ファッションとアニメの融合で新境地を切り開くGG7

異なる要素が起こす化学反応が新しいビジネスの推進力に

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日本の成長戦略であるクールジャパンの1つとして挙げられるアニメ産業。市場規模2兆円ともいわれる成長市場だ。このアニメ産業全体の売り上げの4分の1強を占める商品化ビジネスで異彩を放っている企業がある。「キャラクターコンテンツ」と「ファッションの融合」など、他に類を見ない事業を展開するGG7(ダブルジーセブン)だ。
※一般社団法人日本動画協会調べ

ファッションの聖地・原宿にアニメと融合した店舗を開設

GG7のビジネスを象徴するのが、キャラクターコンテンツとファッションを融合させた「Hybrid Mind Market」(以下、HMM)というブランドである。リアルな店舗をラフォーレ原宿にオープン。現在は博多の駅ビル「JR博多シティ アミュプラザ博多」にも出店している。

同社の伊藤氏は「おしゃれな街・原宿で、アニメとファッションを融合させた店を出すことで、これまでのオタクとは違ったファン層を開拓したい」と原宿に出店した狙いを語る。原宿にはファッションに対する感度が高い若者が集まる。アニメファン以外の幅広い層にアピールすることができる。

HMMの店舗は「見えるゾーン」と「物販のゾーン」の2つのゾーンから構成されている。見えるゾーンには展示スペースとしてアニメのポスターやアニメのキャラクターの等身大のパネル(カットアウトパネル)が展示され、一方の物販のゾーンにはアニメに関連したグッズを販売している。

キャラクターの等身大のパネル
設置風景

この店舗の最大の特徴は、期間限定のショップであり、商品もオリジナルデザインにこだわっていることだ。"ここでしか買えない"レアなグッズが手に入ることが売りになっている。「店内の展示と販売するコンテンツは早くて2~3週間、基本的に1カ月単位ですべて入れ替えます。流行のサイクルが速いのでそれで十分なのです。そういうビジネスモデルはこれまでありませんでした」(伊藤氏)

ただし、ビジネスとしてはワンソース、マルチユースで展開する。原宿の次は博多で展開したり、直営店以外の期間限定ショップにも展開したりする。業務委託で運営しているショップが2店舗あり、高速道路のサービスエリアやデパートなどでも期間限定で販売する。伊藤氏は「幅広い層に認知を広げるための新しい手法として、各版元様からも評価していただけるようになりました」と語る。

異なる要素を融合させてビジネスの起爆剤にする

「アニメとファッションの融合に注目したのは、ファッションであれば、年齢や性別を超えていろいろな形でアニメを展開できるからです。アニメのキャラクターと合うブランドを探すのは難しいだけに、見せ方が大事になります」と伊藤氏。これまでも同社では注目度を高めるために様々な工夫をしてきた。

その1つが異なるジャンルのものとのコラボレーション企画だ。例えば、有名なパティシエとスマホゲームのコラボ。イケメン王子とストーリーが楽しみという若い女性に人気のあるゲームの王子のイメージに合ったチョコをパティシエに作ってもらって、バレンタインに自分で買って、自分にプレゼントするという企画だ。

架空のアイドルグループを題材にしたメディアミックス作品「ラブライブ!サンシャイン!!」とお米とのコラボも手がけた。「キャラクターの1人が白米好きという設定なので、お米のパッケージにそのキャラクターを使った商品を開発しました。若者になじみのあるペットボトルにお米を入れて目盛りをつけることで、冷蔵庫に置けるようにしました」(伊藤氏)

同社がアニメ単体だけではなく、他の要素と融合させるビジネスに着目してきたのには、理由がある。2つのものが融合することで、新たな展開が開けるからだ。爆発的に広がる可能性もある。伊藤氏は「アニメはすべてがヒットするわけではありません。認知度の低いキャラクターもあります。それを売り出すのはハードルが高い。しかし、違うジャンルの要素とコラボすることで、道が開けることもあります」と話す。

日本ユニシスとともにアニメビジネスを展開

そんな同社が現在取り組んでいるのが、日本ユニシスとの協業である。日本ユニシスとの出合いは、日本郵便からの紹介だった。実はGG7には日本郵便向けの商品企画、フレーム切手などを手がけてきた"もう1つの顔"がある。アニメ業界と日本ユニシス。一見、水と油のように混じり合うことのない、互いに業種の異なる住人が日本郵便の媒介を通して知り合うことになった。

しかし、紹介された日本ユニシスのファイナンシャル事業部郵政営業部の面々とは話が合った。伊藤氏は「同じ匂いがした」と話す。話のノリの良さ、ビジネスにチャレンジする気持ち、フットワークの軽さ、そして担当の森泰夢のアニメに対する関心の高さだ。2社のコラボは急速に進んだ。

その第1弾が今年7月に実施された「ラブライブ!サンシャイン!!」のバスツアーだ。同社では、テレビアニメ「ラブライブ!サンシャイン!!」の舞台となった沼津(静岡県)に、期間限定のプレミアショップを開設していた。そのショップの集客につなげるためのバスツアーを、日本ユニシスがプロデュースしたのである。

そして第2弾として8月から始まったのが、AR技術を活用した「動くブロマイド」の販売である。テレビアニメ「コンビニカレシ」の有名なシーンを切り出した場面写真が印刷されたブロマイドをコンビニで購入して、スマホのAR(拡張現実)アプリをかざすとその場面の動画が動き出す。

サンプル
サンプル

GG7のブランド「Hybrid Mind Market」とのコラボ企画として発売された、
テレビアニメ「コンビニカレシ」の名シーンを動画で見られる「動くブロマイド」

コンビニでブロマイドをオンデマンドでプリントできるコンテンツプリントサービス「らいぶろ」と、カメラをかざすとARでの広告や商品動画を閲覧することができるARアプリ「タメスコ」という日本ユニシスが提供する2つのサービスと、同社が提供する動画を組み合わせることで実現した。全国2万8000店舗のコンビニで購入が可能だ。

アニメとICTの融合には大きな可能性がある

「単に動画が見られるだけでなく、自分の手元にある場面写真のキャラクターが動き出すんです。技術を駆使したすごいサービスだと感激しました」と、伊藤氏は動くブロマイドを高く評価する。実はこのサービスは日本ユニシスの森の提案で誕生した。

日本ユニシス株式会社 ファイナンシャル事業部 郵政営業部 第二営業所 森泰夢

日本ユニシス株式会社
ファイナンシャル事業部
郵政営業部 第二営業所
森泰夢

「らいぶろで場面写真のブロマイドを販売したいという話をいただいて、有名な声優さんが演じているので"アニメをつけてみてはどうでしょうか"と提案させていただきました」と森。この提案が受け入れられ、AR技術を活用した初のコンテンツサービスが誕生した。

初めての試みだけにサービスインまでには苦労もあった。場面写真と連動して動くアニメは15秒から30秒程度だが、選定した場面の動画を制作会社から提供してもらわなければならない。「こういう商品化は初めてだったので、版元にも前例がありません。どう位置づけるのか、権利をどう処理するのか、どのタイミングで提供してもらうのかなど、決めてもらうのが大変でした」と伊藤氏。

しかし、伊藤氏と森は二人三脚で粘り強く取り組んで課題をクリアしてきた。「サービスインはギリギリのタイミングでしたが、メディアにも取り上げられて、観光にも使えるのではといった反響もありました。ARの可能性を感じてもらえたと思います」と森は今回のプロジェクトの意義を語る。

GG7にとって日本ユニシスとのコラボはどんな意味があったのだろうか。伊藤氏は「多岐にわたるネットワークがあって、大手企業とは思えない行動の早さがあります。当社のような規模の小さな会社には限界があり、組む相手によって伸びしろが変わってきます。今後も当社の強みを生かしながら、コラボを広げていきたい」と話す。

ビジネスエコシステムの基本は相互補完関係が成立することだ。GG7と日本ユニシスのコラボには明確にそれがある。アニメとICTの融合によってどんな新しい事業が生み出されるのかが楽しみである。