社員の「志」を言語化するワークショップ「ココカフェ」

~BIPROGYが取り組むPurpose経営4年間の歩み~

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2021年、BIPROGYは自らの存在意義を示すPurpose(パーパス)を掲げました。それ以来、社員に向けてPurposeに込められた想いを届け、理解を深める取組みを続けています。2025年には、社員一人ひとりの「志」を言語化するワークショップ「志言語化ワークショップ~ココカフェ~」を開催。今回は、これまでの歩みとともに、ココカフェの企画から実施までをけん引した人的資本マネジメント部の白壁勇太と川村千明に、その内容と成果を聞きました。

Purposeの浸透に向けた段階的アプローチ

――Purpose策定の背景を聞かせてください。

白壁BIPROGYの歴史はメインフレーム販売からスタートし、そこから60年以上、システムインテグレーションをコアに、お客さまの課題をITで解決し、社会的価値を生み出す企業へと進化してきました。時代の変化に合わせて変革を重ねる中で、私たち自身の存在意義を改めて問い直す必要がある──そう考え、2021年に「先見性と洞察力でテクノロジーの持つ可能性を引き出し、持続可能な社会を創出します」というPurposeを策定しました。そして翌2022年に、日本ユニシスからBIPROGYへと社名を変え、新たな一歩を踏み出したのです。

写真:白壁勇太
BIPROGY株式会社 人的資本マネジメント部 風土改革室 エンゲージメント推進課
課長 白壁勇太

――Purposeへの社員の認知度や理解度はいかがでしたか。

白壁人的資本マネジメント部では毎年、全社員を対象にエンゲージメント調査を行っており、Purposeの策定と社名変更を経て、エンゲージメントとともに、理念や戦略の社員への浸透度も高まると見込んでいました。しかし、2022年の調査では、エンゲージメント、理念に対する期待度、満足度に大きな変化は見られませんでした。どうすればそれらを高められるかと考えた結果、Purposeと戦略を組織全体に浸透させ、会社と社員をつないでいくことが重要であると思い、2023年から本格的にPurpose浸透の取り組みを始めました。

――具体的な取り組みを教えてください。

白壁2023年は大きく3つの施策を実施しました。まずは役員、事業部長、本部長などトップマネジメント層を対象にした講演会やワークショップを行いました。Purposeの必要性を理解するためのグループワークをしながら、組織ごとにPurposeを言語化していくことで、抽象度の高い会社のPurposeから、より現場に近い組織Purposeができました。2つ目は、部長クラスのミドルマネジメント層を対象としたPurpose討議会です。この討議会では、どうすれば組織の中にPurposeを息づかせることができるのかを真剣に話し合いました。3つ目は、これらの参加者から希望者を対象に実施した「福島フィールドスタディ」です。東日本大震災で被災した福島の今を視察し、現地で志を軸に活動されている方のお話をお聞きすることで、自分が大切にしたい価値観や自分の志を深く考える研修を行いました。

これらの場に同席した私は、Purposeについて率直に対話するトップマネジメント層やミドルマネジメント層の、「社内に浸透させていくのは自分たちだ」という強い想いを感じました。福島フィールドスタディは、今では全社員から希望者を募る形に刷新しました。若年層からベテラン層まで、幅広い層の社員が自ら手を挙げており、社内に変化が起きていると実感します。

――Purpose浸透度に変化はありましたか。

白壁Purposeを「知らない」と答える社員はゼロになり、自分ごとになっていると答える社員は増えてきました。一方で、上位マネジメント層と一般社員の認知には乖離がありました。一般社員でPurposeを話題にしたことがある人は2割程度にとどまっていました。私たちはPurposeをより身近に感じられるものにしたく、職場内で自然とPurposeを軸にした判断がされたり、自分の仕事とPurposeが繋がっている実感を味わってほしいと思い、次の企画を考えました。

――次のステップとして2024年はどのようなことを行いましたか。

川村対象を拡大し、「Purposeダイアローグ」を開始しました。組織長に組織Purposeに込めた想いを語ってもらった後で、各自の業務と会社のPurposeや組織のPurposeがどのようにつながるのかを対話してもらうプログラムです。実施後は組織Purposeの浸透度が大きく向上しました。

写真:川村千明
BIPROGY株式会社 人的資本マネジメント部 風土改革室 エンゲージメント推進課
担当マネージャー 川村千明

社員一人ひとりの「志」を言語化する「ココカフェ」

――2025年は「ココカフェ」に取り組んでいます。

白壁これまでPurposeの浸透に取り組んできて、トップダウンだけでは難しいと感じていました。Purposeを自分ごとにするためには、如何にそれに共感できるかが大事だと思っています。Purposeはいわば会社の「志」。これと一人ひとりが結び付く=エンゲージしてもらうためには、自分自身の志を考えることが必要だと考えました。会社の志と自分の志の重なるところを見つけることで、共感が生まれるのだと考えたのです。そこで、自分自身の志を認識して言語化していくために立ち上げたのが、「志言語化ワークショップ~ココカフェ~」です。

――「志」というキーワードはどのように生まれたのでしょうか。

川村「志」という言葉は、社員一人ひとりの意思や目標を象徴するものとして、人財戦略の中心に据えています。背景には、従来の「お客さまの要望に応えるSI」だけでは企業としての成長が難しくなるという環境変化があります。私たちは、ビジネスエコシステムの中心となり、社会課題を解決する企業へと変革することを掲げています。そのためには、社員自身が「やりたいこと」「実現したい世界」を持ち、主体的に価値を生み出すことが不可欠です。

仕事を通じて自分の志の一部が実現できる、そして会社のPurposeと少しでも重なりを感じられる、そんな状態が増えることが、BIPROGYグループの価値創出の源泉になると考えています。この想いから、「志追求型人財」略して「ココツイ人財」というコンセプトを打ち立て、個人の志を尊重し、挑戦を後押しする仕組みづくりを進めています。

「ココツイ人財」とは、志を持ち、ワクワクしながら働くことで世の中に価値を提供する社員を指します。志と聞くと、立派で崇高なものと受け取られるかと思いますが、BIPROGYが考える「志」とは、人生で実現したいことや歩みたいキャリアなど、心の原動力となるものや想いを指しています。気軽に言葉にしてほしいという気持ちを込めて「ココツイ」と軟らかい表現にしました。

――「ココカフェ」の内容を教えてください。

川村希望する組織を対象に2025年7月から実施している、志を言語化するオンラインワークショップです。事前に会社の想いを伝える動画を視聴してもらい、「ココカフェ」を開催する背景や志を言語化するメリット、キャリアデザインとのつながりなどを説明しました。その後ワークシートを書き込んでもらいます。ワークシートでは、「ワクワクすること」、「得意なこと・大切にしていること」、「誰かのために役立ちたいこと」を考えてもらい、3点が重なり合う部分に自分の志が見えてくる設計になっています。

図版:志ワークシート~My Purposeを言葉に~の記入用シート。次の記入欄がある。①ワクワクすること、②得意なこと・大切にしていること、③誰かのために役立ちたいこと、④志の言語化。
動画で「なぜ志追求型人財なのか」「志とはどういうものなのか」「どうやって志の言語化を行うのか」の解説を視聴し、志を持つことのメリットを理解してからワークシートへの記入を行う

川村ワークショップでは私たち事務局がファシリテーターを務めています。「ここでの話は、ここだけの話」など、参加に当たって心理的安全性を担保するためのグランドルールを定めました。普段の業務では関わらないような他組織のメンバーと対話できるように考慮し、1回におよそ150人が参加します。Zoomのブレイクアウトルームでは3~4人のチームに分かれ、ワークシートで内省した志を発表します。その後、ほかの参加者のフィードバックをもとにブラッシュアップさせ、最終的に自分自身の志を言語化します。

白壁最後に取締役3人の「志ショートムービー」を参加者向けに放映しています。トップが範を示すことが大事と考え、自身の言葉で志とPurposeを語ってもらいました。具体例を聞くことで自分の志と会社のPurposeをどのように重ね合わせていけばよいのかのヒントになるとともに、普段あまり聞くことのない、一人の人間としての役員の想いに触れる機会にできました。

撮影は事前の意識合わせから撮影後の編集まで、事務局と映像スタッフが何度も打ち合わせを重ねながら丁寧に準備し、細部までこだわってつくり上げました。緊張感もありましたが、取締役の想いがナラティブに伝わる形に仕上がったと思っています。視聴した社員に好評で、「取締役を身近に感じることができた」「志に共感できた」「自分も頑張ろうと思った」といった感想がたくさん寄せられています。

また、後続の取り組みとして「志リレー」と称し、全役員の志をリレー形式で社内に公開しました。志に込めた想いや背景、Purposeへの想いに加え、人となりが伝わる写真もあわせて、毎月発信しています。これらの記事を通じて、役員の価値観や考え方に触れることで、心理的距離が縮まるとともに、社員が志を考えるきっかけになればと考えています。

写真:左から順に葛谷幸司、齊藤昇、澤上多恵子
左から、代表取締役専務執行役員CSOの葛谷幸司、代表取締役社長CEOの齊藤昇、取締役執行役員CHROの澤上多恵子。3人が動画でPurposeを語り、志を持つことで、モチベーションが高まって仕事が楽しくなったり、自身の成長につながったり、ピンチに強くなったり、他者から共感や支援を受けやすくなるなどの気づきにつなげた

――ココカフェで工夫した点は何ですか。

白壁ココカフェは私たちのオリジナルでつくり上げました。悩んだのは参加対象者です。全員に参加してほしいけれど、強制されたのでは本人が心から思う志が出てこないのではと思ったのです。また、業務や風土など組織の状態はさまざまです。そこで、参加は組織長の判断に委ねる形にしました。結果、BIPROGY全社員約4400人のうち、約2300人が参加しています。

私たち自身、1回につき150人規模のオンラインワークショップをファシリテートしたり運営することは初めてでした。どうやったら実現できるのかを深く議論しましたし、何度もリハーサルを行いました。ココカフェに参加した社員全員の協力があって、実施できたのだと思っています。

川村事前に配布した資料ではBIPROGYの人財戦略や「ココツイ人財」がどのようなものなのかを、人的資本マネジメント部の想いがしっかり伝わるように意識しました。「ココツイAI」という社内用の生成AIツールをベースにしたオリジナルAIもワークショップに組み込みました。志を言語化するためにAIがサポートします。各々の志を発表した後、各自が考えてきた内容を入力すると、AIが志を言語化して提案します。AIの案をそのまま使ってもよいですし、自分なりにアレンジしてもかまいません。「ユーモア」「クール」など、好みのテイストを選べる遊び心も加え、気軽に取り組める工夫をしました。

参加者の約9割が満足――新たな発見と連帯感

――参加者からはどのような声が寄せられましたか。

川村参加後のアンケートでは約9割から高評価を得ました。「組織ミックスだったので、初めて会う人と対話できてよかった」「自分自身を深く内省する機会にできた」「年代もキャリアもプライベートの環境もさまざまな人たちの志を聞くことで、新たな発見があった」「普段だったら初対面の人には話さないような内面の話をすることで、団結力や連帯感のようなものが生まれた」といった声が届いています。「ココカフェを会社の文化にしてほしい」という声までありました。今回のアンケート結果を受けて、ココカフェが単なるワークショップにとどまらず、社員同士が安心して本音を語り合える対話の場として機能していることをうれしく思いました。

特に、参加者である社員の皆さんが積極的に対話に参加し、自分の想いや志をオープンに共有してくださった姿勢は、組織に新しい風を吹き込む大きな力になると強く感じました。組織や世代を越えた対話が新しい気づきや発想を生み出している点は、私たちが目指す「Purposeを軸にした組織開発」に直結しています。ワークショップ継続を望む声は、ココカフェが一過性のイベントではなく、継続的な仕組みとして価値を発揮できる可能性を示しており、今後の企画に向けて大きな励みになりました。こうした前向きな意見は、社員一人ひとりが組織の未来づくりに主体的に関わっている証であり、心から感謝しています。

志を起点としたキャリア形成へ――2026年の展開

――2026年以降、Purpose浸透の取り組みはどのように進化しますか。

川村ココカフェで言語化した志を形だけのものにしてほしくないので、2026年は業務やキャリアプランにつなげていく取り組みをしたいと思っています。すでに、上司とキャリアについて話し合うキャリアデザイン面談のシートに志を記入する欄をつくり、志を軸にキャリアプランを考えられるようにしました。志を軸に異動の希望が出せる「ココツイ異動」の試験運用も始めています。

白壁Purposeダイアローグもココカフェも、刷新しながら今後も続けます。2026年には、Purposeをより一層自分ごと化・実践している状態にすべく、自分自身の志と会社のPurposeをいかにつなげていくかの仕組みづくりに取り組みます。今後は、「仕組み」と「コミュニティ」がキーワードになってくるのではと考えています。いずれ、BIPROGYは志先進企業だと言われるようになりたいですね。

写真:左から順に川村千明、白壁勇太
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