熊本復興へ、日本初のインバウンドサービス

スマホマルチ決済&周遊パスによる訪日外国人向けおもてなし

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日本ユニシスは、くまもとDMC、商店街組合、観光組合、温泉組合などの地域関係機関と連携し、「おもてなしプラットフォーム」の社会実装に向けた取り組みを推進している。訪日外国人旅行者の周遊性を高めることで、地域経済の活性化を図るとともに、DMO/DMCの自立・持続モデルを確立することを目指す。

DMO/DMCを中心に
多様な関係機関が相互連携

政府は「明日の日本を支える観光ビジョン」の下、東京オリンピックが開催される2020年に訪日外国人旅行者数を4,000万人、さらに2030年には6,000万人に拡大するという目標を掲げている。これを受けて経済産業省も「IoTを活用した新ビジネス創出推進事業」(IoT活用おもてなし実証事業)を展開。今後、同事業を通じて訪日外国人旅行者の支援サービスをはじめ、地域住民および地域事業者(店舗、施設)のキャッシュレス環境向上といった地域課題の解決、旅行者の属性情報や行動履歴などを複数の事業者間で共有・共用した新しいサービス創造の実証なども行っていく計画だ。

出典:日本ユニシス

日本ユニシス株式会社
ファイナンシャル事業部
地方創生担当部長
在間靖泰

さらに観光立国化に向けては、従来のような自治体の委託事業としての観光協会に依存した体質から脱却すべく、民間資本を広く導入・活用した「観光地域づくり商社」となる日本版DMO(Destination Management Organization)/DMC(Destination Management Company)※1の活動も広がってきた。今後はDMO/DMCを中心に地域住民や行政、公共交通機関、商店街組合、観光組合、温泉組合など多様な関係機関が相互連携していく、包括的なインバウンド戦略の展開に期待が高まっている。ただ、そこにも多くの課題が残っている。「DMO/DMC自身が地域の人流や購買に関するデータを収集できる環境整備が必要です」と示唆するのは、日本ユニシスの在間靖泰だ。

例えば、我が国の地域観光産業の決済環境に着目すると、クレジットカードが利用可能な店舗や観光施設、交通機関はいまだに20%未満にとどまっているのが実態なのだ。「訪日外国人旅行者であれ邦人旅行者であれ、ストレスフリーな観光を実現していくことが急務です」と在間は訴える。

そこで注目されているのが、「スマホマルチ決済&周遊パスサービス」である。誰もが日常的に持ち歩いているスマートフォンをプリペイドカード化することで、スマートフォンのみで周遊や飲食、買い物を可能にするというのが基本コンセプトだ。

店舗や施設など決済者側のタブレットやスマートフォンを決済端末とし、QRリーダーアプリで利用者のバーコードの読み取りから決済まで行うことで専用端末を不要とする。さらにツーリストPASSサービスの売上収入に加え、「Alipay」での支払いも可能とすることで決済手数料収入を得ることができる。

出典:日本ユニシス

※1:様々な地域資源を組み合わせた観光地の一体的なブランドづくり、Web・SNSなどを活用した情報発信・プロモーション、効果的なマーケティング、戦略策定などについて、地域が主体となって行う観光地域づくりの推進主体

地域、旅行者、事業者による
Win-Winの事業モデルを構築

実はスマホマルチ決済&周遊パスサービスは、先に述べた経済産業省が推進するIoT活用おもてなし実証事業に日本ユニシスが応募して採択されたもので、「おもてなしプラットフォーム」の社会実装に向けた取り組みの一環に位置づけられている。

スマートフォンのみで周遊から飲食、買い物、決済まですべてが完結する訪日外国人旅行者向けサービスとしては、日本で初めての試みだ。くまもとDMC、バリューデザイン、日本恒生ソフトウェア、ネオスといった企業や団体と連携し、基盤となる「スマートフォン完結型プラットフォームサービス」を構築。まず熊本県と長崎県で先行してサービスを提供し、大地震からの復興に貢献しつつ、外国人旅行者がスマートフォン1つで利用できる日本の旅を実証していく。

さらに日本ユニシスは、今回の実証事業を通じて同プラットフォームサービスが収益モデルとなることを証明し、DMO/DMCの継続事業化(自走運用)を支援するとともに全国展開を図っていくとする。在間は、そうした中で描いている次のようなシナリオを紹介する。

「電車乗り放題と観光スポットのフリー入場券、買い物/飲食チケットを組み合わせたご当地PASSアプリとして販売します。そこから得られる観光資源の利用状況を基に、訪日外国人旅行者に最適な施設や手段を提案するほか、邦人旅行者に向けても地域応援ポイントや各種ポイントサービスなどを提供して継続利用を促します。こうしたDMO/DMC主導によるサービス拡大を通じて、魅力ある地域観光やまちづくりを実現していきます」

スマートフォン完結型プラットフォームサービスを提供することに対して、在間は「各地のDMO/DMCが事業主体となった地域マネーの発行やサービス運営」「ビッグデータ収集・分析に基づいたマーケティングや新サービスの創造」「DMO/DMCの自立・持続に向けた地域商社化やレベニューシェアの推進」といった意義を挙げる。

出典:日本ユニシス

これによって期待が高まるのが、旅行者、中でも訪日外国人旅行者の利便性向上、外国人旅行者からも"選ばれる地域"への進化、専用カードリーダーなどのレンタル設備を不要とするコスト削減、店舗決済における手数料負担の軽減、地域ポイントとの連携(スタンプラリーなど地域サービスの創造が可能)、新たな決済サービスの提供(スマートフォン完結QRデビットサービスの実現)といった効果だ。

「地域、旅行者、事業者が三位一体となったWin-Winの事業モデルを構築することが、これからの観光地づくり、まちづくりにおける成功要因となります」と在間は改めて訴求する。