リアルデータの活用が拓く超スマート社会「Society5.0」

新たなエコシステムへの挑戦

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10年先を見た超スマート社会への取り組みが始まっている。内閣府が提唱する「Society5.0」である。これまで独立した関係にあったものが融合して、新たなビジネスモデルが生まれるという。そこでは具体的にどんな社会が実現されるのか。目指すべき社会像と必要とされる社会基盤、今進められている取り組みを解説する。

Society5.0の前提となる7つの社会像の実現

Society5.0がターゲットとしている領域は大きく7つある。サスティナブルなエネルギーシステム、健康で活き活きとした暮らし、人が主役となる革新的なものづくり、国際競争力のある食の第6次産業化、地域における新たな暮らしの基盤、ストレスフリーなモビリティ、そしてインフラの生産性向上とレジリエンス強化だ。

これら7つの社会像を実現するためには、データクリエーションの基盤、データ・システム連携の基盤、制度とシステム技術の基盤の3層の基盤の整備が必要になる。この基盤にリアルなデータが収集され、活用されることで、超スマート社会は実現する。

これらの領域で、実際に今何が起きているのだろうか。エネルギー、健康、地域といった領域で、課題とその解決に向けた取り組みを紹介していく。

図1 Society5.0の姿"目指すべき7つの社会像と3層の基盤"
出典:一般社団法人産業競争力懇談会
「Society5.0とCOCNの推進テーマ~国と産業界の投資を集中すべき分野と政策~」(2017年2月23日)

各領域で進められるリアルデータの活用

日本ユニシス
公共第一事業部
エネルギー統括部 統括部長
金井 智

エネルギーの領域で重要なのは、持続可能なエネルギーシステムをどう作り上げるのかということだ。エネルギー資源に乏しい日本にとっては重要なテーマである。再生可能エネルギーの利用拡大、飛躍的な省エネ対策など、クリアすべき課題は多い。

一般社団法人産業競争力懇談会(COCN)の資料によると、それらの課題を解決のためには4つの軸から考えていく必要があるという。再生可能エネルギーを統合して制御する「リソースアグリゲータ」、エネルギーの地産地消を可能にする「エネルギーネットワーク」、センサーやプロセッサなど「革新的省エネデバイス」、カーボンファイバーや電池など「革新的エネルギー素材」である。

そうしたなか、日本ユニシスは点在する電力需要家の機器をIoT(モノのインターネット)で一括して制御する仮想発電所を通して、全体の需給を調整する「バーチャルパワープライント構築実証事業」に参加している。日本ユニシス 公共第一事業部 エネルギー統括部 統括部長の金井智は「ここでは多くの事業者とのエコシステムへの取り組みが進められています」と説明する。

日本ユニシスは、電力需要平準化に向け、エコキュートの最適制御を実現する役割を担っている。これは、刻々と変化する負荷を考慮し、ICTを活用したアルゴリズムに則った制御実施する。これらをすでにエネルギー管理クラウドサービスとして提供している「Enability/EMS」への取り込みももくろむ。また、エネルギーの地産地消を推進する地域新電力(小売事業者)の基幹業務の1つである"顧客管理システム"を「Enabilityシリーズ」としてクラウドサービスで提供している。

健康な暮らしを守る領域で必要となるのが、健康データの適切な管理と利活用を可能にするサービスの構築だ。個人のデータを蓄積するマイデータによる健康管理、センシングや空間制御、ICTを活用した快適な空間ソリューション、健康の見える化を実現する客観的な価値指標を整備することによって実現される。

日本ユニシスでは、社会医療法人 愛仁会の「患者向けポータル」の構築を支援し、患者自身のデータのよる健康管理の実現に向けた取り組みを進めており、スマートフォンで検査結果の閲覧や診療予約などができる仕組みを提供している。今後は健康コンテンツの提供など健康増進につながるサービスへの展開も図っていく計画だ。

地域における新たな暮らしの基盤という面では、オープンデータなど社会基盤の整備、農業や保育、防災など地域の課題解決と産業創出、そしてAI(人工知能)やロボットを駆使したおもてなしによる観光面の充実などが必要になる。金井は「こうした取り組みが都市部偏重で疲弊する地域を活性化させます」と語る。

そのモデルとして同社が参画しているのが、倉敷市が進める「高梁川流域インテリジェントICT実装事業」である。ICTによってビジネスの創造と雇用の創出を目指す取り組みだ。同社はここでIoT・ビッグデータ基盤の構築と知識ベース連携機能、自然言語処理、レコメンドモデルなどの知的エージェントサービスのところを担当している。

「AIの音声応答機能を使って、観光客の会話内容を分析して、適切な観光スポットや観光コースを推奨するなど、地域のリアルのデータを吸い上げて、革新的なおもてなしを実現するプラットフォームを構築しています」(金井)

実社会とテクノロジーの相互作用に向けた取り組み

サイバー空間とリアル空間が融合するSociety5.0に向けては、実社会制度とテクノロジーの相互作用がますます必要になる。COCNによると、そこではデータの信頼性を担保するトラスト基盤、データの流通を支えるパーソナルデータ流通、画像を利用するカメラ画像の高度利用、新たな社会的な価値を創出するAIの連携などの制度とシステム技術基盤の整備が求められるという。

金井は「超スマート化社会においてはパーソナルデータを活用した新事業・新サービスの創出が期待されます」と語り、その好例の1つとして、日本ユニシスのFinTech分野での取り組みを挙げた。2017年秋にリリース予定の個人資産管理「Fortune Pocket」である。

同サービスは、資産形成から資産運用、資産継承まで個人資産のライフサイクル全般を一元的にカバーする。そこでは金融、住宅、教育、医療・介護などの幅広い分野で、様々な企業とのエコシステムが形成される。

出典:日本ユニシス

「Society5.0では様々な領域でリアルデータが活用されます。あらゆる業種業態のお客様と一緒に社会課題の解決と新たな価値の創出に取り組んでいきたい」と金井は話す。あらゆる業種業態の企業との付き合いがあり、ICTに精通した同社ならではのスマート社会に向けたエコシステムに期待したい。