IoTとAIで夢のバイオ燃料の実用化を目指す

日本ユニシスとユーグレナ、バイオ燃料用ミドリムシの生産量予測で共同研究

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ミドリムシを原料としたバイオ燃料の開発に挑戦する株式会社ユーグレナは、ミドリムシの生産管理と生産予測の分野において、日本ユニシスの「IoTビジネスプラットフォーム」と「Rinza」のAI技術を活用するための共同研究を開始した。安定的に大量培養することが難しいミドリムシの世界で、日本ユニシスのIoTとAIはどう貢献できるのだろうか。

培養工程管理の自動化でミドリムシの安定供給を

“ユーグレナ”という学名を持つミドリムシに注目し、微細藻類の食品や化粧品を開発・販売して業績を伸ばしているバイオテクノロジー企業、株式会社ユーグレナでは、上場前からミドリムシを活用したバイオ燃料の研究開発を目指してきた。

サトウキビやトウモロコシなどと違って、ミドリムシは食料として競合することがなく、食料価値の高騰とは無関係なバイオ燃料として期待され、同社は2016年に三重県多気郡に藻類エネルギー研究所を建設。1000平方メートルの培養プールなどを使って、ミドリムシの培養に取り組んでいる。

三重県、多気町、株式会社中部プラントサービスの協力のもと建設されたユーグレナの藻類エネルギー研究所では、中部プラントサービスが保有する木質バイオマス発電所から排出される排ガス、排水や排熱などを、微細藻類の培養に必要な二酸化炭素源やエネルギーとして用いるバイオ燃料向け微細藻類生産の低コスト化に向けた「バイオ燃料用藻類生産実証プロジェクト」が実施されている。
株式会社ユーグレナ
バイオ燃料開発部
バイオ燃料開発課
チームリーダー
武田誠也氏

現在、大小複数のプールでミドリムシが培養されているが、どれくらい増えているのか、どのような状態なのかといった測定作業の多くは人手に頼っている。今は実験段階で規模も小さいために対応できているが、実用段階では膨大な規模になることが予想され、人手による対応は現実的ではない。

同社のバイオ燃料開発部 バイオ燃料開発課 チームリーダーの武田誠也氏は「バイオ燃料にできるほどの油を採取するためには、数キロメートル四方の広大なバイオプラントが必要になる可能性があります。その施設の端から端までを人手で管理するのでは、人件費がかかり過ぎます。どう自動化するのかは、ミドリムシをバイオ燃料の原料として使うためにクリアしなければならない、重要な技術課題でした」と語る。

逆に言えば、培養工程を自動的に管理できれば、プラントは安定し、年間生産量も向上し、製品化への道が開ける。ユーグレナでは以前からAIを使ってそれを実現できないかと考えていた。

費用対効果を重視し具体的な方策を見極める

株式会社ユーグレナ
バイオ燃料開発部 バイオ燃料開発課
課長 鈴木秀幸氏

ユーグレナが共同研究のパートナーに日本ユニシスを選択した背景には、同社グループが中心となって取り組むベンチャーキャピタルファンド「リアルテックファンド」の存在があった。「新しい技術を発掘する時の積極的な姿勢をみていて、私たちと同じ方向を向いていると感じていました」と同社のバイオ燃料開発部 バイオ燃料開発課 課長の鈴木秀幸氏は話す。

「生産管理に強いエンジニアリング会社に頼むのが普通なのかもしれませんが、それでは初めから大がかりな設備を用意することになりかねません。でも日本ユニシスなら、ローコスト、ローテクノロジーで、ハイクオリティといったアプローチに賛同してくれるはずだと思いました」(鈴木氏)

共同研究を始める前から両社はどう進めていくのかという議論を重ねてきた。主なテーマは新しい測定方法についてだった。現在は、サンプリングした培養液に含まれる細胞の数を自動的に測るセルフカウンター、培養液に光を当てて吸収具合から濁度の変化を観測する吸光度測定、濾紙を使った濾過測定の3つの方法で測定しているが、もっと簡便で正確な結果を得られる方法があるはずだと考えた。

約1年間の議論を通していくつかの方向性が見えてきた。特殊なカメラを搭載したドローンで培養プールの様子を撮影して、画像認識によって状態を評価する方法、膨大な培養データを集めて、それをビッグデータとして分析することで、育成のための変数を把握し、結果を予測する方法などだ。

こうした議論を踏まえて開始された共同研究だが、重要視するのは費用対効果である。「目的はあくまでも管理コストを下げること。それに絞って投資をしていきたい」と鈴木氏は話す。バイオ燃料の相場はリッター当たり100円以下であることを考えると、ミネラルウォーターと同じくらいの価格を実現しなければ市場に受け入れてもらえない。そのためには人件費を含めた管理コストをいかに安く抑えることができるかが重要になる。

双方の知見を融合させて大きな相乗効果を生み出す

今回の共同研究では、日本ユニシスの「IoTビジネスプラットフォーム」と「Rinza」のAI技術が活用される予定だ。エネルギーの多様化と安定確保という社会課題解決へ向け、IoTデバイスを通してリアルな培養データを収集し、さまざまな分析方法を適用しながら、AIを駆使したシミュレーションモデルの確立を目指していくことになる。現在、IoTビジネスプラットフォームに接続するためのデバイスを準備しているという。

「3月までは実証実験と捉えて、センサーの組み合わせや撮影方法、解析方法についていろいろと試したいですね。まず屋内で試行錯誤して、よい結果が得られれば屋外にも適用していきます。コストをかければどこまでできるのかを知るためのファクターを絞り込むことで本格的な取り組みにつなげたい」と鈴木氏は今後の展開を語る。

培養プロセスの管理のために効果的なファクターを絞り込めれば、将来の本番用のプラントでいくらかかるのか具体的な金額が見えてくる。その上でどこまでやるのかをビジネス面から判断することもできる。

「日本ユニシスは、IoTやAIといった私たちにはない知見を持っています。そこに当社の培養の技術を融合させられれば、大きな相乗効果が期待できます」と鈴木氏。エネルギー問題という社会課題を解決するバイオ燃料の開発に向けた第一歩が、今踏み出されたのである。

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