「個人のスポーツ」だからこそデータでリアリティーが実感できる

独自のソリューションでゴルフ試合の“見える化”を支援――「ウィンドスティックシステム」事例

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女子プロゴルフのテレビ中継の画面に、風の強さや方向などが表示されていることにお気づきだろうか。その仕組みを裏側から支えているのが、日本ユニシスが提供する「ユニシス・ウィンドスティックシステム」だ。プレーヤーが実際に感じる風向・風速をリアルタイムに計測し、画像に変換した数値データをテレビ視聴者に伝えるこのシステムが、日本の女子ゴルフの盛り上げに一役買っているのである。

テレビ観戦を楽しくする
リアルタイムなデータ提供

2018年5月3~6日の4日間にわたり、日本女子プロゴルフ協会(LPGA)の今季最初のメジャータイトル戦である「ワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップ」が茨城ゴルフ倶楽部(茨城県つくばみらい市)で開催された。

毎年この試合には海外のトップ選手が招待され、迎え撃つ日本勢との熾烈な戦いが繰り広げられる。今年の大会では、元世界ランク1位の申ジエ選手と、昨年の日本の賞金女王の鈴木愛選手などが最後まで首位を争い、申ジエ選手の鮮やかな逆転勝ちで幕を閉じた。

日本ユニシスは、この盛り上がりを見せるLPGAのオフィシャルシステムパートナーとして“データから楽しむことができるトーナメント”をテーマに、スコアリングシステムの開発運用などIT面からサポートしている。

ユニシス・ウィンドスティックシステム

なかでもユニークなのが、コースでの風向や風速をリアルタイムに計測する「ユニシス・ウィンドスティックシステム」である。米ユニシスと海外のテレビ番組制作者との会話から生まれ、米・英・豪のトーナメントでも使用されてきた。テレビ中継の際に画面に情報が表示されているのをご覧になったことがある方も多いはずだ。

このシステムは、可変長のポールの上に風速計と風向計を取り付けたポータブルな遠隔計測システムで、コース内を移動して選手の近くの地上と空中の風速と風向きを計測することが可能だ。計測したデータは基地局のPCにリアルタイムに送信され、テレビ局に提供される。

ゴルフと風は切っても切れない関係にある。テレビ中継の視聴者はコースでどんな風が吹いているのかを実感することは難しいが、画面に風速や風向きが表示されれば、選手が置かれている状況をより理解しながら、テレビ観戦できる。

LPGA会長の小林浩美氏は「風はボールの飛距離や曲がり方など、プレーの全てに影響します。画面に表示される風のデータから、選手が何を狙ってショットしているのかが分かると、プレーを見る楽しみも膨らむはずです」と語る。

一般社団法人 日本女子プロゴルフ協会(LPGA) 会長 小林浩美氏

世界で勝つために必要な
データによる見える化

実は、LPGAは小林氏が会長に就任した2011年以来、データ活用に積極的に取り組んできた。日本ユニシスが提供する「Unisys Scoring System」を活用しながら、ドライビングディスタンスやパーオン率など、LPGAとして提供するデータのスタッツ(プレー内容に関する統計数値)を常に拡充している。今年も7つ増やして、公開しているスタッツは全部で35になった。

その背景にあるのは「世界で勝つ」を目標に掲げる小林氏の強い思いだ。「強くなくては見てもらえません。そのためには“さすがプロ”という力をさらに引き上げたい。世界で勝てる強い選手を輩出することが目標です」と力説する。

1990年から米国女子ツアーに参戦し、樋口久子氏、岡本綾子氏に次いで日本人3人目の米国女子ツアー優勝を果たした小林氏自身も、現役時代、常にデータを取りながら自身の強みや弱みなどを分析してきたという。

「私がいた頃から海外ではデータを活用するのが当たり前でした。ゴルフは個人のスポーツですが、環境が選手を強くします。協会として“やれることはやる”というスタンスで、データの整備も含めた環境づくりに取り組んでいます」(小林氏)

試合を観戦するファンもまた、データによって楽しみを広げることができる。LPGAの調査によると、実際にゴルフ場で試合を観戦したファンの満足度は、「とても満足」が42.7%、「やや満足」も含めると80.5%にも上るという。テレビ中継の視聴者に対し、データ提供を通じて、あたかも現場にいるかのようなリアリティーを感じてもらうことができれば、満足度の向上につながる可能性は高い。

「ファンの方々に楽しんでいただくことは、トータルに見て関係者全員の共通の課題です。日本ユニシスさんとは、そのためにデータをどう活用するかをもっと話し合っていきたい」と小林氏は今後の展開に意欲を見せた。

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