未来を見据えた日本ユニシスの先進研究活動が一堂に集結!

「R&D Meetup Days 2019」が開催

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2019年12月13日、17日、24日の3日にわたって、日本ユニシス本社の29階の会議室で、日本ユニシス総合技術研究所(以下、総研)が主催する「R&D Meetup Days 2019」が開催された。総研が取り組んでいる基礎的、あるいは先進的な研究が一堂に会し、グループ内の社員たちとの意見交換が行われた。そこで交わされた議論が今後どんな形で成果につながっていくのかが期待される。本稿では「R&D Meetup Days」の意義や狙い、イベント当日の様子、注目を集めた発表テーマなどについてお伝えしていく。

  深い意見交換を促すために
カテゴリーごとに日程を設定

今回の「R&D Meetup Days 2019」では、日にちごとに13前後のテーマのブースが出展され、トータルでは40の最新研究が発表された。3日に分かれて開催したのは、カテゴリーごとに日を分けて発表することで、関係する対象者を明確にして、より深い意見交換が行われると期待してのことだ。

日本ユニシス株式会社
総合技術研究所 上席研究員
森 隆大朗

イベントを企画した総合技術研究所上席研究員の森 隆大朗は「総研ではあえて現場が追っているものとは異なる領域の研究に取り組んでいます。それらは今要求されている技術ではなく、長い目で見て価値をもたらす技術です。だからこそ来場者の対象を明確にして、時間をとり、じっくり話し合うことが必要だと考えました」とカテゴリー分けをした狙いを語る。

DAY1では「基礎・高度技術」についての研究を集め、総研内外の研究者や高度技術者を主な参加対象に想定した。ゲノム解析や量子アルゴリズム、確率的探索など基礎研究領域での研究テーマが並ぶ。総研研究者による論文や文献の解説を通して、グループ内の技術者との深い対話を促し、人材発掘、チャネル作り、グループの技術力の引き上げを狙う。一方、DAY2とDAY3の狙いは、ビジネスリーダーとの対話を主眼とした。事業部、戦略本部、イノベーション部門などのビジネスリーダーに総研の研究活動内容を理解してもらい、グループの技術戦略策定に向けた対話を行うとともに、ビジネス貢献の機会を発掘することを期待する。

DAY2とDAY3には、カテゴリーの違いが設定されている。DAY2の対象領域は「人を知る」「人を動かす」「人を助ける」であり、医療画像診断支援技術や交通信号制御などの研究テーマが並ぶ。DAY3の対象領域は「未来へのイノベーション」であり、研究テーマとしては、未来洞察、人間中心デザイン、地域データ活用、安全分析手法などだ。

研究テーマタイトル一覧
Day1研究テーマタイトル一覧 ゲノム解析による悪玉腸内細菌の増加原因の解明
一人で一か月でAndroid Appを作ったり、実働2日でルービック・キューブを解いたりする方法
量子アルゴリズムに関する研究 ~量子計算機の実適用を目指して~
昆虫を利用した腸内環境評価の補完・代替・簡易化
空間を認識・表現するインタラクションの実現
確率的探索 (強化学習、実験計画)
匠の技を計算機で再現し,潜在的アイデアを具現化
矛盾を認識する知識管理データベース
量子ソフトウェア工学 ~高品質な量子プログラム開発に向けて~
CPS (Cyber-Physical System) のモデリング・検証手法
衛星画像分析に基づく経済活動モニタリング
「自由意志」を持ち人と協調して行動するキカイ
感情コンピューティング ~感情認識の個人化~
Day2研究テーマタイトル一覧 一人ひとりの生き方が広がる社会
医用画像診断支援技術
一人ひとりの個性に寄り添った動機付けの探索 
個人データを用いた感情の可視化
アイデア創出の促進と阻害要因の解消を目的とした創造活動支援システム
視線情報から人の読解力を紐解く ~レビュー品質と視線情報の関係~
意図を推察する質問応答システム
テニスにおけるスポーツデータを活用した選手のパフォーマンス向上のための指導者へのコーチング支援
森林の現在・未来を可視化する ~森林資源の有効活用へ向けて~
木材産地証明のためのトレーサビリティシステム検討
センサーモニタリングを活用した林業作業者の安全
KCG未来環境ラボにおける ものづくりと教育と地域連携
ヒトとキカイとのスキマを考える
複数交差点における協調的な交通信号制御
Day3研究テーマタイトル一覧 人間中心デザインの発展 ~実施方法の改良・適用範囲の拡大~
スポーツ×IoT ~実験環境をもっと身近に~
日本庭園のデジタル化・5G実験
Technology Foresight 2030~40年の未来
鑑賞体験の知識化 ~来館者の鑑賞体験を知識として活用する~
地域データ活用で目指すSociety5.0時代の施策立案支援
AI for Good ! ~ AzureのAI技術を使って簡単にAIを実装してみませんか ~
「未来洞察」 ~手法の習熟と実践~
CPS (Cyber-Physical System)のレジリエンス向上の取り組み
つながるシステムの安全性を高める ~安全分析手法STAMP/STPAの適用~
人間の認識・判断を再現する空間認識プラットフォーム
天空光源シミュレーション
生命科学研究倫理審査に関する取り組み

イベントをきっかけに共創が起きることを期待

日本ユニシス株式会社
総合技術研究所
長井稔

実は「R&D Meetup Days」という名称でのイベント開催は今回が初めてとなる。R&D成果報告会「見本市」という名称で2010年度から2018年度まで開催されていたイベントをリニューアルしたものだ。今回のネーミングには、単に総研の研究活動の内容を報告するものではなく、研究活動自体を企業価値向上に繋げたいという主催者側の想いが込められている。「今回は、各開催日に50名程度の方に来場していただきました。過去の見本市よりも明らかにじっくり意見交換している場面が多かったのは成果です」と森は話す。量子アルゴリズムの研究を報告した長井稔は、「お互いの理解が深まり、自分の研究にも役立った」と手応えを語った。

総研では現在、研究テーマについてより理解してもらうために手法の見直しなどを進めている。「これまで研究テーマは研究者個人の興味関心に基づいた創発系が多かったのですが、最近では未来を予想する未来洞察の方法を取り込んで、少し先の未来への準備という側面も強化しています」と森は変化を強調する。

実際に今回用意した研究活動を紹介するリーフレットも、未来に向けて社会を豊かにし、社会課題解決につながることへの理解を促すことを意識して作成した。また、中長期的に市場化できる可能性について「機会領域」の表を用意し、想定されるビジネスモデル例をビジネスリーダーと議論できるようにした。次のステップとして期待されるのが、来場した総研外の技術者やビジネスリーダーと総研研究者の共創である。森は「今回は来場者と発表者の双方に気になった相手や研究活動についてのアンケートをとっています。相互に連携できる人を発掘して、継続的に連絡を取り合って刺激し合いたいと考えています」と期待を語る。それでは以下、今回発表されたテーマをピックアップして紹介していきたい。

●ピックアップ1 「未来洞察」

日本ユニシス株式会社
総合技術研究所
佐藤一広

変化の読めない時代にあって、中長期の未来を予測する技術である未来洞察が注目されている。総合技術研究所の未来洞察は、スタンフォード研究所のホライゾン・スキャニング手法を源流としており、企業の将来戦略を考えるためのビジョン作成や、手法の体得を通じた人材育成を狙いとしている。

イベントでは、どのように未来を描いていくかを実際のワークショップ形式で解説し、来場者が即興で参加でき、特別な知識がなくとも誰でも未来洞察できることを実演していた。「今判明している事実や確実性の高い予測からなる『未来シナリオ』と、社会の変化やその兆しを基にした『兆しシナリオ』を掛け合わせ、単なる妄想ではない未来像=ビジョンを描いていきます」と発表者の佐藤一広は説明する。このビジョンからバックキャストすることで今何をするべきかを見出し、技術的な解決策や新規ビジネスを考えていく。新たな市場と未来のライフスタイルの創造のために、潜在的な問い・ニーズを浮かび上がらせることが目的であり、「ビジョンには正解も不正解もない」。また、ワークショップを通じて、論理的思考と創造的発想から得られたシナリオをビジョンに組み立てる力、そして共創するマインドが培われることも、この取り組みの価値と捉えている。

●ピックアップ2 「地域データ活用で目指すSociety5.0時代の施策立案支援」

日本ユニシス株式会社
総合技術研究所
松本太郎

地域が抱えるさまざまな課題を掘り下げていくと、地域の特性に起因していることが分かる。だからこそ課題解決には地域から得られたデータを基にした施策の立案が不可欠になる。政府が唱えるSociety5.0では、地域データをAIで解析して解決策を導き出すシナリオが示されているが、その実現には課題もある。

「地域には解析するためのデータも、データを溜めておくサイバー空間もありません。データを解析するAIのスキルもデータサイエンティストも不足しています」と発表者の松本太郎は語る。具体的な取り組みとしては、まず人の流れを把握する人流解析サービス「JINRYU」や観光客向けアプリ等を使ってデータを集める仕組みを構築する。そして、データの管理基盤を実装してデータを溜めて活用する仕組みを作り、収集したデータを地図上にマッピングしたり統計情報をダッシュボードに表示することで地域データを可視化する仕組みを作り、パートナーシップのある地方自治体に提供している。また、継続的なプロトタイピングと実証フィールドによる検証を通して定期的にブラッシュアップを重ねている。

ブースでは、アプリを使った松江市と山中温泉での観光客の行動や興味を分析する取り組みに加え、JINRYUによる松江市の日本庭園「由志園」での来園者の滞在時間を可視化する取り組みなどが紹介されていた。「今後はシミュレーションモデルと合わせ、地域の人が見たい形で見せることにより地域にメリットを提供していきたい」と松本は意気込みを語った。

●ピックアップ3 「人間中心デザインの発展〜実施方法の改良・適用範囲の拡大〜」

人の行動や価値観に基づいてアイデアを発想すれば、より使いやすい人工物やシステムなどを設計することができる。それが「人間中心デザイン」である。発表者の坂本優子は「使いやすいと感じるということは、使い手にとって本質的な課題に対応できているということです。ユーザーインターフェースの改善といった表層的なデザインだけでなく、本質的な課題を見つけたい場合にも、人間中心デザインの適用は有効です」と話す。

情報デザインを学んだことをきっかけにこの領域に取り組む坂本は、現在いくつかのフィールドで研究活動を進めている。主な目的は、人間中心デザインをより広い分野に適用できると示すことだ。フィールドの1つとして青山学院大学の授業の場を使い、学生の視点から授業の改善アイデアを検討するというアプローチを取っている。「観察者として授業の場に入り、場の自然な活動を壊さないように学生に溶け込みながら、教員からの働きかけや学生同士の会話を見聞きし、課題を発見します」と坂本は語る。また、他大学との共同研究として、研究者らがとあるコミュニティに介入する様子を観察し、人間中心デザインの視点からコミュニティ形成の過程を明らかにするといった活動も行っている。

●ピックアップ4 「つながるシステムの安全性を高める〜安全分析手法STAMP/STPA適用研究〜」

日本ユニシス株式会社
総合技術研究所
福島祐子

STAMP/STPAは10年ほど前にマサチューセッツ工科大学で考案された新しい安全分析の手法である。従来の手法が事故の原因を個別のコンポーネントの故障・不具合に限定しているのに対し、STPAではコンポーネント間の不適切な相互作用にも原因があるとしている。上流工程からシステム全体の相互作用を分析することで、事故につながり得る原因を特定する。「人、モノ、ソフトウェアが複雑につながる時代にマッチした手法で、開発の早期に安全対策の作りこみが可能になります。米国では、従来手法よりも多くの原因が見つかった、分析コストを2分の1から3分の1に削減できたとの報告もあります」と発表者の福島祐子はメリットを語る。すでにボーイングやGMなどで活用され、医療機器やドローン、AI、セキュリティへの適用も期待されている。

福島は4年前から研究活動を開始し、不適切な相互作用を明らかにするには、6W3Hの視点を利用してシステムの環境や状態を導き出すことが有効であることを見出し、2017年に発表。学会誌にも寄稿し、社外からの講演依頼も増えつつある。

「CPS(Cyber-Physical System)を実装するにはロボットなどのモノの安全性の考慮まで必要になります。日本ユニシスがCPSを手がける時の準備のつもりで研究に取り組んでいます。サイバーセキュリティにも有効な手法ですから今からでも社内に広げていきたい」と福島は啓発活動への意欲を語った。

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