インドネシア伝統的商習慣への破壊的イノベーション

ASEANの社会課題を解決する流通小売ビジネスプラットフォームを提供

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日本ユニシスグループのグローバルビジネスを担うキャナルグローブでは、インドネシアのICT企業Indivara(インディバラ)グループが展開するeコマース事業と連携し、同国の小規模小売店向けに流通小売ビジネスプラットフォーム事業を開始している。同事業の意義や今後の展開をPT Indivara Sejahtera Mandiri(以下、ISeMaグループ)のJusuf Sjariffudin(ユスフ・シャリフディン)氏とキャナルグローブの鈴木貴史が語った。

プラットフォームビジネスの方向性が合致

キャナルグローブは、日本ユニシスの本格的なグローバルビジネス展開に向けた戦略会社として2017年4月に設立された。同社の位置づけは、日本ユニシスが国内で主導する「フォーサイト」「サービスコンテキスト」「ビジネスプラットフォーム」の展開をグローバルな市場で担っていくことだ。

キャナルグローブ株式会社
取締役
鈴木貴史

そのための戦略として、まず、成長市場を洞察し、現地の企業と戦略的パートナーシップの確立を通じてビジネスプラットフォーム事業を創出する。「そのプラットフォームを活用し、国内外の顧客企業やパートナー企業の事業拡大などを図っていきます」とキャナルグローブ取締役の鈴木貴史は説明する。

そして、キャナルグローブは戦略的パートナー企業であるIndivaraグループとの関係を強化している。Indivaraが中間持株会社として新設したISeMaグループはインドネシアを中心にマレーシア、シンガポール、フィリピンで事業を展開するICT企業だ。

そのISeMaグループにキャナルグローブが資本参加した理由について、鈴木は「IndivaraおよびISeMaグループはプラットフォーム事業を今後のビジネスの柱にしており、日本ユニシスグループの方向性と合致したためです。Indivaraグループと進めているインドネシアの流通小売ビジネスプラットフォーム事業もその1つです」と話す。

パパママショップの商品仕入れや決済方法を変革

PT Indivara Sejahtera Mandiri
President & CEO
Jusuf Sjariffudin氏

Indivaraグループの流通小売ビジネスプラットフォーム事業の背景について、ISeMaグループのプレジデント兼CEOのユスフ・シャリフディン氏は次のように述べる。「インドネシアは中間所得層の購買力が高まりつつあり、国内のスマートフォン普及率は60%まで伸び、eコマース市場の成長が期待されています。しかし、銀行口座やクレジットカードの保有率は低く、先進国で一般的なeコマースとは異なる決済手段が求められていました」

また、多数の島々で構成され、広大な国土を持つインドネシアではワルンと呼ばれる伝統的な小売店(パパママショップ)が約250万店舗あり、小売店舗の8割を占めるという。

Indivaraグループでは、2017年3月からパパママショップ向けにeコマース「Mentimun(メンティムン)」やスマートフォン用POSアプリケーションの導入を開始しており、2018年3月末時点で約2400店舗が試行している。そして、キャナルグローブとの連携により、Mentimunとスマホ用POSアプリケーションに、日本ユニシスのERPソリューション「Hybrish(ハイブリッシュ)」の卸売り機能を組み合わせた流通小売ビジネスプラットフォームを展開する。

流通小売ビジネスプラットフォーム概要図

流通小売ビジネスプラットフォーム概要図

この流通小売ビジネスプラットフォームは「破壊的イノベーション」を引き起こしたといわれるが、何を変革したのだろうか。ユスフ氏は「パパママショップに3つの価値を訴求することで変革に成功しました」と話す。

「Mentimun」のスマートフォン用
POSアプリケーション

その1つ目が商品の仕入れだ。多数の島々で構成されるインドネシアの流通小売は複雑で、サプライヤーとパパママショップの間には複数の卸が介在し、最大7次の卸もあるという。こうした商習慣の中で、パパママショップは遠方の卸売業者に足を運んで商品を仕入れていた。流通小売ビジネスプラットフォームの導入により、パパママショップは携帯端末を使ってPOSアプリケーション上でリアルタイムに近隣の卸売業者の情報が見られるようになり、その場で注文することで、商品の買い出しの手間が省けるようになった。

2つ目は仕入れ資金の融資システムを用意したことだ。パパママショップの多くは運転資金に乏しいため、金融機関とも提携しPOSアプリケーション上でローン融資を受けられるようにした。また、銀行口座やクレジットカードの保有率が低いといった課題に対し、現地の状況に即した決済手段として、クレジットカードを持っていなくても支払い可能なE-WALLETやATM振込、代引きなど多彩な支払い手段を利用できるようにした。

3つ目は、在庫を持つのが難しい家電商品や大型商品は顧客からの注文に応じて携帯端末で仕入れ、販売できるようにしたことだ。「冷蔵庫などの家電製品を取り扱い、毎月手数料を稼ぐパパママショップも登場しています。また、POSシステムと無縁だったパパママショップでも、流通小売ビジネスプラットフォームのモバイルPOSシステムを利用することで日々のトランザクションが確認でき、電子決済も可能になりました」とユスフ氏は成功事例を交えながら流通小売ビジネスプラットフォームのメリットを話す。

この流通小売ビジネスプラットフォームを活用することにより、パパママショップは商品の仕入れから在庫管理、販売管理まで一元管理できるようになる。また、サプライヤーはこのプラットフォームを経由して注文を集約し、発注することができるようになり、流通の効率化やパパママショップへの販路拡大などが期待できる。まさに流通小売ビジネスプラットフォームはインドネシアの流通小売業が抱える課題を解決するイノベーションとなっているのだ。同プラットフォームは今後、インドネシアと同様の課題を抱えるフィリピンなどへ展開するという。

クロスボーダーエコシステムのプラットフォームを目指す

今後のビジネス展開について、キャナルグローブはどう考えているのだろうか。鈴木は「日本ユニシスグループとIndivaraグループ双方のアセットを組み合わせることで、1+1が2ではなく、5や10となるようなシナジーを生み出していきます」と話す。そして、Indivaraグループと共にさらなる経済成長が見込まれるASEANにおいて、社会課題を解決するビジネスプラットフォームを提供するという。

「インドネシアに加え、キャナルグローブのビジネスプラットフォーム事業を第2、第3の国に展開し、クロスボーダーエコシステムのプラットフォームを進化させていきます」と鈴木は力を込める。

キャナルグローブとのパートナーシップの意義について、ユスフ氏はどう考えているのだろうか。ASEAN地域は目覚ましい経済成長を遂げているが、域内の企業はテクノロジーの導入が遅れており、例えばインドネシアではERPが未導入の大手企業もあるという。「複雑な業務システムの導入にあたり、日本ユニシスグループおよびキャナルグローブが持つシステムインテグレーションの経験、ノウハウを活用し、デジタル化の対応を強化していきたいと考えています」と話す。

同氏は次のステップとして「流通小売ビジネスプラットフォームを活用し、日本とインドネシアの商品を相互に販売するなど、クロスボーダーでの商取引が行える仕組みを日本ユニシスグループと一緒に検討していきたい」とキャナルグローブとの連携強化に期待する。

そして、ユスフ氏は日本企業に対し、「Indivaraグループを新たなパートナーとして、ASEANで質の高いプラットフォームサービスを利用できます。それにより、多額の投資をすることなく商品の販売に必要なシステム導入が可能です」とメッセージを送る。

ASEANには日本と異なる社会課題があり、その課題解決の1つになるのがIndivaraグループの流通小売ビジネスプラットフォームである。プラットフォームビジネスで日本ユニシスグループと同じビジョンを持つIndivaraグループとのグローバルな戦略的パートナーシップによるビジネスエコシステムの動向に注目したい。

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