FinTechは新たなフェーズに突入――「Financial Foresight Forum」フラッシュレビュー
自由に発想したアイデアをスピーディーに形にするFinTech実装のポイントに迫る
近年、金融機関はこれまでの預貸を中心としたビジネスモデルからの脱却が迫られており、新しいビジネスモデルへの転換、さらにはそれに伴う新しい収益源の創出が求められている。一方で一般消費者の間にも、ITを活用した革新的金融サービスであるFinTechを日常生活の中で便利に利用したいという機運が高まっている。この時代の流れを捉えて日本ユニシスは、2017年2月24日、「FinTechは新たなフェーズへ」をテーマに掲げた金融機関向けイベント「Financial Foresight Forum」を東京・日本橋茅場町で開催した。
デジタル時代の市場を読み解くキーワードは"生活"にある
日本ユニシス
ファイナンシャル第三事業部
ビジネスクリエーション統括部長
三澤聰司
日本ユニシスでは、FinTechを核とするビジネスエコシステムの拡大を加速させている。そうしたなか、今回のFinancial Foresight Forumは、FinTechに関する多彩なアイデアの可能性を、より具体的に実感してもらうことを目的に開催された。
冒頭の挨拶に立った日本ユニシスのファイナンシャル第三事業部 ビジネスクリエーション統括部長、三澤聰司は、シリコンバレーの日系コンサルティング企業が組成するファンド・オブ・ファンズへの10億円規模の出資、ブレーク前のスタートアップ企業を支援する「Fintech Discovery Platform」の展開、Lab形式の新しいビジネス創出スキーム「Financial Foresight Lab」などの取り組みを紹介。「金融機関、FinTechベンチャー、そして異業種の企業との協業や連携により、ビジネスモデルの変革を目指します」と意気込みを示した。
こうして開幕したFinancial Foresight ForumのSession1には、日本ユニシス CTO補佐の松岡亮介が登壇。「新たな企業間連携の取り組み ~なぜ『ビジネスエコシステム』が注目されるのか?~」と題するスピーチを行った。
日本ユニシス
CTO補佐
松岡亮介
メインフレーム時代からPC時代、クラウド時代を経てデジタル時代に向かおうとしているITの歴史をひもときつつ、松岡は「時代はほぼ20年周期で移り変わっており、これから迎えるデジタル時代の市場を読み解くキーワードは"生活"です」と示唆する。
実際、既存のビジネスの世界にもコンシューマー主導の様々な"ゲームチェンジ"が起こっている。タクシー業界におけるライドシェアリング(Uber)、ホテル業界におけるP2P宿泊サービス(Airbnb)、金融業界におけるクラウドファンディング(Makuake)、電話業界における無料通話・チャットサービス(LINE)など、事例は枚挙にいとまがない。
この新たな時代に向けて、企業はどう踏み出していけばよいのか。「我々が持つべきは、生まれたときからITに接して育ってきたデジタルネーティブの価値観にほかなりません。そのためには、今できることから発想するフォアキャスティングのアプローチでは十分とはいえず、理想的な将来像からバックキャスティングで考えていく『未来からのアプローチ』がより重要となります」と松岡は語り、ビジネスエコシステム形成により社会課題の解決を目指していく構えを示した。
B2Cビジネスが"Me2B"へとシフトするなか
保証書管理アプリの決済プラットフォーム化を推進
Session2では、株式会社Warranteeの代表取締役、庄野裕介氏が登壇し、「FinTechが銀行を"イオン"に変える未来 ~FinTechとCRMの活用法~」と題する講演を行った。
家電製品と住宅設備機器などの保証書を電子化するスマホアプリ「Warrantee」を手がけ、急成長している同社は、現在企業側が主導権を持ったB2Cビジネスは、徐々に生活者が関係構築の主導権を握るようになる"Me2B"ビジネスへシフトしていくとみる。
「ビジネスが個人を中心としてデザインされ、インターネットを通じた製品/サービスの相互接続によって、企業と個人は様々な接点を持つようになります。すなわち信頼構築が"企業と個人の絆"となり、個人から発生するデータを共有してもらうことによる"顧客理解"を深めてこそ、企業は初めて個人の多様なニーズに応えられることが可能になるのです」と庄野氏は説く。
株式会社Warrantee
代表取締役
庄野裕介氏
この時代の潮流の中でWarranteeが目指しているのが、保証書管理アプリの決済プラットフォーム化である。様々な製品の購買情報はもとより、その後の故障や廃棄、オプションの追加購入、中古売却といった製品動態に関するあらゆる情報が集約されてくる保証書管理アプリでは、製品ライフサイクルまで把握した上で顧客へのコンタクトが可能となる。この強みを生かした適材適所のFinTechを展開していくわけだ。
まず販促側に対しては、生活者個人が「より買い替えをしやすくする」ためのFinTechを提供。一方、銀行に対しては、「顧客ニーズを知り、買い替え時を知り、多彩なアプローチを可能とする」ためのFinTechを提供していくという。
具体的にはWarranteeのCRMをベースに複数の店舗と銀行間の連携を実現し、「家電や自動車、住宅など幅広い市場の買い替え需要(=資金需要)のタイミングを的確に把握できるサービスを展開していきます」と、庄野氏は今後に向けた構想を披露した。
また、Session3「デモンストレーション ~新たな発想をかたちに~」では、日本ユニシスの各プロジェクトメンバーが登壇。金融機関向けの先見的な技術を体現したFinTechとして商品化を目指し、開発を進めている「エンディングノート」「ブロックチェーン」「VR(仮想現実)」「オンライン決済」「長期資産運用」といったサービスやアプリのプロトタイプを紹介した。なお、これらのプロトタイプは会場内のデモブースでも展示され、多くの来場者が実際の使用感を確かめに集まるなど高い関心を集めた。