさらに強化したいと考えている。
「当社が直接取引するお客さまは3600社。そのうちBIPROGY経由のお客さまは約1000社です。そして、BIPROGYと当社の共通のお客さまは約700社。共通のお客さまとのお付き合いをさらにひろげるとともに、より深いグループ間の情報共有や連携を実現していきたい。そんな方向性を目指しています」(田中)
近年、企業が抱える課題は多様化している。例えば、新事業の創出や人材不足、ICT環境の複雑化への対応、運用コストの削減、SDGsへの適応などだ。そして、パートナーとの共創に注力したいと考える企業もあれば、「2025年の崖」問題を喫緊に解決したい企業など、その様相もさまざまだ。
現状を踏まえ、「お客さま課題に対して、当社はITアウトソーシングとソリューションという両軸を中心に、各種サービスを組み合わせて解決策を提示しています。具体的には、ITアウトソーシングでは『アセスメント』と『運用管理、保守』。ソリューションの面では『マルチクラウド、ネットワーク、セキュリティー』に注力しています」と田中は語り、サービス提供を行う上で同社が持つ強みについてこう続ける。
「約3600社に上るお客さまとのつながり、約260社の協力パートナーの存在に加えて、エンジニアの力があります。当社には約1600人のエンジニアがおり、各種の認定資格取得数は延べ約9000以上。その強みを言葉として表現すれば、『進化する技術力』と『完遂する人間力』であると考えています」
カスタマーサクセス活動の推進と2つの成功事例
強みを維持・強化しつつ顧客企業に選ばれ続けるため、ユニアデックスは顧客の伴走支援などを強化する「カスタマーサクセス活動」を推進している。そのポイントを田中は次のように説明する。
「お客さまと当社、それぞれの観点で6つのポイントを整理しました。例えば、お客さまからは『ふところの奥行きが深い! 的確な解決策がすぐに出てくる』と思われたい。そのために、私たちは『ベストプラクティスを取り揃え、ブラッシュアップを常態化する必要がある』といった整理の仕方です」
ユニアデックスの活動の根底には、BIPROGYが掲げる「Foresight in sight」と近い考えがあるという。「お客さまのビジネスに寄り添い、思いをいち早く感じ取って何らかの提案につなげる。あるいは、ビジネスにつながるアイデアを提起する。そんな取り組みを通じ、お客さまから信頼される相談相手となりたいのです」と田中は強調する。カスタマーサクセスの最大化に向け、同社はソリューションの拡充を進めている。代表的な2つの成功例を以下で紹介しよう。
1つ目が、クラウドセキュリティーサービス「CloudPas」。マルチクラウド環境においてシングルサインオンなどの利便性とセキュリティーを両立させるソリューションだ。導入先である投資信託委託業・投資顧問業のレオス・キャピタルワークスは、クラウド認証基盤サービス「Okta」とクラウド・コンテンツ・マネジメント・プラットフォーム「Box」などを組み合わせ、CloudPasの枠組みをベースにマルチクラウド環境におけるセキュアな情報共有を実現し、快適なリモートワーク環境を整備している。「OktaとBoxを組み合わせた導入事例では、当社は多くの実績があります。経験を生かし、レオス・キャピタルワークス様にご提案しました。その結果、短期での導入に成功し、お客さまからも高い評価を受けています」と補足する。
そして、2つ目が、クラウド型ネットワークサービス「Wrap」だ。既存デバイスにソフトウェアを追加することで、企業ネットワークへのセキュアな接続が可能になる。これもスピード導入が可能なソリューションだ。
「SIM機能をソフトウェアで実現し、プライベートLTEによる通信を可能にします。VPNは不要です。PCなどのデバイスを、スマホのようにネットワーク接続することができます」と田中は説明する。実事例の1つが、通信販売事業を主軸とするジャパネットホールディングスだ。同社コールセンターには日々3万件もの注文が入る。対応する多くのコミュニケーターがコールセンターで席を並べるが、パンデミックの中で「3密」状況を見直す必要に迫られた。
「課題解決のため、ジャパネットホールディングス様はコロナ禍で空き部屋の増えたホテルに相談したそうです。そして、ホテルの部屋を借りてコミュニケーターの職場としました。課題になったのがセキュリティー。個人情報を含む情報をセキュアに管理しつつ、従来と変わらない業務環境をできるだけ短期で構築する必要がありました。そこで、ジャパネット様が選んだのがWrapでした」と当時の状況を説明する。結果として1週間あまりで大規模かつセキュアなネットワーク構築を完了し、「ホテル受注」環境が本格稼働し始めたという。
お客さまとともに新たな価値づくりに取り組む
ユニアデックスはDXにも注力している。さまざまな取り組みがある中で、本稿では社会課題解決、国の科学技術研究への貢献、企業とのDX共創の分野における取り組みについて、事例を紹介したい。
まず、社会課題解決については、廃棄物処理やリサイクル分野のDX推進を目指し、専門的な知見を持つパートナーと共同で「資源循環システムズ」という新会社を設立したことが挙げられる。その他、リアルタイムの下水監視に関する実証実験などにも取り組んでいる。
次に、科学技術研究への貢献については、今年5月にユニアデックスの研究者が他の研究者とともに、文部科学大臣表彰として科学技術賞を受賞した。日本の科学技術学術情報を構造化情報として世界に発信するresearchmapの提供に関する研究が評価された。
そして、企業とのDX共創については、IoTデバイスを用いた実証実験などに加え、2020年1月に開設した「ACT+BASE@丸の内」が注目されている。田中は、「DX共創スペースであるACT+BASEには多様なIoTデバイスが備えられています。このため多様な方々が集まり、共同実験を行うことも可能です。また、異業種の皆さん同士での議論やワークショップを実施する場でもあります。『やってみたいこと』を『やってみる』、アイデアをアクションにトランスフォームする、多様な知がつながり創造へと変化していく。そんな場がACT+BASEです」と解説する。オープンから約2年を経た現在、顧客企業をはじめ、幅広い業種の企業に活用されている。つながりの中から、新たなDXが生まれてくるはずだ。
「同じ未来を想うことから。」をコーポレートメッセージに掲げるユニアデックス。その思いを田中は「お客さまに寄り添い、思いをいち早く感じ取って提案する。そして、一緒になって新たな価値づくりに取り組む。私たちはそんな存在でありたい」と語る。同社はこれからも顧客企業と「同じ未来」をイメージしつつ、グループシナジーをさらに高めてカスタマーサクセスに伴走したいと考えている。