DXでビジネスモデルを変革し、持続可能な社会を創造する

変化をチャンスに。お客さまとの「共創」で描くBIPROGYのDX

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「DX」という言葉が広く知られるようになってから5年以上が経つ現在。多くの企業が取り組みを進めつつある。目的は、大きく2つ。業務や組織・人における「企業内変革」と、競争優位の確立や新たな製品・サービスを生み出すための「事業変革」だ。日本経済団体連合会レポートによると、社内の業務効率化や生産性向上を図る企業内変革はすでに66%の企業が実施する一方、事業変革に向けて歩む企業は17%にとどまる。こうした中、BIPROGYは、事業変革を視野にDXに取り組む企業群との「共創」をコーディネートしてきた。そこでは、従来的な受発注の関係性を超え、新たな価値創造に向けた広がりも生まれている。今回は、キーパーソンである佐々木貴司(CDO・常務執行役員)と、永島直史(常務執行役員)にこれまでの共創事例とDX成功のポイントを聞いた。

ヘッドライン

BIPROGYが考える「企業DX」と、「社会DX」

2018年、経済産業省は「日本企業のDX実現が遅れることで世界におけるデジタル競争に負け、2025年以降の5年間で毎年12兆円の経済損失が発生する」という内容のレポートを発表した。この危機は「2025年の崖」と呼ばれ、現在に至るまで政府は警鐘を鳴らし続けている。

これまで企業のIT化は進められてきたが、なぜ今、DXの推進が求められているのか。BIPROGYの佐々木貴司(CDO・常務執行役員)はこう説明する。

「IT化とDXには異なる狙いがあります。IT化は、省力化やコスト削減を手段として業務効率アップを目指します。その一方、DXで目指すのは、新たな価値創出や事業変革――ビジネスモデルを変えてそれらを実現する仕組みづくり、いわばアウトカムを最大化するための手段です」

写真:佐々木貴司
BIPROGY株式会社
CDO常務執行役員 佐々木貴司

多くの企業が抱える経営課題には、「コスト削減」「領域拡大・価値創出」「社会的要請」などがある。この点、コスト削減を考える際には、経済面のみならず、人材配置や時間軸などでも捉える必要がある。また、領域拡大・価値創出では、お客さまの満足度を目的としてサービスの質を上げることが求められる。そして、昨今の社会的要請への対応の比重が高まる中、法制度や世界的なルールなどのレギュレーションだけでなく、ESG経営やSDGs、D&I、働き方改革、顧客要求等も含められるだろう。

図:3つの経営課題
近年は3つの経営課題の中でも、社会的要請の比重が特に大きくなっている

これらの課題について、佐々木は「企業がDXを推進することで解決に近づく可能性が高まる」と強調する。現状のサービスの質を落とさずにコスト削減を図りつつ、削減したコストでサービス向上・拡大に投資するサイクルを回すことが可能となるからだ。佐々木の言葉を、BIPROGYの永島直史(常務執行役員)はこう補足する。

「私たちは、DXを『企業DX』と『社会DX』の2つの観点で捉えています。自社事業に新たな価値を生むのが企業DX。そこから踏み込んでESGやSDGsを背景に自社事業を社会課題解決につなげるのが社会DXです。特に社会DXは、自社だけで取り組むことは難しく、さまざまなステークホルダーと一緒に進める必要があります。BIPROGYはデジタルが関連しない領域も含め、構想の具現化や課題解決の初期フェーズから伴走していくことが必要だと捉えており、実際に取り組みを進めています」と話す。

写真:永島直史
BIPROGY株式会社
常務執行役員 永島直史

以下では、その具体的な事例について紹介していきたい。

単なる受発注の関係から、共創しDXに伴走する関係へ

従来のシステム開発から一歩踏み込み、初期の構想フェーズからクライアントとともに取り組んだケースの1つが、CX(カスタマーエクスペリエンス)を支えるための業務プロセスやデータのデザインを行い、情報基盤の変革を図った全日本空輸(ANA)との企業DXの取り組みだ。

ANAでは、スマホの活用などによる非対面の手続きでお客さまの搭乗をスムーズにしている。これはサービスとして便利な一方、お客さまとの関係性が薄れる危険性がある。そこで、「お客さまの特性に合わせ、必要なサービスを必要な形で提供していく」ことを念頭にデジタルを駆使してお客さまとの関係性を深める方法を模索。BIPROGYとともに顧客行動に基づくデータを共有するプラットフォームを構築したことで、顧客ペルソナやジャーニーに応じたサービスの提供へとつながっている。さらに部門ごとにこれまで個別最適で設計・管理していた顧客データも一元化。このANAのCX基盤構築には高度なデータアーキテクチャが必要であり、その設計にはBIPROGYが携わっている。こうしてデータ共有が容易になったことでより深いお客さま満足度の向上に寄与している。

社会DXに取り組んだケースでは、「地域経済課題」の解決を目指した三井不動産との事例がある。この共創は双方が感じていた社会課題に対しての「目指すべき社会観」が起点となっている。この社会観として両社の共感するキーワードとなったのが「人が主役」ということ。そこで、三井不動産は「人が主役」の未来の街づくり、BIPROGYは「人が主役」のスマートシティを実現するデジタル基盤の構築というゴールをそれぞれに設定。三井不動産がスマートシティの実現を目指す柏の葉をフィールドに取り組みがスタートした。

その舞台となった「柏の葉スマートシティ」では、「パーソナルデータの本人主権による流通」を推進し、柏の葉の住民や働く人々向けに提供される「柏の葉データプラットフォーム」(通称:KDPF)を開発。これは、柏の葉スマートシティを舞台に、あらゆる人々、事業者、機関がデータを安全に連携・利活用できる仕組みだ。構築に当たっては徹底的に“出来上がった後の社会観”を共有したという。そのために、街に暮らす人々が紡ぐ生活の物語を考え、仕組みを利用する生活者のモチベーションや不安を想定。それらのイメージに合致する仕組みをシステムとして具現化した。この仕組みにはBIPROGYが提供するデータ連携基盤「Dot to Dot」が活用されている。

柏の葉データプラットフォームの概念図

図:柏の葉データプラットフォームの概念図
柏の葉スマートシティ内で日々生まれ、更新される個人データや街データが連携され、そのデータは企業や各種機関が利活用できる。企業などは利活用したデータを基に新たな価値・サービスを創出し、個人や街へ還元。そして、個人や街からまた新たなデータが生まれるという循環を描くのがこのプラットフォームだ。個人のユーザーは、パーソナルデータの連携先を自ら決定し、あくまでも自分のために自身のデータを生かすことができる。

このプラットフォーム(2020年11月から供用開始)を中核に、両社は、「運営(データプラットフォーム共同運営)」「拡大(街づくり活動への企業招請)」「拡散(スマートシティコンソーシアムを通じた対外発信)」という3つの共同活動を行ってきた。永島はそのポイントを次のように説明する。

「地域のデジタル化を進めるという課題は、デジタルインフラが整備されれば解決するのではなく、『街そのものの運営』と『デジタルインフラ』の2要素があって初めて解決に向かいます。当社は、データプラットフォームの構築・運用は可能です。しかし、それを使う実際の生活者の皆さんとの接点を設けることは難しい。逆に、三井不動産さまは生活者との接点構築はできますが、デジタル部分での実装や運用までを担うことが難しい。両者の共創は、受発注という関係ではなく、各々の強みを生かしてお互いを補い合う関係性であり、相互の尊重の下で成立しています」

共創のパートナーである三井不動産 常務執行役員 山下和則氏は「従来の街づくりから脱却するためには、リアルとデジタルの2つの世界を組み合わせることが非常に大事になってきます。これからも専門的な技術をもってDX推進に取り組まれているBIPROGYさんと一緒に街から価値を創造するプロセスをつくり出していきたいです」と語る。

三井不動産とBIPROGYが取り組むのは、「街づくりOS」。三井不動産との共創で、柏の葉スマートシティの更なる拡充に加え、そこで培った知財やプロセスを他地域にも展開していく予定だ。

DXを成功に導く「3つのポイント」と「4つの鍵」

2つの事例を通して、DX推進における3つのポイントを佐々木はこう説明する。

「1つ目は、『お客さまを中心としたゴール指標を持つ』。KPIで示すIT化の指標ではなく、今後のあるべき社会や事業の姿を考え、お客さまの幸せや満足につながる指標を設定します。2つ目は、『DXは一過性ではない』ということ。DXはアジャイル的に変革を続けることで進化させ、理想とするゴールを現実に近づけていきます。3つ目は、『コミュニティーも1つの選択肢』。コミュニティーに参加したり、運営したりすることは、価値づくりや事業を持続させるための1つの方法になり得るでしょう。1社の中のデータはもちろん、コミュニティーに属する企業間のデータをつなげることで、DXによる社会価値やお客さま価値を拡大させられる可能性が高まるはずです」

デジタルの力で未来を創る「4つの鍵」

図:デジタルの力で未来を創る「4つの鍵」

BIPROGYではDX実現に必要なのは「社会課題・お客さま価値を追求する事業」「データAIを業務に徹底活用する仕組み」「価値を生み出す人財」「多様なリスクに打ち勝つ組織」の「4つの鍵」だと捉えている。そして、「企画構想」「サービス開発」「持続化」「成長」という各プロセスの循環を通じて変革を生み出そうとしている。お客さまがこの「4つの鍵」を獲得し、企画構想~成長のサイクルを回すことができれば、DXは成功と言える。さらにBIPROGYが持つ人・環境・テクノロジーを集結させ、お客さまとともに企業DX、その先にある社会DXへと変革の連鎖を起こす、といったプロセスだ。

永島は、「デジタルの力でできることに限界はない。お客さまとは、このプロセスの初めにある企画構想の段階から一緒に取り組ませていただき、お客さまにとって構想の具現化・仕組み化・持続化・成長のサイクルの実現に向け伴走するDXパートナーでありたいと思っています」と語る。

そして、佐々木は「単にITサービスを提供するのではなく、お客さまの課題や要望に共感し、解決や実現に向け最良の仕組みの構築やサービスを創出・提供する企業になる。それが私たちにとってのDX。お客さまとBIPROGYが互いの強みを持ち寄り、双方がメリットを享受し、より良い関係を築ける——そんな、好循環が続いていく未来を共創していきたいです」と続ける。

BIPROGYは、テクノロジーを軸に社会課題の解決を通じて、持続的な社会の実現を目指すことを「Vision2030」として掲げている。システム開発を請け負う会社から、社会課題解決につながる仕組みやサービスを創出・構築・運営する企業となるべく変革に挑む真っ只中だ。これからも「共創」を軸に、さまざまな企業とDXの歩みを進めていく。

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