ITを活用した「住宅の未来像」を描く――業種を超えたエコシステムを形成

住まい手のための安心・安全・快適なスマートホームを実現

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住宅・住宅設備メーカーをはじめ、住環境に関わるビジネスを展開している様々な企業や自治体に向けて、日本ユニシスはITを活用した住宅の未来像を提示している。IoT(モノのインターネット)はもちろん、仮想現実(VR)や拡張現実(AR)などのテクノロジーも積極的に投入し、スマートハウスの実現に向けた変革を支援していく構えだ。

IoTデータの活用が
今後の住宅の価値を決める

日本ユニシス株式会社 製造システム本部 エンジニアリング統括部 システム一部 三室 大曲多久

日本ユニシス株式会社
製造システム本部
エンジニアリング統括部
システム一部 三室
大曲多久

IT業界と住宅業界をつなぐ動向として、住まい手に今まで以上の安心・安全・快適を提供するスマートホームに向けた取り組みが加速している。特に近年はIoTに関するテクノロジーの進歩が著しく、以前よりはるかに簡単に家電製品やセンサーなどのデバイスからデータを取得できるようになったことが、住宅にかつてない変革をもたらしている。

裏を返せば、IoTによって収集されたビッグデータをどこまで活用できるかによって、スマートホームの価値は大きく変わってくる。

日本ユニシス 製造システム本部 エンジニアリング統括部の大曲多久は、「複数メーカーの家電製品やセンサーほか、インターホンなど住設機器のデータを含めて統合的に蓄積・分析し、二次利用が可能な形にして提供していくプラットフォームが必要」と指摘する。日本ユニシスでは、そこにAI(人工知能)なども活用した学習や分析を行うことで、これまで知ることができなかった事実や隠れていた情報資産を発見し、未来の住宅につながる新たなサービスを創出していくという。

ITを活用した変革へ
スマートハウスの未来像

ITを活用した住宅の在り方として、日本ユニシスは次のような5つの未来像を描いている。

第1は「健康寿命が延びる家」。住宅内に設置された様々なセンサーのデータやバイタルサイン(心拍、呼吸、血圧、体温)をIoTプラットフォームでモニタリングし、併せてかかりつけ病院が有している電子カルテや診療履歴、自治体のオープンデータなどを組み合わせて分析を行う。これにより居住者の健康状態が保たれているかどうかを地域として見守るとともに、必要に応じて家族や医師に通知を送る。「健康寿命を延ばして長寿を支えることは医療費や介護費などの削減にもつながり、社会にとっての大きなプラスとなります」と大曲は語る。

第2は「市場価値が下がりにくい家」。大曲は「築30年で資産価値はゼロになるといわれている住宅の常識を、IoTを活用することで打ち破りたいと考えています」と強調する。具体的には、住宅の構造部分の温度や湿度、ネジの緩みなど要所の状態を常に監視し、入居履歴などのデータと併せて分析する。適切なタイミングで、必要な場所に、適切なメンテナンスを行うことが可能となる。

第3は「予防や予兆に強い家」で、家の中での"ヒヤリ・ハット"や不慮の事故を未然に防ぐ。電気やガスの使用量、あるいは室内での滞在時間や活動量など、各種センサーや住宅設備から収集したデータを基に住まい手の標準的なライフスタイルを分析し、普段と異なる値を検知した場合に「何か異常が発生している」と判断して警告を発する。

第4は「電気を節約できる家」。テレビや照明や冷蔵庫、空調設備など家電製品の利用データを蓄積・分析することで住まい手ごとの傾向を明らかにし、どうすれば電気を節約できるか改善案を提案する。人それぞれの生活パターンを理解することで、快適な生活と低炭素社会への貢献を両立する。

そして第5は「考える家」。家電製品や各種センサーから得られるデータに基づき、住まい手の快適な生活のために必要なことを家そのものが考えてくれるのだ。例えば全員が外出して誰もいなくなったら家電製品の待機電力をカットする、日差しが強くなったらカーテンを閉める、家族の誰かの帰宅時間が近づいたらエアコンのスイッチを入れるなど、自律的に思考してアクションを起こす。

ITを活用した住宅の未来像

ただ、これらの未来像を実現していくためには、必ず解決しておかなければならない課題もある。それはセキュリティの担保である。「IoTセキュリティのデファクトスタンダード化を目指す『セキュアIoTアライアンス(SIA)』に、日本ユニシスはスタンダードパートナーとしていち早く参画。住宅業界における新たなビジネス展開にセキュリティ面でも貢献していきます」と大曲は力を込める。

VR/ARサービス事業に参入し
エコシステムづくりを推進

一方で日本ユニシスは住宅・住宅設備市場に向けたVR/ARサービス事業へ、多数のソリューション投入を計画している。

スマートフォンとVRスコープを活用した「仮想展示場」もその1つだ。「これまで住宅・住宅設備ビジネスでは主に図面やイメージ写真が使われてきましたが、そこにVRやARのテクノロジーを導入することで、顧客はより具体的なイメージを膨らませ、お互いに納得のいく商談を進められるようになります」と大曲は語る。

リフォーム商談に向けては、ヘッドマウントディスプレーとカメラを組み合わせ、現実世界の映像に実寸法のCGを合成して投影するARのシステムも開発した。例えばシステムキッチンをリニューアルする際など、様々な設備が自分の身体サイズに合っているかといった使い勝手を、事前に体験して確認することができる。

VR/ARを活用した住宅・住設販売への取り組み

「住宅を取り巻く環境は今後さらに大きく変化していくと予想され、技術の進歩も激しいことから、企業が単独で対応していくのは困難な時代となっています。住宅業界だけでなくIT企業や医療機関、自治体など、社会インフラに携わるあらゆる関係者が業種の垣根を越えて連携することで、初めて多様なライフスタイルに対応することが可能となります」と大曲は説明する。日本ユニシスは単なるプラットフォームの構築にとどまらず、スマートハウスを共通項とするビジネスエコシステムの形成を支援していく考えだ。