日本ユニシスグループは中期経営計画「Foresight in sight 2020」(2018~20年度)を発表した。さまざまなプレーヤーをつなぐビジネスエコシステムの構築、進化を通じて、多岐にわたる社会課題の解決を目指す。こうした取り組みを加速するために、4つの注力領域を定めた。前編の「デジタルアクセラレーション」と「スマートタウン」に引き続き、後編では「ネオバンク」と「アセットガーディアン」について解説する。
デジタルの力を活用して社会課題の解決に注力する
日本社会は今、大きな課題に直面している。労働力人口の減少に伴う人手不足や社会インフラの老朽化、地方に目を向ければコミュニティーの維持が難しくなっている地域もある。日本ユニシスグループはさまざまな社会課題に向き合い、顧客やパートナーと共に解決に向けた取り組みをスタートさせている。
2018年5月に発表された中期経営計画「Foresight in sight 2020」は、こうした姿勢を鮮明に打ち出している。日本ユニシスグループが目指すのは、「顧客・パートナーと共に社会を豊かにする価値を提供し、社会課題を解決する企業」。業種や業態の垣根を越えてさまざまな企業をつないでビジネスエコシステムを構築し、新しい価値を生み出す。このような活動により、人々や社会の抱える課題の解決に寄与していく考えだ。
課題の解決を図る上で、重要な手段となるのが急速に進化するデジタル技術である。デジタル化の潮流は社会や人々の暮らし、ビジネスのあり方を大きく変えようとしている。その力を有効に活用することで、世の中に役立つ新しいビジネスやサービスを創出することができる。
新しい技術やビジネスモデルで世界をよりよく変えたいと考え、行動に移している企業や人々は決して少なくない。こうした挑戦者たちと共に、日本ユニシスグループはこれまで培った知見を生かしながら、社会課題の解決に向けた活動を加速しようとしている。
日本ユニシスグループにおいて、こうした動きを先導するのが前編で紹介した「デジタルアクセラレーション」と「スマートタウン」、以下で説明する「ネオバンク」と「アセットガーディアン」という4領域である。
ネオバンクのエコシステムで利便性向上と地域経済活性化を目指す
日本ユニシス株式会社
執行役員
ネオバンク戦略本部長
竹内裕司
デジタル化の波は金融サービスの分野にも押し寄せている。Fintechという言葉もよく使われるようになった。こうした技術を活用することで、大都市圏はもとより地域にも新しい金融サービスを根付かせ、人々の利便性向上と経済の活性化につなげる。それが、ネオバンクの目指す方向である。
「金融機関のサービスは多岐にわたりますが、デジタル化によって、それらのサービスを機能ごとにアンバンドルすることで、異業種やスタートアップ企業と連携することが可能になります。また、生活空間や事業空間の中に金融サービスを融け込ませて、それらを意識せずに利用できるようにすることで、消費者の利便性向上や、産業の活性化を実現したいと考えています」と語るのは、日本ユニシス執行役員の竹内裕司である。
こうした取り組みのパートナーとして想定されるのは、金融機関とさまざまな分野の企業群である。日本ユニシスは金融をはじめ各種産業分野における技術やノウハウをベースに、参加企業と共に新しい価値づくりを目指す。具体的な分野としてはマネーコンシェルジュや地域産業別プラットフォーム、バンキング・アズ・ア・サービス(BaaS)などがある。
マネーコンシェルジュの一例が、スマホ決済サービス「Origami Pay」を活用したキャッシュレスサービスである。これにより、生活者の利便性向上とともに、地域でお金が循環する仕組みづくりを目指す。
「買い物をするときに、店舗でスマホを使って簡単かつお得に決済することができます。金融機関とAPIで連携することにより、金融機関口座でのダイレクトな決済が可能になり、購買データなどは、デジタルマーケティングに活用することもできるでしょう」と竹内はいう。
地域産業別プラットフォームの事例としては、石川県の漆器産地でのプロジェクトがある。漆器づくりに参加する各事業者がクラウド上で工程管理などの情報を共有することで、サプライチェーンの効率化を目指している。
そして、バンキング・アズ・ア・サービス。金融機関の持つ機能をサービスとして異業種に提供し、新たな価値を生み出すことによって、社会課題の解決にも資すると考える。日本ユニシスは、そんなビジネスエコシステムづくりをサポートする考えだ。
社会インフラの維持管理は切実な課題
AIやIoTで負荷低減と効率化を図る
日本ユニシス株式会社
新事業創出部長
森口秀樹
最後に、アセットガーディアンの概要について説明しよう。冒頭で述べたように、社会インフラの維持管理は切実な課題だ。労働力確保が難しくなる中、これまで通りのやり方では限界がある。今、道路や鉄道といった社会インフラ、さまざまな公共施設、民間の施設などのメンテナンスに新しいアプローチが求められている。デジタル技術への期待は大きい。
「社会インフラの老朽化が進行する一方、維持管理などに携わる熟練技能者は減少しています。この分野にAIやIoTなどの技術を導入することで、働く人たちの負荷を軽減するとともに業務の効率化を図ることができる。そのためのサポートを提供したいと考えています」と日本ユニシス新事業創出部長の森口秀樹は語る。
対象となるのは大きく4つの分野だ。発電所や橋梁、トンネルなどの環境インフラ、オフィスやマンションなどのビル、生産設備・倉庫、店舗や工場などの施設である。
「最近は、インフラや施設を維持管理する現場の方々から課題を聞いたり、相談を受けたりする機会が増えています。私たちが得意なITの視点から提案すると、非常に興味を持っていただけるケースが多いですね」(森口)
こうした分野では、従来は重電や設備系の視点から提案を受けることが多かったようだ。これに対して、ITからのアプローチは新鮮に映るようだ。新しい切り口によって、イノベーティブな解決策を見いだせる可能性は高いと森口は考えている。
先行的な事例も増えつつある。例えば、電力会社とのパートナーシップによる実証実験では、水力発電所周辺の斜面で各種センサーを使ったモニタリングを実施している。将来的には、がけ崩れのような事象の予知につながるかもしれない。
また、建設コンサルティング会社や大学とのコラボレーションで、画像データを用いて橋梁のコンクリートを診断するという取り組みもある。画像データを使った遠隔診断が実現すれば、資格者による目視で行われてきた業務に大きな効率化をもたらすことができるだろう。それは、熟練技能者の負荷低減にもつながるはずだ。