2018年6月、来日中のユニシス・コーポレーション会長兼CEO、ピーター・アルタベフ氏がインタビューに応じ、今後どのようなグローバル戦略を展開していくのか、活発化するデジタルトランスフォーメーションをどう捉えているのかを明らかにしました。日本ユニシス代表取締役社長 平岡昭良とのトップ対談の様子も交えてお伝えします。
セキュリティという強みを生かし
グローバルにビジネスを展開
――ユニシス・コーポレーションの現在の主な戦略について教えてください。
ユニシス・コーポレーション
会長兼CEO
ピーター・アルタベフ氏
ユニシス・コーポレーションは現在、世界100カ国以上で事業を展開しています。金融サービス、政府機関、旅客運輸、ヘルスケアなど、幅広い業界に向けて多彩なソリューションを提供していますが、経営哲学としてそれら全てにセキュリティを組み込んでいくことを基本姿勢としています。それがユニシス・コーポレーションの大きな強みになっています。
――セキュリティを強みにできる背景にはどんなことがあるのでしょうか。
セキュリティにはかねてから注力してきました。以前から提供しているオープンメインフレームの「ClearPath Forward®」は、米国立標準技術研究所(NIST)から「一度もデータ漏洩が起きていない堅牢なシステム」として評価を受けています。また、最近ではネットワークを仮想化分割する次世代セキュリティソリューション「Unisys Stealth®」を提供しています。マイクロセグメンテーション、暗号化、バイオメトリックスといった機能を使って、データを確実に守ることができます。
このStealthは、厳格な国際規格に準拠するセキュリティ製品として、世界28カ国で最高機密データをやり取りすることを認められています。ユニシス・コーポレーションが活動する全ての地域で提供され、政府にも民間企業にも導入されています。
――ユニシスグループとしてアジア市場をどう位置づけているのでしょうか。
アジア太平洋地域の15カ国で全売り上げの14%を占めています。2018年第1四半期では昨年と比べて15%も急成長し、世界で最も重要な地域の1つとして位置づけています。
特に得意としているのは、金融系と政府系です。金融系では、オムニチャネル・デジタル・バンキング・プラットフォーム「ELEVATETM」をはじめ、金融サービスソリューションや住宅ローンソリューションなど、さまざまなソリューションを銀行向けに提供しています。政府系では、オーストラリア、ニュージーランド、フィリピン、マレーシアなどで、国境警備や国防、社会福祉などのソリューションを提供しています。
――日本市場をどう捉えていますか。
日本経済の成長は継続的にプラスで推移しています。見通しも明るいのではないでしょうか。日本はアジア太平洋地域の規範となる地域です。技術面では先進的ですし、文化的にも進んでいます。
ただ、国として人口減少という大きな課題を抱えています。それを技術や文化でどう解決していくのか。世界的に見ても人口が減っている国は珍しいだけに、社会課題先進国として世界中から注目されています。
――日本のユニシス製品のユーザーをどうフォローしていくのでしょうか。
メインフレームという言葉は残っていても、現在の製品は以前とは別物です。インテルのx86アーキテクチャをベースにしており、先進的なサーバーと一緒に使うことができます。次の段階としては、クラウド環境や仮想環境でも動くメインフレームを考えています。
形は変わりますが、メインフレームとして提供してきた能力やセキュリティ、パフォーマンスは変わることなく提供し、技術的には進化させていきます。日本ユニシスが技術を提供する最先端に立ち、ユニシス・コーポレーションと一緒にお客さまに最適なソリューションを提供していくことになります。
トップ対談:デジタルトランスフォーメーションで
これまでになかった新しい価値を
日本ユニシス株式会社
代表取締役社長
平岡昭良
平岡 デジタルトランスフォーメーションを進めていく上でのポイントはどこにあるとお考えでしょうか。
アルタベフ 鍵は大きく2つあります。どういうパートナーと組むのかということと、どんな課題を解決するのかということです。デジタルトランスフォーメーションは1社で成し遂げることはできません。また、テクノロジーばかりにフォーカスしてしまうと、そもそも何を解決したいのか、課題は何なのかを見失ってしまいます。
その意味で、日本ユニシスが積極的にビジネスエコシステムの構築に挑み、社会やビジネスの課題からアプローチしている姿勢には、非常に勇気づけられます。
平岡 ありがとうございます。そのとおりで、デジタルトランスフォーメーションが最も威力を発揮するのは、企業と企業をつないでいくところだと思っています。日本では、まだ、AIやIoTといったツールをどう使うか、といったところに主眼が置かれがちですが、日本ユニシスとしては、異業種連携によるビジネス創出を推進し、今まで解決できなかった社会課題の解決を目指すことに、重点的に取り組もうとしています。
アルタベフ 具体例をお話ししましょう。先日、金融領域におけるオムニチャネル360度システムを発表しました。従来の私たちの得意領域であるバックオフィスからフロント領域に広げたサービスで、お客さまのお客さまを見据えたデジタルトランスフォーメーションを実現しようというものです。他にも、国境警備の仕組みを変える生体認証システムをオーストラリアで採用いただいたり、インドのバンガロール(現ケンペゴウダ)国際空港で空港ソリューションを採用いただいたりしています。いずれにしても、私たちは必ずお客さまの視点を通してソリューションを見るようにしていて、同じ課題を抱える複数の企業や組織に提供できるソリューションであることを大事にしています。
平岡 金融領域におけるバックオフィスからフロント領域までをトータルで支援していく取り組みは、私たちが注力領域で取り組んでいる領域ですし、空港ソリューションではユニシス・コーポレーションとすでにタッグを組んで推進していますね。もっと情報を共有することで、お互いの付加価値を上げるよい協力関係が築けると思います。
アルタベフ 先日、日本ユニシスが発表した新中期経営計画の説明を受けたのですが、とてもダイナミックでパワフルな内容で、日本ユニシスは十分に実現できるだろう、という印象を持ちました。過去60年間で、日本ユニシス自身は何度も再生を繰り返してきました。従業員自身が、自身の変革を経験しているからこそ、お客さまの変革を説得力を持って推進していけることは、何よりの強みでしょう。
平岡 まさにその強みを、私たちは生かしていきたいと考えています。私たちが今まで培ってきた、さまざまなテクノロジーを組み合わせてワンストップで提供する力、お客さまからの信頼感、そして、新しいビジネスをデザインする力で、ビジネスエコシステムの触媒(カタリスト)として、さまざまな企業をつなぎ、社会課題の解決を目指していきたいと思います。例えば、エネルギーや渋滞といった問題を解決するために、私たちは充電インフラのネットワーク化や、タクシー配車サービスや、トラックの待機時間短縮のための予約システムなどを提供していますが、さらに今後は、交通全体を最適化するMaaS(Mobility as a Service:サービスとしてのモビリティ)のような革新が進むでしょう。
私たちは、今は点となっているサービスをつなげて最適化することで、大きな社会課題の解決を目指せると考えています。このような破壊的な革新は、米国のような規制緩和の進んだ国から生まれています。グローバルに展開しているユニシス・コーポレーションの持つ情報やソリューションから得られる知識は、私たちの取り組みを加速させるでしょう。日本は課題先進国ですから、私たちの取り組みも、きっと、ユニシス・コーポレーションの参考になるでしょう。
アルタベフ 冒頭にもお話ししましたが、デジタルトランスフォーメーションを進める上で、パートナーシップは重要な要素です。平岡さんとはCEOになった時期も同じで、さまざまなアイデアに関するディスカッションもさせていただき、親近感を持っています。こういう信頼できるパートナーがいることは、何よりの財産です。
平岡 今後ともお互いよきパートナーとして力を合わせていきましょう。