初心者必読の本から上級者向けの本、「座右の書」などを推薦者のコメントとともにご紹介するコーナー。第10回のテーマは、「データサイエンス」です。価値ある一冊に巡り合う一助となれば幸いです。
- 今回の推薦者
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プラットフォームサービス本部
データ&アナリティクス部Rinzaサービス室
室長
横田賀恵
推薦者コメント
「データ戦略が競争力に直結する時代」とも言われ、データサイエンスにより注目が集まっています。私自身データサイエンティストとして、分析スキル強化のための技術本をよく読みますが、今回はデータを価値につなげるためのデータサイエンスという観点で選びました。データサイエンスの本質や面白さを知るきっかけになれば幸いです。
会社を変える分析の力
「データ分析」とは、「データ」で「問題」を解決することだ。問題を解決してビジネス上の価値につながらなければ、いくら高度な計算をしてもそれはただの「数字遊び」、と著者は指摘する。確かに、分析はあくまでも手段であって目的ではない。しかし、実際のビジネスにおいて、分析そのものが目的になってしまい「分析のための分析」に陥ることがよくある。大切なのは、分析結果をどのように意思決定に使い、それがどれくらいビジネスに貢献するのかを考えること、というシンプルかつ重要なメッセージが本書にはちりばめられている。これは分析者にとって非常に重要な心得だろう。著者の河本薫氏は、データサイエンスの第一人者。河本氏の経験した失敗談や成功に導くコツから、ビジネスに役立つ「データの使いどころ」のヒントを得られるだろう。「データサイエンス」の基本としてもぜひお勧めしたい一冊。
[著]河本薫
[出版社]講談社現代新書
[発行年月]2013年7月
マネー・ボール
メジャーリーグに所属する資金力のない球団が、統計学や確率論を駆使して好成績を残し、コストパフォーマンスの良い球団へと躍進を遂げる実話を描いたのが本書。この話のポイントは、「限られた資金で、選手を買うのではなく勝利を買う」との考えから、最大の目標である勝利に必要な要素を分解し、「最も勝利につながる指標は何か?」という問いを立て、「出塁率」に着目する部分にある。具体的な問いを立てることで、勝利への道筋が「出塁率の最大化」という明確な課題に置き換えられ、統計や確率で解くことができるものへと変化する。勝利するための指標をデータから導き出すアプローチは、経験や直感を重視する旧来の考え方と対立するように思えるが、徹底的にデータを活用し、この戦略を浸透させたことにデータサイエンスの新たな価値を感じる一冊。描かれた実話のように勝利の方程式を組み立てることは、確かに難しいだろう。しかし、本書からは「データを武器に成果を出すコツ」を学べるはずだ。野球に興味がなくても、ノンフィクションとして楽しめる良書。
[著]マイケル・ルイス
[出版社]早川書房
[発行年月]2013年4月
データサイエンスの無駄遣い
日常の些細な出来事を真面目に分析する
広告会社でデータ分析を担当する著者が、自身の日常生活におけるゆるい問題をデータで検証するもの。タイトルの通り、テクノロジーと才能の無駄遣いとしか思えない内容は、くだらなさにツッコミを入れながらも、思わず「くすっ」と笑ってしまう部分もある。「データサイエンティストとは何者なのか、概念は何となく分かったけれど、具体的にどうやって分析をするんだろう?」と思っている方は、本書を通じてデータサイエンスを身近に感じられるのではないだろうか。読み物として、さらっと読んでいくのがお勧めだが、技術解説パートもあり、テクニカルな要素にも触れられる。採用している技術のバリエーションも広く、エンジニアにとっては実装面でも参考になる。著者の発想力と実践力に影響されて、自分もデータで何かを解いてみようという気持ちにさせられる。
[著]篠田裕之
[出版社]翔泳社
[発行年月]2021年10月
プロフィール
- 横田 賀恵(よこた かえ)
- SEとしてシステム開発を経験した後、データで問題を解決することに興味を持ち、データサイエンティストとしてデータ分析業務やデータ利活用サービス開発を担当。元々データを眺めることが好きで、日々データから気づきを得るための頭の体操をしている。現在、AIやIoT領域の専門知識と経験を活かし、顧客のDX推進支援に従事。