サステナブルな社会へ――BITS2019開催

社会課題の解決に貢献するためデジタルコモンズを提供する

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6月に東京で開催された「BITS2019」は延べ2600人を超える来場者を迎えて、盛況のうちに幕を閉じた。冒頭では、日本ユニシス株式会社代表取締役社長の平岡昭良が挨拶し、社会課題解決にかける志を熱く語った。国内外で山積する課題に対して、政府や企業は新しい発想でのアプローチが求められている。日本ユニシスグループはビジネスエコシステムとプラットフォームを、社会の共有財として提供することで課題解決に貢献したいと考えている。

クリーンなエネルギー社会とスマートな暮らしづくり

2019年6月6日、7日の両日、日本ユニシスグループの年次カンファレンス「BITS2019」が東京都内で開催された。今回のテーマは「サステナブルな社会へ ビジネスエコシステムは人々を、地域を、日本を、地球を救う!」。初日に挨拶に立った日本ユニシス株式会社代表取締役社長の平岡昭良は、冒頭「『地球を救う』というのは大それたテーマかもしれませんが、それは、日本ユニシスグループの志をお伝えしたかったからです」と聴衆に語りかけた。

さらに、国連サミットで採択された「SDGs(持続可能な開発目標)」の17のゴールを示して、さまざまな社会課題の解決に取り組むことで事業の成長を目指す姿勢を明確にし、具体的な3つのテーマを挙げた。

1つ目のテーマは、「クリーンで持続可能なエネルギー社会」。この分野では10年ほど前にスタートしたEV(電気自動車)向け充電インフラ事業の展開や、電力自由化など社会の変化に対応したエネルギーマネジメントシステム(EMS)の取り組みを実施している。

「充電ステーションをネットワークで接続し、エネルギーマネジメントのノウハウを蓄積しています。また、再生可能エネルギーを選択的に使いたいというニーズに対応できるよう、電力に非化石証書(*)をつけてトラッキングする実証実験なども始めています。いずれも、クリーンで持続可能なエネルギー社会の実現に向けて、大きな柱になる取り組みです」と話す。

CO2フリーという「環境価値」を証書の形で取引する制度は、2018年にスタートした。需要家はこれを購入することで、地球環境への取り組みを強化し、再生可能エネルギーの普及・拡大に貢献することができる。そのために必要なトラッキングの仕組みや市場づくりが進められている。自分が使うエネルギーがどこでどのようにつくられたものか、一人ひとりが選んで使うことができる、当たり前に地球環境に貢献できる、そんな未来をつくる取り組みだ。

2つ目のテーマは、「スマートな暮らしに向けて」。住みやすい地域づくりのためには、さまざまな工夫や仕組みづくりが求められる。高齢者の免許返上が話題になることも増えたが、免許の返上は「交通弱者」の増加につながるだろう。このようなジレンマを解決するための手段の1つとして考えられるのが自動運転である。

「最近、ドライバーの運転ミスによる痛ましい交通事故のニュースをよく耳にします。こうした事故を防ぐという観点でも、自動運転への期待が高まっています」と話し、こう続けた。「私たちはコネクテッドカー、自動運転、MaaS(Mobility as a Service)などに注力し、住みやすい地域づくりに貢献したいと考えています。長年経験を積んできたドライブレコーダー関連事業も、その一部に組み込まれることになります」

日本ユニシスグループが取り組むキャッシュレス決済などの新しい金融サービスも、スマートな暮らしを支える重要な基盤となる。交通、観光、流通、金融などの各業界のサービスやシステム構築ノウハウを連携させ、生活者の環境を豊かにする魅力的な地域づくりを目指している。

システム工学や技術に加えて
社会工学、行動科学などの知見を習得

そして、3つ目のテーマとして、平岡は「労働人口減少社会への対応」を挙げた。「AIやIoT、ロボティクスなどを活用し、労働力不足を補うだけでなく、よりよい社会づくりを進めることにチャレンジしています」と話す。

先に触れた自動運転もその一例だろう。また、AIなどの技術は幅広い産業領域への導入が期待されている。日本ユニシスグループは多様なプレーヤーとのコラボレーションを通じて、こうした社会課題解決に向けた取り組みを推進している。

「大きな社会課題に向き合うには、私たちの力だけでは限界があります。お客さまやパートナーをはじめ、多くの皆さんとの協業が欠かせません。こうした取り組みの中で、社会課題の解決に貢献したい人々と、それを可能にするサービス、プロダクト、体験をマッチングできるビジネスエコシステムとプラットフォームを『社会の共有財』、いわば『デジタルコモンズ』として創造し、提供したい。私たちの考えるデジタルコモンズは、多くの人々の“評価”や“信頼”を受けて成り立つものです。未来の世界に新しい共有財であるデジタルコモンズをつくり上げることが、日本ユニシスグループにとっての新しい提供価値になっていくと考えています」

その前進のため、日本ユニシスグループは多くの挑戦的な実証実験や新規サービスの立ち上げなどを加速し、学術的な知見の習得も始めている。

「これまで、私たちはテクノロジーを使い、システム工学的アプローチで、社会課題の解決に取り組んできました。しかし、社会課題がより複雑化するこれからの時代には、それだけでは不十分です。そこで、個人最適ではなく、世界規模、地球規模の合理性を考える社会工学的アプローチや、“人はなぜそのような行動をとるのか”という人の行動原理を理解する行動科学的なアプローチなども積極的に取り入れています。こうした活動を通じながら、社会になくてはならない企業となるべく成長していきたいと考えています。米国の環境団体で最も歴史あるシエラクラブ財団の創立者、デヴィッド・ブラワーが残した名言“There is no business to be done on a dead planet”(死んだ惑星でできるビジネスはない)。私たちの世代でコモンズを絶えさせないよう、志を継ぐ未来の世代に引き継いでいきたいと思っています」

その一例として、人々がより健康でいきいきと暮らせる長寿社会づくりに向けた「ジェロントロジー」の研究がある。人間の加齢や老化などを総合的に研究する学問で、日本ユニシスは専門家の協力を得てこの分野の知見の蓄積を進めている。こうしたアカデミックなアプローチを含めて、日本ユニシスグループは「デジタルコモンズの提供」に向けて着実な歩みを続けている。BITS2019に訪れた多くの来場者は、その一端としての具体的な取り組みを目にすることができたに違いない。

* 非化石証書について
「日本ユニシス 非 FIT 非化石電源に係る認定業務の実務を開始」(2019年6月13日付ニュースリリース)

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