ユニシス研究会は、1953年に発足したIT関連としては日本で一番長い歴史を持つユーザー会である。現在では異業種交流と人財育成を目的とした活動を展開している。ICTをベースにさまざまな研究活動に取り組むユニシス研究会はどんな役割を担い、日本ユニシスグループにとってどのような存在なのか。ユニシス研究会の会長を務める株式会社オリエンタルランド取締役専務執行役員の片山雄一氏と、日本ユニシス株式会社取締役常務執行役員CMOの齊藤昇が対談した。(以下、敬称略)
研究・論文活動を中心に
人財が成長できる場を提供
――ユニシス研究会の概要と現在の活動状況について教えてください。
片山 ユニシス研究会は、1953年3月にRemington Rand式パンチカードシステムのユーザーが集まって発足した「レムランド研究会」を源流とする、日本で一番長い歴史を持つIT関連のユーザー会です。
当初から技術別・産業別に多岐にわたる研究活動が行われ、現在もその伝統を引き継ぎながら、会員企業を主体にさまざまな活動に取り組んでいます。活動のメインとなるのは研究活動と論文活動で、全国各地10の支部単位で企業見学会や講演会なども行っています。
全国レベルの活動としては、6月に行われる日本ユニシスグループの全社イベント「BITS」に、全国カンファレンスとして共催し、年間の活動で優秀な成績を収めた研究活動や論文活動の発表会を行っています。
また、10月に各支部が持ち回りで会員企業の交流と親睦を深める場としての全国フォーラムを開催し、11月には海外のICT企業を見学する海外スタディーツアーを行い、3月に年間の活動を総括する成果発表会と表彰式を行っています。
――どのような内容の論文が多いのでしょうか。
片山 テーマは多種多様です。ICTに関する論文から、実務への応用まで、分野の幅は広いですね。最近ではブロックチェーンをテーマにしたものもあります。また、会員企業では、当研究会の論文活動を人財育成や研修に活用しているケースも多数あります。
――日本ユニシスグループにとって、研究会はどういう存在なのでしょうか。
取締役常務執行役員 CMO
齊藤 昇
齊藤 当社とユーザー企業をつなぐ、なくてはならない存在です。会員企業からは「人財育成の場としても役立つ」という感想を伺うことが多く、大変うれしく思いますが、私たち自身も「一緒に育てていただいている」と感じています。
さまざまな業種・業態の会員の方々が集い、切磋琢磨してレベルアップする姿を拝見したり、論文の選考委員やアドバイザーを務めさせていただいたりすることで、当社の社員も会員の皆さまと一緒に成長できています。
論文作成の作法も含めて
委員が丁寧にサポート
――研究会は会員に対してどのような支援をされているのですか。
片山 論文活動に関しては、どういう書き方をすればよいのかといったベーシックなことから始めて、独自の“論文キット”を使用して入り口から丁寧に指導しています。また、論文の進捗状況を見て、委員が適宜アドバイスするなど丁寧なサポートを行っています。
研究活動の難しさは、いかに一体感をつくっていくかという点です。さまざまな企業の方が集まっているので当然です。そこで、合宿をしてテーマの絞り込み作業を通してコンセンサスづくりを行います。
最終的には、プレゼンテーションも評価されるため、各支部で指導・チェックをした上で、全国大会で競うことになります。そのため、研究の中身に加え、プレゼンテーション力やコミュニケーション力も併せてブラッシュアップしています。
――論文のサポートを行うのは会員の方なのですか。
片山 会員と日本ユニシスグループの社員の方たちです。年間20件前後の応募がありますので、1人で何件か並行して担当します。テーマが深く広くなっているので、読みこなすのも大変です。
齊藤 当社からは「技報」に論文を投稿しているメンバーも参加して、経験からのアドバイスをすることもあります。
――研究活動のテーマはどのように設定し、どのくらい時間をかけてまとめていくのでしょうか。
片山 日本ユニシス側からテーマのたたき台が提示されることもありますが、グループごとの特色もあるため、そこに味付けをしてテーマを決めていくことが多いです。
テレビ会議や電話会議、Skype、メールなども利用しながら、発表までに10回程度は集まります。特にテーマが決まらないチームは、テーマを固めるまでが大変です。最後の発表会で、そのプロセスに関するコメントなどを聞くと、感動して心を打たれます。
――日本ユニシスグループはどんなスタンスでサポートしているのでしょうか。
齊藤 会員の皆さまの自主性を重視して、緩やかに寄り添ってお手伝いをするというスタンスです。歴史のある研究会ですから、活動のスタイルなども確立されていて、安心して見ています。
異業種から得られる知見が基礎力の向上につながる
――活動内容を伺うと、企業が自社で研修として行ってもよい内容のように感じたのですが。
片山 ユニシス研究会には、さまざまな業種の方が集まっているところが大きく違います。特に研究活動では、普段考えないような視点から深く議論できることに意味があると思います。
実際の研究活動は1グループ10人前後で構成され、多種多様な人財のバリエーションがあるのが特徴です。
齊藤 当社からはその分野のエキスパートがアドバイザーとして参加させていただいています。経験値が大事なので、マネジメントクラスの社員が多いですね。
片山 ベースとなるのはICTの分野なので、幅広い知見を持っていて、かつ統一的に見てくれているアドバイザーがいることで、大いに助かっています。
日本ユニシスグループは、中期経営計画「Foresight in sight 2020」を掲げ、さまざまなスキルを持った社員やグループ企業と共に社会課題を解決するビジネスエコシステムのプラットフォーム構築に取り組んでいます。そこで得られた知見を教えてもらうことで、私たちの視野も大きく広がります。
――研究会としての課題はどんなところにあるとお考えでしょうか。
片山 1つは活動には労力が必要で、負担がかかる作業が多いことです。参加するメンバーや会員企業にとっては、直接的なメリットや効果があるわけではないので、研究会に参加いただく上で、人を育てる活動だと理解してもらえるかが課題です。
繰り返し参加している企業はメリットを分かった上で、継続的に参加してくれていますが、新規加入の企業に対しては、活動に参加することでどのようにして人財育成につながるのかを理解してもらうことが難しいですね。
ただ、研究会をきっかけにしてICTの基礎技術に磨きをかけられるという点は大変重要です。こうした活動に参加することで、より体系的にしっかりとものを考え直すことが、個人にとっても、企業にとっても、われわれ研究会にとっても大きな財産になると思っています。
齊藤 私たちとしても、いろいろな場面で、研究会の意義やメリットを伝える努力をしています。会員の皆さまの時間を割いていただくわけですから、特に経営トップの方にこの活動をご理解いただくことが重要だと思っています。
また、基礎技術は当社グループが一番得意とする分野なので、これからもしっかりとサポートしていきます。ブロックチェーンやAI、IoTといった最新のテクノロジーに関しては、会員企業だけでは情報を仕入れたり、理解したりすることが難しいので、きちんと分かりやすく伝えるように、心がけています。
特に研究活動は少人数でクローズドな場なので、セミナーなどでは話せない実証実験の苦労話などもお伝えしています。
オープンな関係を大切にして
サポートに応える成果を残す
――今後の研究会の目標などをお聞かせください。
片山 基本的には、現在の活動を継続して、会員企業間のつながりをより拡大できればと思っています。現在はICTがより身近なところで使われていて、テーマも自然に広がっています。研究会では地域活性化などの社会的なテーマを取り上げることが増えているので、より多面性を持たせたいと考えています。
例えば、デジタルトランスフォーメーションは、言葉先行で実態がつかみづらくイメージが湧かないかもしれません。しかし、具体的なテーマで研究活動をしていくと理解も進みますし、いろいろなビジネスチャンスにもつながると思います。
齊藤 私たちは、社会課題を解決するビジネスエコシステムの創出を目指していますが、それには、さまざまな業種・業態のパートナーとの連携が必要です。その意味でも研究会のメンバーの方々と、同じチームの一員としてご一緒できる場は貴重です。
従来は当社のお客さまやパートナー企業が主なメンバーだったのですが、これからは私たちが投資しているスタートアップ企業なども巻き込んでいけたらと考えています。
――研究会として日本ユニシスグループとの将来的な関係をどうお考えですか。
片山 日本ユニシスグループは、ベンダーという立場を超えて客観的なアドバイスや提案をいただける、オープンな企業です。最適なソリューションをつくっていくための、貴重なアドバイザーだと思っています。今後もそういう関係を広げていきたいと期待していますし、研究会として日ごろのサポートに応えられるような成果を残したいと考えています。