スマートフォンで見つける「理想のマイホーム」

ICT活用が拓くECサイトの未来形「My Home Market」

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インターネット上で商品やサービスを売買するEC(電子商取引)の進化が止まらない。書籍、家電製品をはじめ、最近では衣料品や保険など幅広い分野にECが導入されつつある。そして、ついにというべきか、「家をネットで買う」という新サービス「My Home Market」の開始がアナウンスされた。変化する時代のニーズに応える本事業の概要と、将来に向けた戦略を紹介する。

住宅展示場に代わるプラットフォームとして計画

日本ユニシス インダストリサービス第二事業部 多勢正英

日本ユニシス
インダストリサービス第二事業部
多勢正英

日本ユニシスとジブンハウスは2017年10月、インターネットを使った住まい探しを支援するバーチャル住宅展示場「My Home Market」の開始を発表した。これまで専らハウスメーカーと顧客が対面して行われてきた住宅建設にまつわる業務をネット上で実現するこの事業は、新たなECプラットフォームを構築する画期的な試みとなる。

日本ユニシス インダストリサービス第二事業部の多勢正英は、「果たしてネットで家を買うような人がいるのか、当初は疑問を感じていました」と語る。いかにECが成長途上にあるとはいえ、人生の長い期間を過ごし、かつ高価な買い物である住宅が商材として扱えるのか、その不安は簡単に拭えなかったと振り返る。

今回の事業開始の背景としては、近年明らかになりつつある日本の住宅事情の変化が挙げられる。少子高齢化にともない世帯数が減少し、戸建て住宅の着工棟数は年々減少している。また、共働き世帯が1000万を超え(厚生労働省調べ)、人々のライフスタイルも変化した。休日は家族がともに過ごせる貴重な時間であり、かつてマイホーム選びの「常識」だった住宅展示場めぐりをする余裕はなくなりつつある。そこで、「展示場へ行く代わりにネットで住まい選びができないか?」と考えたのが検討のきっかけとなった。

共働き世帯の推移(出典:厚生労働省)
共働き世帯の推移(出典:厚生労働省)

事業化に先立ち行われた調査で、住宅購入を検討中の人の約6割が「ネットを使った住宅オーダーサービスを使いたい」という意向を持っていることがわかった。また、その際VR(仮想現実)により建物のイメージを知りたいと考える人もほぼ同数に上り、VRへの関心の高さが浮き彫りとなった。実際にサイトで住宅を購入した夫妻と面談した多勢も、「ご主人は通勤電車の中、奥さまは家事の合間と、それぞれ空いた時間を活用して検討されていました。完成した家には非常に満足しているとのお話を伺い、これならいけると思いました」と、市場に確かなニーズが存在することを確信した。

ICT活用で「利便性」と「リアリティ」を訴求

株式会社ジブンハウス 代表取締役社長 内堀孝史氏

株式会社ジブンハウス
代表取締役社長
内堀孝史氏

あらかじめ仕様や間取りが決まった建物をベースに、住宅設備や外壁などを顧客が選ぶことができる家を「セミオーダー住宅」という。この事業を手がけるジブンハウス代表取締役社長の内堀孝史氏は、今後住宅業界が発展するためにはICT活用が必須と考え、ネットを使ったセミオーダーの仕組みづくりに取り組んできた。

その中でテーマになったのが、顧客にアピールする「利便性」と「リアリティ」だった。まず利便性の面では、これまで営業担当者と直接やりとりするしか方法がなかった見積もり作成を自動化すること。住宅のタイプ選びに始まり、坪数、外壁の色、そして室内の設備など、さまざまな要素を選び、結果を自動で表示する必要がある。同社では顧客の持つ「こだわり」を明確化し、それに応えるシミュレーション環境を用意した。

また、リアリティも住宅選びの大切な要素になる。図面やカタログでも大まかなイメージはわかるが、それだけで決定するのは不安が残るものだ。「リアリティを感じてもらうために展示場を開くのはいいことですが、モデルハウスの建設、地代の支払い、人件費などのコストがハウスメーカーの経営を圧迫し、住宅コスト上昇にもつながってしまう。これでは、いずれ業界全体が衰退するのは明らかです」と内堀氏は語る。そこでVRにより、あたかも現地にいるような感覚が得られないかと考えた。

日本ユニシスはICTの進歩、発展にVRが大きな役割を果たすことに着目し、早くから研究・開発に取り組んでいる。その先進技術を住宅選びの場に取り入れることで、これまでにない臨場感が得られるのではという期待が高まっている。

なお、My Home Marketは、スマートフォンを使うことを前提に設計、開発されている。これは、インターネットへの入り口となる機器がPCからスマートフォンに変わりつつあることを反映したものだ。特に多忙な共働き世代はスマートフォンの利用率が高いため、外出先でもストレスなく操作できるサイト構築を進めている。

ジブンハウスにおける「買い方の変化」(出典:ジブンハウス)
ジブンハウスにおける「買い方の変化」(出典:ジブンハウス)

「住宅エコシステム」構築を目指す

日本ユニシス 常務執行役員 永井和夫

日本ユニシス
常務執行役員
永井和夫

2018年3月のサイトオープンを控え、My Home Marketでは出店を予定するハウスメーカーと共同で準備を進めるほか、今後5年間で500社の住宅取り扱いを目指し、新たに参加を希望するハウスメーカーの募集を行っている。また、日本ユニシスの持つ数多くの地域金融機関の顧客ネットワークを活用し、将来的には用地供給や住宅ローンとの連携も進めていく方針だ。

今後の展開について、日本ユニシス 常務執行役員の永井和夫は次のように語る。「これまでのICTは、ともすれば企業が一方的に主導するスタイルで進歩してきたといえます。しかし、スマートフォンの爆発的な普及などによりIT利用のモデルが変わり、"社会・生活者主導" が当たり前の時代となりました。日本ユニシスとジブンハウスは、My Home Marketがその変化を支える存在になれるよう努力していきます」

住まい選びを軸に、共働き世帯支援や地域活性化といった社会課題解決を目指す両社の取り組みは、「住宅エコシステム」の構築に向けた大きな第一歩といえるだろう。

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