お金のデジタル化がスマートな社会づくりへの道筋照らす

キャッシュレス決済比率の向上に向け官民の取り組みが活発化

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政府はキャッシュレス決済比率の大幅向上という目標を掲げている。これに対応するように、民間の動きも活発化している。スマホ決済サービスを提供するOrigamiは、その代表的なプレーヤーの1つ。日本ユニシスは同社との業務提携を結び、決済を含むビジネスエコシステムづくりをサポートしている。

キャッシュレス化推進がネオバンク戦略の柱に

日本ユニシス株式会社
ネオバンク戦略本部
企画推進部長
中川英晃

2018年4月、経済産業省は「キャッシュレス・ビジョン」を発表した。政府の「未来投資戦略 2017」におけるキャッシュレス決済比率40%という目標を前倒しするとともに、将来的には80%を目指すとしている。

現状のキャッシュレス決済比率は約2割とされ、目標の実現は容易ではないようにも見える。しかし、状況は変わりつつある。Fintechの進展や規制の改正などを背景に、決済サービスを取り巻く環境は変化している。

「キャッシュレスのメリットはさまざまです。生活者にとっては、お金の計画的な管理がしやすくなるとともに、現金を扱うことによるストレスからの解放も期待できます。一方の事業者にとっては、現金保管コストの低減による生産性向上、商流・物流・金流のスマート化による付加価値サービスの実現などが考えられるでしょう」と語るのは、日本ユニシスの中川英晃である。

日本ユニシスは将来に向けた注力領域として、「ネオバンク」戦略を推進している。キャッシュレス化への取り組みは、ネオバンク戦略を構成する重要な要素だ。

「キャッシュレス化は、デジタル化されたスマートな社会づくりを進めるための起点」と中川は語る。こうした認識をベースに、日本ユニシスはスマホ決済サービス「Origami Pay」で知られるFintech企業のOrigamiと業務提携を行った。

2012年に設立されたOrigamiは、キャッシュレスを実現するモバイル上のプラットフォームを提供している。スマホにダウンロードしたアプリを使って、ユーザーはQRコードを読みとって決済ができる。このスマホ決済サービス「Origami Pay」を利用できる加盟店は全国で2万店を超えており、その数は急速に増えつつある。

Origami Pay

モバイルでの決済が実現する利便性と新しい顧客接点

株式会社Origami
代表取締役社長
康井義貴氏

Origami社長の康井義貴氏は、Origami Payについてこう説明する。

「スマホでの決済を実現するOrigami Payは、店舗への導入が簡単。決済用の専用端末は不要です。また、店舗がダイレクトマーケティングのツールとして利用することもできます」

これまで、小売業などの多くはポイントがたまる会員カードなどを使って、生活者との接点を維持してきた。ただ、会員登録する顧客を増やすのは容易ではない。登録したとしても、DMやメールでの案内を開封し、コンテンツにアクセスする顧客はさらに少ない。これに対して、Origami Payでは購入後にレシートがスマホに送られ、大半のユーザーがこれをチェックする。その接点を生かし、クーポンの提供なども可能だ。

こうしたOrigami Payの特長を生かして、康井氏は地方創生への取り組みも進めている。例えば、中国などでキャッシュレス化を先導するAlipayとの業務提携により、加盟店に対してOrigami PayとAlipayのどちらでも決済ができる仕組みを用意。現金の扱いに煩わしさを感じるインバウンド旅行者は少なくないが、こうしたアプローチは1つの解決策となり得るだろう。ストレスなく観光地巡りができる環境づくりは、地域産業の活性化にもつながる。

さらに、Origamiは地域金融機関との連携も強化している。

「地域金融機関の口座とOrigami Payをひも付ければ、ユーザーは自分の口座で買物の支払いができます。手数料が地域外に流出することはなく、その金融機関が手にすることになります」と康井氏は語る。こうした取り組みは、お金が地域の中で循環するような環境づくりに寄与する。すでに、大垣共立銀行や青森銀行との連携がスタートしているという。

地域社会におけるキャッシュレス化とデジタルマーケティングなど新たなサービスの展開を推進

キャッシュレス化とAPIエコノミーのインパクト

多くの地域金融機関と関係を築いてきた日本ユニシスには、Origami Payと地域金融機関、地域の店舗などが形成するエコシステムを支える役割も期待されている。

「日本ユニシスとの業務提携により、地域の金融機関はより簡単、スムーズに顧客の口座とOrigami Payとを連携できるようになるでしょう」と康井氏。それは地域内の消費を刺激し、地域内でのお金の循環、経済の活発化にもつながるはずだ。

日本ユニシス株式会社
ネオバンク戦略本部
企画推進部
根本恒

この事例に限らず、異業種間の連携はあらゆる分野に広がりつつある。日本ユニシスは、こうしたビジネスエコシステムづくりを積極的に推進する考えだ。

「エコシステムを実現する際、テクノロジー観点での重要な要素となるのがAPIです。APIを活用したサービス連携により、新しい体験価値を提案し生活者の便益の最大化を図る。そんなAPIエコノミーの実現、さらにスマートな社会づくりに向け、一層取り組みを強化する方針です」と日本ユニシスの根本恒は意欲的だ。

このような方向性に沿って、日本ユニシスは着実に準備を整えてきた。その代表的な成果が、オープンAPI公開サービス「Resonatex」である。さらなる拡大が予想されるAPIエコノミーを支えるため、Resonatexもまた進化を続けている。

Origami Payによるキャッシュレス化には、スマートな社会づくりを牽引する役割が期待される。キャッシュレス化は、単に「現金が不要になる」というだけの動きではない。お金の流れのデジタル化、商流・物流・金流のスマート化は人々の暮らしとビジネス、そして社会に対して大きなインパクトをもたらすことだろう。

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