私の本棚 第8回

「スマートタウン」領域を理解する

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初心者必読の本から上級者向けの本、「座右の書」などを推薦者のコメントとともにご紹介するコーナー。第8回のテーマは、「スマートタウン」領域を理解する、です。価値ある一冊に巡り合う一助となれば幸いです。

写真:永島直史

今回の推薦者
スマートタウン戦略本部
執行役員
永島直史

ルール・チェンジ
武器としてのビジネス法

本書の著者の一人、増島雅和弁護士(金融庁監督局、規制改革推進会議専門委員会などを歴任)は経団連主催セミナーなどで意欲的に活動されている。「激動!日本のデジタル規制改革の最新動向」(2021年1月)の講演に感銘を受け、すぐにこの書籍を手に取った。今後、コロナ禍などを背景にデジタル活用を阻害する各種規制が見直されていく。イノベーションを促進する制度の整備・拡充なども進み、これらはデジタル化の進展に向けた追い風ともなろう。本書は、規制を「守り」と捉えるのではなく、「攻め」に活用することが重要であると説く。その上で、サステナビリティやガバナンス、雇用、M&A、金融、ビッグデータ、ヘルスケアなど各分野に存在する規制の解釈を分かりやすく解説している。スマートタウン戦略本部はさまざまなステークホルダーと共に社会課題解決を実現するビジネス創出を目指し、日々活動している。本書はその推進に大きなヒントをくれた一冊だ。今、皆さんが取り組むビジネスやこれから取り組もうとしている事業領域にも新たな示唆を与えてくれるだろう。

[編著]森・濱田松本法律事務所
[出版社]日本経済新聞出版
[発行年月]2020年12月

社会的インパクトとは何か
社会変革のための投資・評価・事業戦略ガイド

「ビジネスの達成度測定は、今後大きく変わるのではないか」と議論する中、この一冊と出合い、引き込まれるように読了した。これまでは、提供者はソリューションの販売本数、利用者はソリューションを利用する会員の獲得数や売上額などが評価指標だった。しかし、今後は「そのビジネスがどのように社会的インパクトを与えたか」が問われる。例えば、ヘルスケアでは「健康寿命の延伸にいかに寄与したか」、モビリティでは「マイカー所有率の減少の中でどのような移動手段を実現したか」など事業が社会に与えた影響という観点も評価指標になるだろう。私たちは、これまでのベストプラクティスを駆使して社会課題を克服する新事業を創造し、それらが実装された社会の実現に向けて歩みを重ねている。本書は、そうしたビジネスを進める上で、「何に投資するのか」「どのような問題・課題に対処するのか」「これらの『成功』はどのように測定するのか」、そして「どうすれば社会的なインパクトをより大きくできるか」などが豊富な事例と共に解説されている。頭の片隅で“何となく理解している“新事業創出に向けた思考や視座が言語化・可視化された意欲作だ。

[著]マーク・J・エプスタイン、クリスティ・ユーザス
[出版社] 英治出版
[発行年月]2015年10月

ビジネスマンのための新教養
UXライティング

以前、新サービスを提案中のメンバーがアプリのデザインに苦労していた。さまざまな事業者の持つサービスや技術を相互につなぐ「収納サービスプラットフォーム」をベースに衣類のクリーニングやその後の保管、ユーザーへの宅配までをアプリで行えるサービスである。この時は、外部企業の支援を得てデザインを行った。その際、ユーザーにアプリ上でいかに「次のボタンを押させるか」を念頭に置いたメニュー画面設計やクーポン配置の仕方に感心したことを覚えている。またクリーニング後、ユーザーに返送するための段ボール箱には、クリーニング事業者のシンボルマークを生かして、親子が一緒にポニー(馬)の塗り絵で遊べる粋な工夫もされており感銘を受けた。本書が定義するUXライティングとは、「ユーザーの体験を助け、体験価値を高めるように配慮した書き方、技術」のことだ。さまざまな具体例を通じ、このUXライティングの手法が分かりやすく紹介されている。この中にスマートタウン戦略本部が進める価値交換基盤「doreca」のプロト画面の構築事例も紹介されている。Webサイトやアプリ制作の観点からも知っておいて損のない知識がかみ砕いて解説されおり、コーヒー片手にリラックスして読むにはお勧めの一冊と思う。

[著]髙橋滋子、富永敦子
[出版社]翔泳社
[発行年月]2020年11月

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