新事業創出プラットフォーム「Financial Foresight Lab」が始動

パートナー30社超が集結するローンチイベントを開催

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日本ユニシスは金融機関と異業種企業、スタートアップが協業し、オープンイノベーションで次世代のビジネスを創出すべく、2018年4月に「Financial Foresight Lab」を創設した。2018年5月31日に日本橋茅場町「CAFE SALVADOR BUSINESS SALON」で開催された同ラボのローンチイベントの模様をレポートする。

デジタルトランスフォーメーションが加速し
業種・業界のボーダーレス化が進む中
新領域へのチャレンジが求められる

日本ユニシス株式会社
執行役員
ネオバンク戦略本部長
竹内裕司

2017年2月24日に開催された「Financial Foresight Forum」から新しいステージに飛躍し、異業種協働による革新的なサービスの創出を加速すべく設立された「Financial Foresight Lab」(以下、FFLab)のローンチイベントが5月31日に開催された。オープニングの挨拶を行った日本ユニシス執行役員ネオバンク戦略本部長の竹内裕司は、「多くのパートナーの皆さまにご参加いただき、FFLabを、次世代のビジネスを共に生み出していく場にしていきたいと思います」と、この新たな一歩に向けた思いを語った。

キーノートスピーチには、株式会社ユニコーンファームのCEOで株式会社ベーシックのCSO(最高戦略責任者)も務める、田所雅之氏が登壇。これまで日本および米国シリコンバレーで5社を起業したシリアルアントレプレナーであり、アマゾンでベストセラーとなった『起業の科学 スタートアップサイエンス』(日経BP社)の著者としても知られる田所氏は、「新規事業を成功に導く7つのポイント」として、次のような勘所を示した。

1. 破壊的イノベーションを理解し活用する
2. 良い新規事業のアイデアを理解する
3. 現状の分析ではなく徹底的にユーザーを観察し、“ユーザーのあるべき体験”を考える
4. 高速で市場にサービスや製品を投入し、顧客からフィードバック(学び)を得る
5. 最初は小さな市場を支配する
6. Data is King ――顧客データを定量的に取得する
7. 時代の変化を理解する

株式会社ユニコーンファーム CEO/株式会社ベーシック CSO
田所雅之氏

既存市場に製品やサービスを提供している伝統的な企業もイノベーションに注力しているが、それは持続的なものが中心である。ある瞬間に破壊的イノベーションがもたらす性能や効能に凌駕され、その後はどんな手を打っても追いつけなくなってしまう。だからこそ伝統的な企業も新領域へのチャレンジが不可欠なのだ。「私自身の経験からも、新規事業に乗り出した企業と既存事業にとどまった企業では、その後の売上高に60%以上の差がついています。新規事業の立ち上げは決して簡単ではありませんが、既存事業が行き詰まる前に勇気を持って踏み出してほしいと思います」と田所氏はエールを送った。

オープンマインドなスタンスを大切に
価値あるサービスを創出する

日本ユニシス株式会社
ネオバンク戦略本部
FFLab代表
三澤聰司

具体的にFFLabはどんな活動を計画しているのか――。「FFLabの目指すもの」と題するセッションに登壇した日本ユニシス ネオバンク戦略本部 FFLab代表の三澤聰司は、「金融機関、非金融事業会社、Fintech分野のスタートアップなど、業界・業種の垣根を越えたプレーヤーとのパートナーシップを大切にし、オープンイノベーションに基づくスタイルで新しくユニークな価値あるビジネスやサービスを創り上げる」というビジョンを示した。そして、「既存のビジネスを抱える組織内で新規事業創出にあたるのは大変な苦労が伴います。FFLabという外側の組織だからこそ、多くの参加者が同じ目線に立ってさまざまな課題を議論し、お互いに得意なことを持ち寄って創造的なことができるはず」と語った。

実際、現在のビジネスや生活を取り巻く環境は、「VUCA: Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)」といったキーワードに象徴されるように、ビジネスの移り変わりのサイクルが短く、顧客ニーズもロングテール化し、先の読めない時代となっている。「言葉を換えれば、企業が単独でイノベーションを起こそうとしても、ナレッジやスピードやコストの観点で困難です。多様なプレーヤーのユニークなアイデアを結集し、うまく活用していくためにもオープンマインドなスタンスが重要です。FFLabは常にそういったことを大切にして活動を推進していきます」と三澤は強調する。

例えば、FFLabのStandardメニューの一環である「参加パートナー限定イベント」では、Fintech分野をはじめとするスタートアップおよびエコシステムを形成する異業種企業のほか、政府機関や海外のプレーヤーも巻き込みながら、ミートアップの場となる講演やアイデアソンを実施し、新規事業創出のための重要な気づきを促していく方針だ。

また、個別プログラムとして行われる「API活用アクセラレーション」では、金融機関が公開しているAPIについて、異業種企業やスタートアップからの利用を促進するとともに、双方のマッチアップを行い新しい金融ビジネスの創出を目指していくという。

Financial Foresight Lab メニュー

なお、FFLabにはすでに35のパートナーが参加している(2018年5月31日現在)。今回のローンチイベントに出席したメンバーの間からも「地銀とネット銀行、一般事業会社といった関係性の中で新しい取り組みが開花すると面白い」「FFLabの活動を通じて、いち早く新しいビジネスチャンスをつかみたい」といった声が上がった。

先進のスタートアップに学ぶビジネスフォーサイト

日本ユニシス株式会社
ネオバンク戦略本部 企画推進部
Financial Foresight推進プロジェクト長
上田潤

続くセッションではユニークなサービスを展開するスタートアップ企業3社が順次ピッチで登壇し、自社サービスの提供価値や魅力を解説。それぞれのピッチの合間には、ビジネスフォーサイトとして、FFLabのメンバーが新たな価値創造に向けた具体的な取り組みのイメージやスキームについて説明した。

ドレミング株式会社が提供しているのは、勤怠・給与計算機能をベースとしたシステムだが、同システムの大きな特長の1つが、働いた実績に応じて給与を本人がいつでも受け取れる「いつでも払い機能」である。同社取締役の鈴木竜也氏によると、同システムはユーザーである従業員や事業者には基本的には利用料がかからないという。また、海外においては、労働実績に基づいてリアルタイムに計算された給与の範囲内で買い物ができるスマホ決済のサービスと連動させることで、クレジットカードと同様に店舗から得る手数料で収益を上げるビジネスモデルを採用している。「銀行口座を持っていない発展途上国の労働者にこの新たな金融インフラを提供することで、貧困と格差の削減に貢献したいと考えています。また、国内でもこの仕組みを生かせるよう法改正を働きかけるほか、今年の秋からは臨時手当によるデジタル通貨決済機能を提供する予定です」と鈴木氏は力説した。

ドレミング株式会社 取締役 鈴木竜也氏(写真左)と、
日本ユニシス株式会社 ファイナンシャル第三事業部
イノベーション推進プロジェクト マネージャー 三澤潔

株式会社ココペリが手がけるのは、金融機関向け営業支援プラットフォーム「SHARES for BANK」。専門家(士業)への相談状況や会計情報などから中小企業の経営課題やニーズを把握し、効果的かつ効率的な営業活動に結び付けることが可能となる。また、同社代表取締役の近藤繁氏は勘定系データの活用を強く訴えている。同社が持つ AI(人工知能)で勘定系データを分析することで、新たな与信モデルによる融資先の新規開拓、資金ニーズの予測やデフォルト確率の算出、中小企業の事業実態を把握することによるコンサルティング提案の強化などが可能となる。近藤氏は、「最新テクノロジーを活用して膨大な情報を読み解き、企業が本来持っている価値を見える化して伝えていくことが、私たちのビジネスです」と強調した。

株式会社ココペリ 代表取締役 近藤繁氏(写真左)と、
日本ユニシス株式会社 ネオバンク戦略本部
企画推進部 Financial Foresight推進プロジェクト マネージャー 長塚雅彦

そして株式会社クラウドリアルティは、不動産を利活用するための資金を必要とする人と、投資という形で応援したい人を直接結び付ける、投資型クラウドファンディングのサービスを展開している。日本国内には従来型の証券化によるエクイティファイナンスではコストが合わない、担保価値がなく金融機関から借り入れできないなど、資金調達が困難なことから停滞している不動産関連プロジェクトが多数存在しているという。同社代表取締役の鬼頭武嗣氏は、「私たちが提供するスキームは、これまでハードルの高かった不動産投資に“民主化”をもたらします」と訴求。例えば、京都の古い民家をリノベーションして宿泊施設に生まれ変わらせるというプロジェクトを証券化し、わずか3週間で7200万円の資金を集めるといった実績もすでに表れている。さらに同社は拠点を置くエストニアをベースに、海外でも積極的な事業展開を図っていく考えを示した。

株式会社クラウドリアルティ 代表取締役 鬼頭武嗣氏(写真左)と、
株式会社グッドウェイ 代表取締役社長 藤野宙志氏

FFLabの始動に伴い、同様に斬新なアイデアとテクノロジーを生かした新規事業創出の取り組みが、今後さらに活性化していくことが期待される。

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