人に寄り添うAIをビジネス現場で育てていく「Rinza」とは

国内外のAI関連技術をユニシスの目利き力で柔軟に統合・体系化

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AIに関しては「人間の仕事を奪う」といった脅威論も叫ばれているが、この見方は正しくない。AIは新サービスの創出、コアビジネスの高度化、オフィスワークの改革、安心・安全な社会づくりといったイノベーションを促進し、ビジネスや生活に貢献していくのである。これこそ日本ユニシスがRinzaを通じて追求する「人に寄り添うAI」のあり方だ。

「学習」「認識・判断」「行動」に関する技術を体系化

日本ユニシス 新技術サービス本部 サービス販売企画部 AI企画室長 森 隆大朗

日本ユニシス 新技術サービス本部
サービス販売企画部 AI企画室長
森 隆大朗

ビジネスや生活にイノベーションを起こす"新しい波"として注目されるAI(人工知能)だが、実のところ誤解がないわけではない。

例えば「シンギュラリティ(技術的特異点)」といったキーワードが掲げられ、30年以内に全人類の叡智を超えるAIが実現するとまことしやかに語られているが、あくまでもそれは将来に対する展望にすぎない。現在のAIは、シンギュラリティの前段階である汎用人工知能(AGI:Artificial General Intelligence)にも到達していないのが実情だ。

また、AIという独立した技術が存在するわけではない。AIは様々な技術の組み合わせによって実現される応用領域なのである。

こうしたAIの"現実"と"本質"をとらえ、日本ユニシスが整備を進めているのが、「Rinza」と呼ばれるAI関連技術体系である。データを学習・知識化し、予測・判断のためのモデルを生成する「学習」、音声認識や画像認識技術などを活用して状況を認識し、学習フェーズで生成された予測・判断モデルに基づいた判断を人間に代わって行う「認識・判断」、さらにその判断を実行し、産業機器の制御や人とのコミュニケーションを行う「行動」に至るサイクルを支援する要素技術を包括したものだ。

図1 日本ユニシスの人工知能関連技術体系 Rinza®

具体的には現在、図1に示す多様な要素技術がRinzaの名のもとに体系化され、提供されている。特筆しておきたいのは、これらの要素技術のすべてが、必ずしも日本ユニシスによって開発されたものではないことだ。

日本ユニシス 新技術サービス本部 サービス販売企画部 AI企画室長の森隆大朗は、「私たちは自前の技術でポートフォリオを固めることにこだわらず、役立ちそうな技術がすでに世の中にあれば他ベンダーのものも柔軟に取り入れ、組み合わせていくことを基本方針としています」と語る。そして「AIに関しては新たな要素技術が次々に登場しており、進化を素早くキャッチアップしていかなければなりません。そのためにも"オープン"であることが重要な鍵を握っているのです」と強調する。

一貫して"人に寄り添うAI"を追求

Rinzaを通じて日本ユニシスは、社会にどのような貢献を果たしていこうとしているのだろうか。AIに関しては「人間が行っている半分以上の仕事を奪っていく」という予測も示されているが、森はこうした漠然とした脅威論を受け流し、「私たちが一貫して追求しているのは、"人に寄り添うAI"です」と語る。

特に少子高齢化が進む日本では、大都市圏への人口集中による地方経済の衰退など社会問題が顕在化しており、求められる仕事と労働力の間にもミスマッチ/アンマッチが拡大している。こうしたギャップを埋めるべく、人間をサポートするためにAI関連技術を生かしていくのである。「そもそもAIと人間では、それぞれ得意とする分野が異なります。ならば双方の強みを上手く融合し、そのシナジーを高めていくことが、実利の点からも理にかなっているのです」と森は説く。

知的エージェントサービスRinzaTalk™も、そうした人に寄り添うAIのコンセプトから生み出されたソリューションの1つだ。多様なチャネルにおいてシステムと人間(顧客)を仲介し、高度なコミュニケーションを可能とするサービスである。音声認識、人物認識、自然言語処理、機械学習、音声合成といったAI関連技術を融合し、自然な会話で人間と応答しながら問題解決に導いていく。

「多様なデータソース/サービスソースと接続し、商品レコメンドや各種予約サービス、オーダーサービス、保守・点検支援サービスなど目的に合った業務支援を実現するフレームワークを提供します」と森は語る(図2)。

図2 多様なサービスソースに接続可能

外部データを仲介する"ハブ"となる

知的エージェントサービスRinzaTalk™は、すでに多くのユーザーやパートナーと連携した実証実験が始まっている。

日本ユニシス 新技術サービス本部 サービス販売企画部 AI企画室長 森 隆大朗

例えば家電量販大手のヤマダ電機とは、店頭で顧客案内を行うサービスロボットの実証実験を実施。自然言語解析や機械学習を中心としたRinzaのAI関連技術を活用し、実際の店舗でデータの蓄積と学習、検証を重ねることで、円滑なコミュニケーションの精度を向上。今後の本格導入を目指している。

さらにある地方圏域のデータ利活用型まちづくり実証事業では、AIを活用した観光アプリやロボット、IoTによる人流解析、それを支えるビッグデータ基盤構築などで、地元の推進組織や他のIT企業と連携。これをプラットフォームとして、様々な観光施設や交通機関、物産店、飲食店などを巻き込みながら、地域全体の活性化につなげていくという構想を打ち出している。

これらの実証実験の背景にあるのは、「AIにとって最も重要なのはデータ」という基本思想だ。高度なアルゴリズムや先端技術の導入もさることながら、AIの価値の大半は「どう育てるか」によって決まる。そのベースとなるデータは、ビジネスの現場にしかない。

「お客様自身で必要なデータを収集し、試行錯誤しながら育てていくための環境をRinzaから提供するとともに、そこで足りないデータを獲得するためのサポートも行います」と森は語る。オープンデータやソーシャルデータは言うまでもなく、多様な企業が保有する外部データを業界の垣根を越えて仲介し、新たなサービスの創出を支える"ハブ"の役割を日本ユニシスとして担っていくのである。「自社のデータも何かに役立つならマネタイズしたいとお考えのお客様も、ぜひ私たちに気軽にご相談ください」と森は裾野の広い企業や団体に呼びかけ、このビジネスエコシステムの拡大を図っていく考えだ。

■オープンな人工知能(AI)関連技術体系 Rinza®