SDGsの「その先」を見据えた未来社会の在り方

サイエンスとテクノロジーで持続可能な未来をつくる

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世界初のコンピュータとされる「ENIAC」。その発表が行われた1946年2月14日は、第1回となる国際連合(国連)総会が一段落し、世界が新たな未来に向けて動き出した日でもある。それから約70年後の2015年、国連は次世代の地球環境や社会実現に向けた「持続可能な開発のための2030アジェンダ」とその17の「持続可能な開発目標(SDGs)」を採択した。日本ユニシスは、ENIAC開発者と深い関わりがあり、同時に2030アジェンダに含まれた「持続可能な開発目標」に積極的に取り組んでいる。黎明期から「次世代に向け、よりよい未来をテクノロジーでつくる」使命を負った日本ユニシス株式会社のフェロー CTO 総合技術研究所長 羽田昭裕が、次世代高等教育の現場で直接、未来視点を持った社会課題解決の重要性を語った。

次世代の地球を考える「SDGs」

2019年11月18日、早稲田大学にて日本ユニシス株式会社 フェロー CTO 総合技術研究所長 羽田昭裕による講演「未来の持続的社会に向けた技術と経営戦略」が行われた。この講演は、一般財団法人経済広報センター提携講座「21世紀における科学技術と社会」の第6回目の講演となるもので、「持続可能な開発に向け、科学技術や企業がどのような役割を果たしていくことができるか」を考えるもの。聴講者は早稲田大学基幹理工学部・創造理工学部・先進理工学部の学生たちで、250人の教室は満席となった。冒頭、羽田は「SDGsという事例を通し、未来とどう向き合うべきか真摯に考えてほしい」と語りかけた。

世界初のコンピュータとされる「ENIAC」が世界に初めて披露されたのが1946年2月14日。実はこの日は、第1回となる国際連合(国連)総会が一段落し、世界が新たな未来に向けて動き出した日でもある。それから約70年後の2015年、国連は次世代の地球環境や社会実現に向けた「持続可能な開発のための2030アジェンダ」とその17の「持続可能な開発目標(SDGs)」を採択した。2030アジェンダには、すべての国連加盟国(193カ国)と23の国際機関が合意。このアジェンダには、未来に向けた具体的目標を定めた「17のゴール」と「169のターゲット」が含まれ、「持続可能な開発目標」(Sustainable Development Goals:SDGs)と呼ばれている。

このコンピュータの歴史と、国連の歴史のつながりは、偶然とはいえない。コンピュータに関連する技術が発展することによって、一人ひとりの人間が世界や社会に直接かかわれるようになり、国連も政府だけではなく、市民社会や企業を社会や世界の課題を解決する主体としてみるようになっている。コンピュータについて言えば、AIがいろんなデバイスに含まれるようになり、その存在が人間から見えなくなる一方、従来、工場等ではロボットと人間が接触しないように設計されていたが、今や人間のすぐそばにいて、人間を助けるようになってきている。このロボットは、AIの実装により、人間よりもずっと広い視野を持ち、人間の指示がなくとも自ら世界を知ろう、知りにいこうとする。言い換えると、このロボットやAIの存在により、人間の住む世界(3次元の空間)は、人間の見える範囲から、海の底から宇宙までボーダーレスに広がっていく。

そして、従来、国連の決議は、各国政府の目標として国家間が連携して取り組むフレームワークが一般的だった。しかしSDGsは、国という大きな単位だけでない。人間社会を構成する企業や団体、機関、そして一人ひとりの個人という単位で多様な視点で考え、自らがゴールを設定し、その達成を志すもの。こうした決議は国連がスタートしてから70年以上たって初めてのこと。このような決定に193カ国全部が合意したのも初めてのことだ。

SDGs実現に貢献するサイエンス・テクノロジー

SDGsというと、壮大なテーマと感じることもあるだろう。しかし、日常生活の中でも「このままだと、将来はどうなるのだろう」と感じる機会は増えている。例えば、昨今の異常気象や災害、より視野を広げれば世界の食糧事情、水源や森林を取り巻く環境変化がある。「暮らしの利便性が高まる代わりに、何かを犠牲にしている」。そんな漠然とした不安や焦燥感は、多くの人が持っているはずだ。

日本ユニシス株式会社
フェロー CTO 総合技術研究所長
羽田昭裕

「持続可能な開発」という理念は、経済発展や利便性だけを考えて闇雲に資源開発を進める姿勢に警鐘を鳴らすものとして1980年に登場した。その主眼は「将来の環境保全を考慮し、資源を守りながら開発を進めていこう」という点にある。国連が定義する「Sustainable Development」は、「将来の世代がそのニーズを満たせる能力を損なうことなく、現在のニーズを満たす開発」を実現する事に力点がある。羽田は、「開発や社会的なニーズを抑えず、生まれてくるニーズそのものも損なわない。これらを充足する力を、次の世代やその先まで持続させていく考え方」と説明する。

SDGsの17のゴールには「貧困をなくそう」「飢餓をゼロに」などの貧困問題から、「安全な水とトイレを世界中に」「働きがいも経済成長も」「海の豊かさを守ろう」といったような衛生や労働、環境など幅広い目標を含んでいる。これらのゴールには、それぞれに対応する169項目の「ターゲット」があり、具体的にこのターゲットを達成していくことで17ゴールの実現に結び付いていく。

ただ、ビジネス上のKGI/KPIとは異なる点がある。169ターゲットは、「リンケージ」という考え方でそれぞれ結び付く。つまり、ある目標が別の目標と関係していたり、それがまた別の目標につながっていたりする。羽田は「AをやったらBも達成できるとは限らないし、国や地域の置かれた状況次第で、むしろAの達成がBの実現を阻害するような目標もあります」と説明し、こう続ける。

「21世紀を生きる私たちに今求められているのは、こうした課題のトレードオフを考えつつ、私たち自身が1つの主体となってSDGsの理念に参加し、解決していくこと。SDGs達成には、科学技術の有効活用を含み、未来に向けた課題解決への取り組みを具体的に進めることが必要です」。また、ターゲット全体は、いわば「169次元空間」のように複雑な構造になっており、フォローアップしていくためにも、データを可視化するコンピュータ技術が求められる。

SDGs実現を具体的に進めるには

では、SDGsの実現に向け、私たちはどう動いていけばいいのだろうか。私たちは、大局的な視点で見れば1つの大きな地球環境の中で生きている。その環境の上に社会が構築され、経済活動を展開している。SDGsのゴールやターゲットは、環境・社会・経済のすべてに関わるため、それぞれの相互関連を理解し、達成には何が必要かを考えることが重要だ。

国連では、「国連グローバル・コンパクト」というイニシアチブ(発案)を掲げ、これに賛同する企業をネットワーク化した「グローバル・コンパクト・ネットワーク」を組んでおり、企業活動のガイドラインを示している。同ガイドラインは、「SDGsのターゲットを理解」した上で、次に「優先順位を付け」、最終的に「事業目標を設定」と「フォローアップ」を方向性として示している。これは企業向けのものだが示唆に富んでいる。講演の後段、羽田はそれらの示唆を踏まえ「水や森林資源」をテーマにサイエンス・テクノロジーがどのように未来社会に貢献できるかを解説した。

例えば、日本国内でこれらのサイクルを回すには、木材生産工程の川上から川下に至るまでの事業課題を洗い出し、各課題がSDGsとどのように関連するのかを明らかにする必要がある。そして、サイエンス・テクノロジーの活用によってどのような課題が解決できるのかを考え、優先順位をつけていく。

課題が明らかになれば、解決手段も見えてくる。IoTやAI活用による林業作業者の見守り、ロボットによる業務負荷軽減、木材取引のスマート化やトレーサビリティの実現、中小規模の工務店経営支援など取り組みはさまざまだ。「日本ユニシスは、これまで多様な分野・業種のプロジェクトの中で多彩な知見を培っています。こうした強みを生かして社会課題の解決に取り組んでいます。私たち一人ひとりもSDGsを考えて行動するには、ターゲットと課題を理解し、強みや専門知識を生かして、未来への歩みを進めていく必要があります」と羽田は語る。

若い世代が、次の時代に向けて活躍するために

SDGsは、2030アジェンダに含まれ、2030年の未来視点から現在に向けてバックキャストで構想されたものだ。2030年は、決して遠い未来の話ではない。2030年が過ぎ、その10年後、20年後も世界は続いていく。問われているのは、未来視点で現在を見つめ、何ができるか――。

「もし、あなたが今20歳で、母親や父親が50歳くらいならば、あなたが親と同じ年齢になるのは2050年前後です。その視点で、現在のSDGsの取り組みを聞いて『これだけやっているのであれば、孫の代まで安泰』と考えるか、それとも『まだできることはある』と考えるのか。もし、後者であるなら、未来視点から現在を見つめたとき何ができるのでしょうか。答えは1つだけではありません」と羽田は問いかける。

「大切なのは、倫理を持ちつつ多様な課題を図る解決手段として科学技術を有効に活用しようとする姿勢です。近年、倫理と科学技術を掛け合わせた『EthiCS(Ethics+Computer Science)」という言葉も出てきました。この場にいる若い技術者や研究者の方々も、ぜひそうした倫理的な考え方を心の内に持ちながら、能力を生かして夢中になれることを見つけてください。その挑戦の中から新しい未来が創造されていきます。日本ユニシスは、そうした若い方々を応援しています」と話し、講演を締めくくった。

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