接客と棚卸し1台2役をこなす多機能ロボット「Siriusbot」の実力

池袋PARCOで実証実験。労働力不足の課題解決に向けて商用化目指す

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パルコと日本ユニシス、08ワークスの3社が東京都立産業技術研究センターと共同開発した自律移動型ロボット「Siriusbot(シリウスボット)」の実証実験が、2017年10月18日から25日までの約1週間にわたって池袋PARCOで実施された。営業中の店舗内でお客さまの案内役を務め、閉店後は各テナントの従業員に代わって在庫確認(棚卸し作業)までこなすという1台2役の働きぶりは、サービスロボットの新しい時代の到来を予感させるものだった。

行きたい場所を問いかければ
自ら移動して案内してくれる

Siriusbot

Siriusbot

ファッション、バラエティー雑貨、コスメ、レストラン・グルメなど多くのテナントが入居し、女性を中心に高い人気を集める池袋PARCO。その本館5階フロアに新しいキャストが加わった。キャストといっても人間ではない。「Siriusbot(シリウスボット)」という自走式の多機能ロボットだ。

ベースとなっているのは、地方独立行政法人東京都立産業技術研究センターが試作開発中の「Libra(リブラ)」という自律移動型案内ロボット。同センターが主導する平成28年度ロボット産業活性化事業「公募型共同研究開発事業」に、パルコのほか日本ユニシスと08ワークスの3社共同プロジェクトが採択され、Libraをカスタマイズする形で新規開発されたのがSiriusbotというわけだ。2017年10月18日から25日までの約1週間にわたり、営業中の店舗内で実証実験が行われることになった。

株式会社パルコ グループICT戦略室 伊藤健氏

株式会社パルコ
グループICT戦略室
伊藤健氏

このSiriusbotが担う仕事の1つがお客さまの案内である。パルコ グループICT戦略室の伊藤健氏は、「池袋PARCOでは本館1階にインフォメーションカウンターを設置していますが、そこで対応できることには限界があります。各フロアでもお客さまのさまざまなお困り事にお応えできるよう、ロボットを活用していきたいと考えています」と狙いを示す。

例えば、Siriusbotに「○○はどこですか?」と行きたいテナントや施設を音声で問いかけると、単に道順を教えるだけでなく、自ら動いて目的の場所まで案内してくれる。

タッチパネル操作や音声対話で、テナント情報や各種施設情報を日本語または英語で案内する「店舗案内機能」を搭載。来店客が探しているテナント前まで自律走行で案内する
タッチパネル操作や音声対話で、テナント情報や各種施設情報を日本語または英語で案内する「店舗案内機能」を搭載。
来店客が探しているテナント前まで自律走行で案内する
日本ユニシス株式会社 インダストリサービス第一事業本部 事業開発部 ロボティクス推進グループ グループ長 西崎健司

日本ユニシス株式会社
インダストリサービス第一事業部
事業開発部 ロボティクス推進グループ
グループ長
西崎健司

もちろん走行中に他の買い物客の妨げになったり、ぶつかったりといったトラブルは決して起こしてはならない。日本ユニシス ロボティクス推進グループの責任者としてSiriusbotの開発を主導した西崎健司は、「ベースのLibraに対してセンサーを追加するほか、過去に手がけた同種の実証実験から得た知見も加味して、制御ソフトウェアも変更するなど、安全性には特に留意しています」と話す。

試しにSiriusbotの進路に立ちふさがってみたが、Siriusbotはしっかり"障害物"を検知し、その場でいったん停止。前方に何もないスペースを選んで方向を変えてゆっくり通過していき、高い安全性を確認することができた。

また、ソフト面では「インフォメーションカウンターによく寄せられる問い合わせの履歴データを分析し、Siriusbotに学ばせました」(伊藤氏)とのことだ。さらに英語による問いかけにも対応し、池袋PARCOを訪れる幅広いお客さまの案内役を務めた。

閉店後の店内で黙々と棚卸し作業をこなす

商品に付けられたRFIDタグ

商品に付けられたRFIDタグ

Siriusbotの役目はこれだけでは終わらない。お客さまや従業員が帰ったあとの店内で黙々と働くのだ。照明も落とされたフロアを自走して各テナントを回り、各商品に付けられたRFIDタグを無線で読み取り、店頭在庫の数量をデータ化して管理する。

閉店後に行われるこうした棚卸し作業はこれまで非常に手間がかかり、従業員は長時間の残業を余儀なくされることが少なくなかった。「この仕事をSiriusbotが代行することで、テナントの皆さまの働き方改革にも貢献できれば」と伊藤氏は話す。

実はこのように1台で何役もの仕事をこなすロボットの活用法こそが、今回の共同研究開発事業にSiriusbotが採択された大きなポイントとなっているようだ。

地方独立行政法人 東京都立産業技術研究センター プロジェクト事業推進部 ロボット開発セクター長 武田有志氏

地方独立行政法人 東京都立産業技術研究センター
プロジェクト事業推進部
ロボット開発セクター長
武田有志氏

東京都立産業技術研究センター プロジェクト事業推進部 ロボット開発セクター長の武田有志氏は、「決して安くはないロボットへの投資が、単に案内役を務めさせるだけで本当にペイするかというと、なかなか難しいのが現実です。その意味でも今後はロボットに多様な機能を持たせる必要があり、それを実現しようとする3社の開発コンセプトに注目しました」と話す。そして「Siriusbotの機能のさらなる高度化を図り、より多くのシーンでお客さまをおもてなししたり、従業員を手助けしたりして活躍するロボットに育ててほしいです」と大きな期待を寄せている。

これを受けてパルコ側も11月4日に上野に新規開業した「PARCO_ya」でSiriusbotを稼動(11月12日まで)するほか、2019年にリニューアルオープンする「渋谷PARCO」においてもサービスロボットをはじめ最新のテクノロジーを用いた店舗設計を行う計画。「2020年東京オリンピックに向け、世界から訪れるお客さまのお迎え役としてロボットを活用していく体制を整えていきます」と伊藤氏は話す。

さらに「業界・業種を越え、あらゆるサービス分野でロボットが当たり前に活躍する時代の先鞭をつけたいと思います」と日本ユニシスの西崎も意欲を示す。Siriusbotの共同開発や今回の実証実験を通じて培った技術と運用ノウハウを生かし、日本ユニシスとしてもロボットの商用化に向けて本格的に乗り出していく構えだ。

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