未来を変える「発想力」 子どもたちが描くSDGs時代の都市像

創意工夫が随所に光る!「Minecraftカップ2021全国大会」開催レポート

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2022年1月30日、「教育版マインクラフト(Minecraft: Education Edition)」を使った作品コンテスト「Minecraftカップ2021全国大会」の最終審査会・表彰式が開催されました。3回目の開催となる今回は「SDGs時代のみんなの家、未来のまち」がテーマ。18歳以下、1人(個人)もしくは30人以内のチームから作品を募集し、当日は484の応募作品の中から最終審査に残った20作品の参加者プレゼンと審査、そして受賞作品の表彰式がオンラインで行われました(その模様はYouTubeでアーカイブ配信されています)。「Minecraftカップ2021全国大会」のシルバーパートナーとして、このイベントを支援する日本ユニシス(2022年4月よりBIPROGYに社名変更)の在り方とともに、子どもたちの創意工夫に満ちた大会の様子をレポートします。

世界で人気のMinecraftで楽しくプログラミング教育

「Minecraft(マインクラフト)」とは、立方体のブロックで構成された仮想空間の世界の中で、プログラミングによる自動化や仕掛け作りをしながら1つの「ワールド」を作り上げていく人気のゲーム。複数名で協力しながらワールドを作ることや、別の人が作ったワールドに遊びに行くといったマルチプレーもできるとあって、世界中で人気が高まっています。

画像:「Minecraft」で描かれた仮想空間の例
「Minecraft」で描かれた仮想空間の例。大会当日の表彰式は、この空間で実施されました

このMinecraftを学校の授業でも利用できるようにカスタマイズされたのが教育版マインクラフトです。指導者が見守るワールドの中で、デジタルなものづくりを体験しながら、子どもの探求心、プログラミング的思考、想像力、問題解決能力、協調性の成長を促すツールとして、教材にも取り入れられています。小学校では2020年度、中学校では2021年度から、新学習指導要領によってプログラミング教育が必修化されています。さらに、今春から高校でもプログラミングやデータ分析を学ぶ「情報」科目が必修となり、2025年の大学入学共通テストには「情報」が追加されることも決定しています。

写真:「Minecraftカップ2021全国大会」最終審査会・表彰式、生配信の様子
「Minecraftカップ2021全国大会」最終審査会・表彰式、生配信の様子

こうしたICT教育の急拡大を背景に、Minecraftカップ全国大会運営委員会は2019年から「Minecraftカップ」を開催。Minecraftを活用することで、全ての子どもたちがプログラミング教育や、デジタルなものづくりに触れることのできる機会の創出を目的としています。未来の創り手である子どもたちがプログラム的思考を育み、企画や制作、発表という一連のプロセスを体験することによる成長を支援できると考え、日本ユニシスも本大会に参画しました。普段の学びや遊びで得た知識をMinecraftの世界で形にしていく体験は、大変有意義な学びの機会となるでしょう。

「日本ユニシスBIPROGY賞」は人も動物も植物も、誰も取り残されない街に

ファイナリスト作品には、地球環境を維持するために農耕社会に回帰する街やゴミをゴミ銀行でお金に換える街など、固定観念にとらわれない魅力あふれる作品が勢ぞろい。東京大学教授の鈴木寛氏や日本初のプロマインクラフターであるタツナミシュウイチ氏、動画クリエイターのカズ氏など、そうそうたる顔ぶれの審査員からも、子どもたちによるプレゼンのたびに驚きの声が上がりました。

その中から、“みんなが楽しくワクワク暮らせる社会を一緒に創っていけそうなチーム”に贈られる「日本ユニシスBIPROGY賞」を受賞したのは、チーム「7人のクラフター」の「自然と共に育む未来~動物たちと仲良く暮らすまち~」。

街の中には、家、学校、病院のほかに、飢餓を無くすためのフードバンクや動植物を守るための動物保護施設、植林所、植物園などを多数建築しています。元の地形をあまり壊さないことにもこだわり、学校や病院は海の上に浮揚させる斬新なアイデアも披露してくれました。街のシンボルである「大木」の中には、人だけでなく動物も憩う図書館やカフェが造られ、「人も動物も誰も取り残さないワクワクするまち」を表現しています。

画像:チーム「7人のクラフター」の発表動画より
チーム「7人のクラフター」の発表動画より。街の中心にはシンボルである「大木」がそびえ立っています

注目ポイントは、SDGs目標「7 エネルギーをみんなに そしてクリーンに」を意識したというバイオガス発電所。クリーンエネルギーを生み出す方法は太陽光や風力などの選択肢がありますが、動植物に与える影響が少なく、発電時に出てしまう排水を街の畑に再利用できることから、バイオガス発電所を採用。発電方法のメリットとデメリットをきちんと調査して、自分たちの街に最適な発電方法を採用している点が、高く評価されました。日本ユニシスの澤上多恵子業務執行役員は「みんなが仲良く暮らせる社会の“みんな”に、人間だけでなく動物、植物、魚、最終的には地形までも含めていた点が素晴らしかった」と講評。

チーム「7人のクラフター」メンバーは、新型コロナ禍の影響を受け、一度も会うことなく今回のワールドを建築。SNSを駆使した思索の共有や、ルールづくりなど、制作過程においてもさまざまな工夫を実践したと語ります。

「僕たちは、年齢、性別、学校も違う7人です。バラバラなメンバーが集まり、時にはぶつかり合いながらも、全ての生き物に優しいワクワクするワールドを作り上げました。実は、日本ユニシスBIPROGY賞を最初から狙っていました!そして日本ユニシスがどんな仕事をしているのか、もっともっと知りたいと思いました」とコメントし、笑顔を弾ませました。

画像:日本ユニシスBIPROGY賞表彰の様子
日本ユニシスBIPROGY賞表彰の様子。「取りたかった賞なのでとてもうれしいです」と喜びをあらわに

Minecraftを通して大人も子どもも社会課題に向き合う機会に

大賞は、建築賞も受賞した熊谷武晴さんの「EREC -地球蘇生実験都市-」が受賞。「EREC」とは「Earth Revival Examination City」の頭文字を取ったもの。そのテーマは、「地球の自然を永遠に守ることが約束された世界」。「宇宙博物館」や「オゾン散布超高高度航空機」など、SDGsの諸目標にひも付いた多様な実験的施設を複合させたワールドが広がります。たった1人で制作したとは思えない壮大かつ緻密な世界観に会場からも感嘆の声が上がりました。

画像:熊谷武晴さんの発表動画より
熊谷武晴さんの発表動画より。SDGsの目標7、13、14、15を解決するカギとなるオゾンを航空機から散布する「オゾン散布超高高度航空機」

中学校では技術部に所属する熊谷さん。本大会については個人参加でした。「周囲に仲間や指導者がいないことで苦労する面も多かった。今回のテーマも、SDGsという難しいものでした。しかし、難しいからこそ、入念に調べつつ想像力と奇抜なアイデアで挑んでみようと思いました。そして、広い視野と多角的な視点から『未来における理想のかたち』を創造することを心掛けました。結果として、自分が思っていた以上の成果と評価を得ることができ、光栄です。Minecraftを自分の表現手段として活用できたことにもとても満足しています」と語ってくれました。

画像:タツナミ氏が建築した表彰式会場の様子
タツナミ氏が建築した表彰式会場の様子

表彰式は、タツナミ氏がMinecraftで手掛けたコロッセオ風の豪華な表彰式会場で行われました。賞が発表されるたび、受賞者のアバターは跳びはねて大喜び!フィナーレには花火が打ち上げられ、画面越しにも盛り上がる様子が伝わってきました。

写真:審査中の様子
審査中の様子。甲乙つけがたい20作品の中から14の賞が授与されました

総括では、「単にプログラミングをするだけではなく、多種多様な社会課題の解決に向けたアイデアを基礎に工場や森林組合などに足を運んで、そこで受けたインスピレーションを生かした作品が多かったと感じます。ものづくりやプロデュースの原点となる調査がとても良くできていました」とMinecraftカップ実行委員長を務める鈴木氏が振り返り、子どもたちの意欲的な行動力を称賛しました。

続いて、タツナミ氏は子どもの考えを知るためにも、「大人も積極的にMinecraftに接してほしい」と話し、こう続けます。「大会の開催ごとにMinecraftのクオリティがどんどん高くなっています。今は、子どもたちのスキルの成長に追い付けない大人が多い状態かもしれません。しかし、Minecraftを通して子どもが社会に求めている姿を知ることは、私たち大人が彼や彼女たちのためにできることを考えるきっかけになります。ご両親も学校の先生方も、ぜひ一緒に頑張りましょう!」と力強く呼び掛けました。カズ氏も「本大会に参加した子どもたちが大人になるまでにもっと多くのことを習得し、私たちが想像もできないようなことをやってくれそうな気がします」と今後にも強く期待を寄せています。

また、本大会審査員の一人で立命館小学校教諭、Cross Education Lab代表の正頭英和氏は、「一般に日本人は、ゼロからイチを生み出すための発想力が弱いと指摘されます。ですが、そんなことはない。むしろ、その才能を開花させる場所が無かっただけだと、この大会が教えてくれたように感じます。存在意義の高い大会であり、今後一層参加者が増えてほしい」と日本のクリエイティビティの可能性を示唆しました。

Minecraftは、理想の街や社会を具体的に表現できる方法の1つです。今回の「Minecraftカップ」は、持続可能な社会について、子どもと大人が同じ目線で考えるきっかけとなりました。次世代の担い手たちが創造する世界が、本当に未来を変える日も近いかもしれません。

社内イベント「親子でノーコード開発体験 with Minecraft」を開催!

画像:「親子でノーコード開発体験 with Minecraft」の様子

2021年12月11日、MinecraftとMakeCode(Minecraftと連携するノーコードツール)を通じて親子でノーコード開発を体験する「親子でノーコード開発体験 with Minecraft」が日本ユニシス社内のオンラインイベントとして開催されました。講師はMicrosoft Innovative Educator Fellowであるタツナミシュウイチ氏が務め、日本ユニシスグループの社員が親子で参加しました。以下、その様子をレポートします。

イベントでは、タツナミ氏の案内でMinecraftの「ワールド」へ移動し、MakeCodeを起動。すると、早速「エージェント」と呼ばれるロボットのようなキャラクターが現れました。プログラミングでコマンド(指示)を与えることで、エージェントが自分の代わりにさまざまな作業を行ってくれます。イベント参加者は小学校中学年以上を対象にしていましたが、皆さんMakeCodeを触るのは初めてのよう。まずはエージェントに慣れるため、みんなで道路を造ることになりました。「『土を掘って道を作る』を繰り返す」指示を与えると、エージェントが動き一瞬にして道路が完成します。自分の指示通りにエージェントが動く様子を見た子どもたちには、驚きと喜びが入り混じった表情が浮かびました。また、MakeCodeでは、エージェントを動かす実際のコードを確認できる点をタツナミ氏が紹介すると、保護者らの興味もより一層高まっていました。

画像:エージェントを動かす実際のコード画面
エージェントを動かす実際のコード画面

次に、「自分の敷地に階段状の橋と家を造る」という、やや難易度の高い課題に挑戦しました。自分のイメージ通りにコマンドを組み合わせられずに、一段飛ばしのデンジャラスな階段ができたり、エージェントが言うことを聞かなくなったりする場面も見られ、参加者は四苦八苦。それでも、集中力を切らさずに真剣に画面に向かう姿がとても印象的でした。その後、約1時間の課題制作タイムを終え、締めくくりとして親子で力作を発表。「家を造るはずが巨大なピラミッドができてしまいました(笑)。でも楽しかったです」との声や「階段を作るのが難しかったけれど、家は内装まで作れたので良かったです」との感想も見られました。作例の1つとして、参加者の自信作が披露され、机や明かりも作り込まれたディテールの細かさに「すごーい!」と拍手が沸き起こっていました。

タツナミ氏が「失敗の理由を考え、頭の中でシミュレーションする。そして、またチャレンジすることが大切です!」とエールを送ると、子どもたちのMinecraft熱はさらに高まった様子。「まだ続けたい!」と“延長戦”を希望する子も現れ、イベントは大盛況のうちに幕を閉じました。

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