初心者必読の本から上級者向けの本、「座右の書」などを推薦者のコメントとともにご紹介するコーナー。第1回のテーマは、「イノベーション」です。価値ある一冊に巡り合う一助となれば幸いです。
今回の推薦者
日本ユニシス株式会社
常務執行役員
ビジネスイノベーション部門 担当
小西宏和
スマート・ジャパンへの提言
日本は限界費用ゼロ社会へ備えよ
ベストセラー『限界費用ゼロ社会』の著者、ジェレミー・リフキン氏による日本向けの著述や講演・対談などをまとめた書籍。昨今、国内外で豪雨や森林火災などの自然災害の多発により、気候変動やサステナビリティへの課題意識がますます高まっている。我々は持続可能な発展を遂げるために“限界費用ゼロ社会”を実現する必要があり、デジタル革命によってそれが可能になったと述べている。そして日本には“限界費用ゼロ社会”の実現に向けて、世界を先導できる程の高いポテンシャルがある、と我々を勇気づけてくれる。イノベーションを起こすには、制約条件や目標を明確にすることが欠かせない。“限界費用ゼロ社会”という将来像をイメージすることで、社会的にインパクトの大きいイノベーションを構想する手助けとなる一冊。
[著]ジェレミー・リフキン
[編]NHK出版
[出版社]NHK出版
[発行年月]2018年4月
ハーバードでいちばん人気の国・日本
なぜ世界最高の知性はこの国に魅了されるのか
リフキン氏も触れている「日本の強み」について、世界最高峰のビジネススクールといわれるハーバードでどう教えられていて、日本から何を学ぼうとしているのかを解き明かしている。ハーバードでは毎年日本への研修旅行が大人気であり、参加した学生は必ず日本を気に入るそうだ。また、ケーススタディで日本の事例が多数取り上げられており、日本の優れた点を分析している。ハーバードで扱う事例は“新幹線お掃除劇場”やトヨタのオペレーションといった持続的イノベーションが代表的だが、世界初の先物市場(堂島米市場)というゼロからの創造が起こったことも取り上げられている。総括的には日本の強みは社会インフラが整っていること、そして人的資本の強さ、すなわち教育水準、美意識、社会意識の高さだと分析している点も興味深い。少子高齢化が進み課題先進国となった日本において、我々が直面する多くの社会課題もイノベーションによって解決できるはずであり、日本人にはその力があるのだと勇気づけられる書籍。当社の社外取締役でもある佐藤知恵氏の著書でもあり、ご一読いたければ幸いである。
[著]佐藤知恵
[出版社]PHP新書
[発行年月]2016年1月
奇跡の職場
新幹線清掃チームの働く誇り
上述した佐藤智恵氏の書籍でも取り上げられている“新幹線お掃除劇場”をつくり上げた矢部輝夫氏ご自身の著書。イノベーションとは特別な営みではなく、日々の仕事から生まれるものであり、イノベーションが生まれる職場をつくることがリーダーの仕事と考えている。イノベーションは誰かに強いられて生み出せるものではなく、各人が内発的動機をもって、情熱をつぎ込んだ仕事によってこそ生まれるものだ。私も、常に“リスペクトとプライド”を大切にする職場をつくりたいという思いで日々取り組んでいる。新幹線の車内清掃といういわゆる3K職場が、どのようにしてやる気と創意工夫にあふれる職場になったのか。現場から多くの知恵=イノベーションが生まれる職場づくりのヒントが得られる一冊だ。同じ現場について記した遠藤功氏の著書『新幹線お掃除の天使たち』(あさ出版、2012年)も併せてお勧めしたい。昨年度のBI部門発足式の際に、「いかに職場をつくるのか」ということをお話した際に引用し、多くの方々から「心に響いた!」というメールをいただいた。かく言う私自身も矢部様から直接お話を伺った際、涙いたしました。ぜひ皆様にもご一読をお勧めしたい。
[著]矢部輝夫
[出版社]あさ出版
[発行年月]2013年12月