首都圏と中京圏を中心に700店舗以上を展開するポニークリーニング。リアルの店舗網で急成長した同社だが、近年は宅配を活用したネットクリーニング事業者も増えつつある。そうしたなか、ネット事業への参入を検討していたポニークリーニングは、日本ユニシスが提案する「収納サービスプラットフォーム」を活用した「保管&宅配サービス」を、2017年4月にスタートした。
品質へのこだわりと直営店への注力
縮小する市場の中で大きな成長を実現
1949年に紳士服地の卸売業者として創業された穂高は、衣料品関連の知識を生かして1966年にクリーニング事業に進出した。「ポニークリーニング」の名称でスタートした新規事業は大きな成長を遂げた。
「路面店とショッピングモールなどのインショップという2つの形態がありますが、いずれのタイプの店舗も順調に増加しています」と語るのは、穂高のポニークリーニング事業で営業部次長を務める山下太郎氏である。2000年代初頭には100に満たなかった店舗数は、15年ほどの間に急増した。現在では首都圏と中京圏を中心に706店舗を展開し、顧客である登録会員は約80万人に達する。また、衣類の洗いや仕上げを担う事業所は18カ所で運営されている。
穂高株式会社
ポニークリーニング事業
営業部 次長
山下太郎氏
国内クリーニング市場は1990年代の初めがピークで、当時は約8000億円といわれた。それが半分以下に縮小し、今では3700億円程度とみられる。こうした市場の中で成長してきた理由について、山下氏は次のように語る。
「ワンランク上のサービス品質を追求してきたことで、多くのお客様の支持を得られました。また、フランチャイズ店が主流だった時代に、いち早く直営店に注力したことも大きい。これが、時代の流れにマッチしたのではないかと思います」
フランチャイズ展開は営業時間の制約も大きく、夜間や土日は店を閉じているケースも多い。一方、直営店の展開は経営上より高いリスクが伴うものの、オペレーションの自由度が増し、明るくクリーンな店づくりもしやすい。ポニークリーニングは直営店シフトに挑戦し大きな成果を収めた。
初めてのネット事業として
「保管&宅配サービス」をスタート
2017年4月、ポニークリーニングは新たな挑戦を始めた。それが、衣類の「保管&宅配サービス」である。ユーザーはポニークリーニングのWebサイトで申し込むと、日本郵便のスタッフが集荷に訪れる。衣類は同社の事業所でクリーニングを施され、日本郵便の倉庫に運ばれる。そして、一定期間倉庫で預かったあと、指定された期日にユーザーのもとに配送される。
保管&宅配サービスは衣類1点ずつではなく、7点パックや10点パックといったパッケージのサービスとして提供される。ユーザーにとっては、特に冬物でのメリットが大きい。コートやダウンジャケットなど、かさばるものを倉庫に預けられるので、自宅のクローゼットに余裕ができる。リアル店舗にフォーカスしてきたポニークリーニングとしては、初のネット事業である。
「近年、ネットで受け付ける宅配のクリーニングサービスが成長しています。クリーニング市場の中での比率はまだ小さいのですが、将来的には全体の何割かを占めると予測する向きもあります。長期的な成長を考えれば、当社としても手を打つ必要があるのではないか。社内でそんな議論を始めた頃、日本ユニシスからの提案を受けました」(山下氏)
日本ユニシスが提案したのは、「収納サービスプラットフォーム」を活用したビジネスエコシステムである。図の緑色の部分が、ポニークリーニングが担うプロセス。配送や倉庫、ICTなどを組み合わせたビジネスプラットフォームと、ポニークリーニングのリソースやノウハウを組み合わせたコラボレーションビジネスである。
日本ユニシスの用意するプラットフォームを活用することにより、ポニークリーニングとしては容易に新規ビジネスへの進出が可能になった。「収納サービスプラットフォームの利用により、Webサイトで注文を受け付け、その物品を検品管理するシステムや集客するためのプロモーションを活用することで、早期にサービスを開始することができた。当社が新たに用意したものは、主に千葉県の松戸事業所につくった受付センターです。こちらで、お客様の衣類を検品管理したり、問い合わせの窓口機能を担います」と山下氏は説明する。
同じビジネスプラットフォーム上で
多様なビジネス展開を想定
ポニークリーニングがネット事業に進出するに当たっては、保管&宅配サービスのほかに、宅配を活用してワイシャツなどのデイリー品を扱うという選択肢もあった。ただ、「デイリー品を対象にすると、リアル店舗とのすみ分けを整理する必要がある」との懸念もあり、社内の意見は保管&宅配サービスに収斂(しゅうれん)した。また、以前から保管のニーズを感じてもいたようだ。
「『長期間預かってほしい』というお客様の要望は時々あって、その都度、事業所の空きスペースなどに保管していました。ただ、あくまでもイレギュラーな対応という位置付けでした」と山下氏。今回、収納サービスプラットフォームを活用することで、本格的な事業化に踏み切ったことになる。
「ビジネス面でのメリットの一つは平準化です。毎年衣替えの季節に事業所はフル稼働します。保管を組み合わせて、いったん空調完備倉庫で保管することができれば、順次衣類の洗浄や仕上げができるので、事業所のピークカットにつながります」(山下氏)
ポニークリーニングの保管&宅配サービスは収納サービスプラットフォームを活用したコラボレーションビジネスの第1号であり、今後は、衣料レンタルやメンテナンスなど多様な企業との協業が想定される。同じプラットフォームを活用する事業者間での相互送客なども可能になる。
「クリーニング事業と親和性の高い事業者が参加すれば、お互いにメリットのある新サービスを考えられるかもしれません」と山下氏。ポニークリーニングの保管&宅配サービスは始まったばかりだ。新たな経験を積み重ねながら、同社はネットサービスの拡充を目指す。そして、ネットとリアルの最適なバランス、相互のシナジーを追求していく考えだ。
穂高株式会社 ポニークリーニング
本社:東京都中央区日本橋馬喰町2-3-11
https://www.pony-cl.co.jp/
保管&宅配サービス:https://hokan.pony-cl.co.jp/