現状を可視化しDX成功へと導く「ITインフラ成熟度診断」

豊富な実績と顧客への伴走支援から誕生した新サービスにかけた思い

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ユニアデックスはマルチベンダーとしてITインフラの構築や運用などを長年手掛けてきた。ITインフラの課題解決にあたり「どこから取り組むか」と悩む企業は多い。そこで、同社は2021年10月、ITインフラの現状把握や目標設定をサポートする「ITインフラ成熟度診断」の無償提供を開始。現状と目標差分を明らかにし、そのギャップを埋めることにより、企業は目指すべきITインフラに近づくことができる。成熟度診断を1つのきっかけに顧客のDX成功はもちろん、さらに深く良き伴走者としての役割を担いたいと考えている。サービス誕生の舞台裏をユニアデックス担当者にインタビューした。

ヘッドライン

4つの診断メニューでITインフラの成熟度を診断

企業のIT部門における課題はさまざまだ。特に近年は経営層から「DX推進」への貢献が求められる一方で、既存のITインフラ拡充や運用管理の効率化といった課題もある。セキュリティー対策の強化も大きなテーマだろう。とりわけITインフラは直接売り上げに貢献しにくい存在だけに、投資判断が難しい側面もある。そこには、新サービス創出などの目に見える成果につながりやすいDXとは別種の苦労がある。

今、ITインフラの課題解決に向けて、「何を優先すべきか」「どこから手をつけようか」と悩むIT部門も多いのではないだろうか。しかも、2020年春頃からのコロナ禍において情報収集や課題検討が滞るというケースも少なくないように見える。

安原浩司

ユニアデックス株式会社
技術戦略統括部
ITコンサルティングサービス
部長
安原浩司

ユニアデックス技術戦略統括部 ITコンサルティングサービス部長の安原浩司はこう話す。

「ITインフラの課題をいかに解決するか――。今弱いところを補強する、あるいは費用対効果の高い分野を優先して投資するなどさまざまな考え方があるでしょう。そのためには、まず現状を把握した上で、目指すゴールを設定する必要があります。現状と目標が明らかになれば、そのギャップを埋める具体策を検討することができます。こうした企業の取り組みを、ユニアデックスとしては強くサポートしたいと考えています」

そこで、ユニアデックスは2021年10月に「ITインフラ成熟度診断」という新サービスを開始。「ネットワークインフラ成熟度診断」「ネットワーク運用成熟度診断」「PC運用成熟度診断」というメニューを用意し、無償の診断サービスを提供するものだ。2022年4月からは「セキュリティー成熟度診断」を提供することで、4つのメニューで企業のITインフラ成熟度に関する診断を開始。規模や業種を問わず、企業全般を対象としたという。同社サービス戦略統括部 ITOサービス戦略部 部長の古舘陽はこう説明する。

古舘陽

ユニアデックス株式会社
サービス戦略統括部
ITOサービス戦略部 部長
古舘陽

「テレワークが長く続く中で、ITインフラを担う方々が外部ベンダーなどと対話する機会が少なくなったのではないかと思います。当社のお客さまからも、『もっと新鮮な情報を吸収したい』『相談相手が欲しい』との声をよく聞きます。そこで、Web会議などのツールを用いて、気軽にITインフラの課題や解決策などを検討するためのサービスが求められているのではないかと考えました。こうして生まれたのが、ITインフラ成熟度診断です」

IT部門にとっての課題の1つは、社内での投資案件の説明だ。ITインフラ投資の中には、費用対効果を数値化しにくいものも少なくない。それでもビジネスにとって必須な投資があり、将来を見据えて先行的に実行すべき投資もある。ユニアデックスによる第三者視点での診断結果は、社内での説明プロセスを円滑化する一助にもなるはずだ。

「ITインフラ成熟度診断」のサービスイメージ

「ITインフラ成熟度診断」のサービスイメージ
ITインフラの現状の成熟度と目指すべき目標レベルについて、簡単な30問程度の質問に回答することで診断結果を報告。目指すべき目標レベルとその差異が可視化され、DX推進などに向けて改善すべき点が具体的に見えてくる

マルチベンダーとしての実績を生かしサービスを構築

ITインフラ成熟度診断は前述した4つのメニューについて、レベル1~5の5段階で成熟度を評価する。ユニアデックス技術戦略統括部ITコンサルティングサービス ITコンサルタントの岩崎世行は次のように説明する。

岩崎世行

ユニアデックス株式会社
技術戦略統括部ITコンサルティングサービス
ITコンサルタント
岩崎世行

「どこまでできているのかという現状を示すとともに、当社が推奨する目標レベルを提示します。現状と目標のギャップも可視化されるので、どのように目標に近づくかを検討する材料にもなります。一般に、ITインフラの課題解決に取り組む場合、“モグラ叩き式”に目の前の課題に対処する場合も多く、それにより投資効率が低下する事例もあります。こうした事態を避ける上でも、現状と目標、その間のギャップを可視化するアプローチは有効です」

ITインフラ成熟度診断では、各メニューにおいて、30問程度の質問が用意されている。「私たちコンサルティングチームが中心となり、各分野のテクノロジー専門家の意見を聞きつつ、社内横断的に丁寧な議論を重ねて質問をデザインしていきました。これらに答えていただくと、診断結果が自動的かつ迅速に出力されます」と岩崎は続ける。

ITインフラの現状を診断するための手法は、「ITIL(Information Technology Infrastructure Library)」や「COBIT(Control Objectives for Information and related Technology)」などの国際標準をベースに、ユニアデックスの知見やノウハウを加味して新たに開発された。さらに、目標レベルはこうした国際標準に加えて企業規模や業種業態などを踏まえて示されるという。

次の図は診断結果のサンプルである。レーダーチャートの青色が現状結果、黄色が目標、その差分であるギャップが赤色で提示される。ITインフラの課題解決に向けて何をすべきかを検討する上で、このようなビジュアルに訴える資料は有効だろう。

「ITインフラ成熟度診断」結果報告(サンプルイメージ)

「ITインフラ成熟度診断」結果報告(サンプルイメージ)
診断メニュー別の要素ごとに、診断結果が数値とコンサルタントによる考察を踏まえて報告される

ユニアデックス独自のノウハウの蓄積について、古舘はこう説明する。

「当社は1997年の設立から25年にわたって、さまざまなお客さまのITインフラの構築や運用管理などを担ってきました。ミッションクリティカルな分野、複雑なマルチベンダー環境での経験も豊富です。難易度の高いシステム復旧などを手掛けた実績も多く、いつのころからか、お客さまからは、当社への信頼も込めて『ITインフラの駆け込み寺』と呼ばれるようになりました。例えば、『2時間以内にシステムを復旧しなければ大変なことになる……』といった緊急事態対応経験も少なくありません。こうした各技術分野での知見が今回のサービスにも生かされています」

ユニアデックスは経営戦略として、クラウドサービスなどストック事業の強化も打ち出している。既存のシステム開発事業やシステム運用事業のうち、特に後者は時間軸の長いビジネスだが、さらに長期目線で顧客とのパートナーシップを大事にしていきたいと考えているためだ。この思いを基礎に昨年度、新たに「カスタマーサクセス推進部」も発足させた。

「お客さまの成功に伴走する、最前線に立つのがカスタマーサクセス推進部です。営業やカスタマーエンジニアなど各部門のメンバーが横串で集まり、多様な角度からカスタマーサクセスについて議論を交わした上で、新しい組織を立ち上げました」と古舘。ITインフラ成熟度診断は、こうした取り組みの賜物でもある。

無償提供の背景にある社会課題解決に向けた眼差し

DXの実現は多くの企業にとって、今後のビジネスの成否を左右する。今回のサービス提供は、こうしたカスタマーサクセスに近づくための1つのステップにもなる。冒頭で触れたように、ITインフラ成熟度診断は基本的に無償の取り組みだ。開始から半年程度になるが、すでに数十件の実績がある。「ITインフラの現状を客観的に見ることができた」(製造業)、「改善に向けた具体策を検討していた折、成熟度診断を受けて自分たちの方向性に間違いがないと確認できた。安心して今後の施策を推進できる」(金融業)、「今後のIT投資を決める上で参考にしたい」(運輸業)といった反響があるという。

しかし、開始当初、無償にすべきかどうかについては、社内では慎重な声もあったようだ。

「『価値あるサービスなので有償に』との意見もありました。しかし、企業にとって進むべき方向を明らかにしないまま行動に移してしまうとムダなIT投資になりかねません。複数の企業で同様のケースが生じれば、社会全体にとってもマイナスです。こうした課題を解決したいとの強い思いがあり、同時に、『診断を機にお客さまとの関係を再構築・強化し、先読みの難しいVUCA時代に対応するパートナーでありたい』との気持ちもありました」(安原)

同社はこれまでも無償サービスを提供してきた。例えば、多くの企業がテレワークへの移行に苦労していた2020年の春先、「Wrap(ラップ)」というクラウド型ネットワークサービスの無償提供を開始している(参考「クラウド型ネットワークサービス『Wrap』無償提供の舞台裏」)。また、「テレワーク診断」というテレワーク環境の成熟度を分析・診断するサービスもある。こちらは組織や風土・意識、制度、労働環境、クライアント端末、セキュリティーなどの観点からテレワークの現状と課題を抽出するサービス。こうした各種の経験と思いが、今回の取り組みにも息づいている。

ITインフラ成熟度診断を活用した企業の声に接し、岩崎は手応えを感じているという。思いをこう語る。

「ITインフラ成熟度診断の価値を改めて実感できました。ITインフラの現状の可視化、目標とギャップの提示をきっかけにお客さまに深く寄り添い、目指すべき姿とのギャップを埋めるための最適かつ具体的な解決策を今後も提案していきたいと考えています」

さらに、安原と古舘も言葉を続ける。

「テクノロジーの世界は日進月歩です。次々に新しいソリューションが登場します。お客さまがゴールを目指す際の最適なソリューションの組み合わせも変化します。当社としてもソリューションメニューを拡充するとともに、提案力をさらに高めていきたいと考えています」(安原)

「例えば、ITインフラ成熟度診断のメニューの1つに、PC運用があります。Windows 10のサポートは2025年に終了する予定なので、今後1~2年間は対策や準備に取り掛かる企業も多いはずです。同年は、『DXレポート』でも企業変革の必要性が説かれている時期でもあります。当社は『マルチデバイス運用サービス』を提供し、各種クライアント端末のライフサイクル管理でも豊富な実績があり、ネットワークやセキュリティーなど他のメニューも幅広いソリューションを有します。DX推進はもちろん、さらなるお客さまの変革の実現に向けてBIPROGYグループ全体のソリューションを含めて多様な選択肢の中から最適なものを提案していきます」(古舘)

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